『光と影のバラード』『珍獣ピカリノウスの法則』 公演情報 『光と影のバラード』『珍獣ピカリノウスの法則』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★

    停滞
    安定してきたなぁとおもう

  • 満足度★★★★★

    ああ、やっぱり桟敷童子は面白い! そして、深みがある
    50分+45分の2本立て。
    それぞれは1時間足らずの上演時間で短いけど、やっばり桟敷童子が詰まっている。
    どちらも面白くってあっという間!

    何を書いてもネタバレになるんで、続きはネタバレへ。

    ネタバレBOX

    『光と影のバラード』
    番外公演ではおなじみの映画のタイトルをそのまま使ったタイトルがいい。まさにそのタイトル通りの物語。

    ラブホテルになるはずだった廃墟での話。
    自分はダメだと思っていて、死ぬために訪れた川を歩いていた光と、ふとしたことから知り合った聖子がその1室にいた。
    聖子は食料を万引きしてくるのだが、その彼女を尾行してきた轟木という女がいた。轟木は、聖子と光を脅し、金をせびろうとする。
    3人の女たちがもみ合っていると、小さなと扉が開く。中には縛られた奈津実がいた。
    実は、彼女は聖子の不倫相手であり、光が連れてきて、監禁していたのだ。
    そして…。

    一面グレーの、廃墟のセットで、鏡に映った自分の姿に呪いを吐くようにつぶやく光。非常にダークな雰囲気で舞台は始まる。
    しかし、登場人物が1人、1人と登場するごとに物語は展開していく。
    もう、とにかくその展開が面白く、わくわくしながら観てしまう。

    4人の女のキャラクターがしっかりと立っている。彼女たちの「変わりたい」という意思(温度さはあるが)が、その内部に秘められている様子が匂ってくるのがいい。そして、それぞれが抱える不安が爆発しそうな、ギリギリのテンションにあることが感じられる様が素晴らしいと思った。「退屈」などとは遙かに違う切羽詰まった感じがしている。

    廃墟の窓から時折見える「美しい影」。
    自分と自分の人生に嫌気がさしている4人の女たち。
    彼女たちの、心の奥底での願いは、新しい自分に生まれ変わること。
    それができるのならば、犯罪だって犯しても構わないと思っている。

    その彼女たちに、手をさしのべているような「美しい影」。
    それは、彼女たちに何をもたらしてくれるのか。
    影と一緒に消えてしまうのか、影を捕まえて新しい自分に生まれ変わるのか。

    「影」と「光(名前)」の対比がいい。

    ラストは、彼女たちは、自分の運命を自ら選択し、それに突き進むのだ。その幕切れも納得がいき、気持ちいい。



    『珍獣ピカリノウスの法則』
    バイト先の先輩・八重樫から誘われて、都市伝説であるピカリノウスが現れる廃墟に誘われる前山田山。
    ピカリノウスは、孤独な人間に取り憑くと言う。それによって、24人もの人間が行方不明になっているのだ。
    八重樫は、小劇場の女優・雫に孤独な女性を演じてもらい、ピカリノウスを誘いだそうとする。
    ラブホテルになるはずだった廃墟に3人が訪れると、その廃墟のオーナー・ヨシコがいた。彼女は自分の持ち物である廃墟に悪い噂が立つのを恐れていて、3人に帰るように促す。
    しかし、孤独な女を演じていた雫の様子がおかしくなってくる。
    そして…。

    タイトルから何が始まるのか、まったく想像がつかなかったが、桟敷童子にしては珍しいコメディ調の雰囲気に心躍る。
    しかし、ただのコメディではなかった。

    笑いの先にあるのは、「孤独」と「愛」。
    センチメンタリズムが爆発し、ピカリノウスが次々登場することで、コメディ的要素もヒートアップしていく。
    ピカリノウスの姿の(ある意味において)凄さには、思わず笑ってしまう。
    対決するときに各々が手にする、でかいマイクのような棒も意味なくて面白い。

    深みがあるのに、笑いも起きる。こんな経験はなかなかない。
    見事!

    こちらも、どう展開していくのか、まったく目が離せない。もう、面白いって言うしかない。



    2本の短編は、実はつながっていたことがわかる。
    もちろん、1本ずつでも成立する物語ではある。
    本公演では伝奇的な要素が強いのだが、この公演では、都市伝説のようなものが軸になりつつも、「人」に本当の軸があり、その「気持ち(心)」がクローズアップされる様はまさに桟敷童子なのだ。

    そして、この2本に貫かれているのは「愛」だ。
    「孤独」と「愛」の関係を見事に提示してくれた物語の面白さには、驚かされた。

    桟敷童子の番外公演は、いつもこの成子坂劇場で行われているようだ。
    ここの劇場の特徴は、舞台と客席が近いことにある。
    そして、番外公演は、少人数で演じられるので、短編であっても、個々の役者さんたちの印象が鮮やかに残る。

    本公演とは違う姿を見せてくれ、新たにいい役者に出会えることが、いつもある。

    今回の公演では、『光と影のバラード』で光を演じた大手忍さんの、光を全部吸収しちゃうんじゃないかと思ってしまうほどの暗い表情と、目、すなわち後半になるに従い、強さに変わってくる目が素晴らしいと思った。近いからこそ味わえる醍醐味でもある。聖子(中井理恵さん)の何かを悟りきったような不思議な佇まい、轟木(新井結香さん)のワルを装っているのだが根は…というキャラ、奈津実(椎名りおさん)の、鬱陶しくて哀しい女が印象に残った。

    また、『珍獣ピカリノウスの法則』では、雫を演じたもりちえさんの、小劇場の女優には笑わせてもらった。気迫を感じたし(腹の据わった感じがいいのだ)。ヨシコを演じた外山博美さんは、もうおばさん(と子ども)を演じたら適う者なしなのだ。八重樫(深津紀暁さん)のクールに見えて、妻を取り戻したいという焦りの雰囲気、松尾(鈴木めぐみさん)の後半に吹き出す母の感情、そして、前山田山(井上昌徳さん)の普通の青年ぶりが印象に残る。

    当日配っているチラシの中には、もりちえ扮する雫(小劇場の舞台女優)が出演する次回公演『三人姉妹は力持ち』(作・演:西憲司・笑)のチラシも、さりげなく入っているので、お見逃しないように。

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