生きる。【全日程 終了致しました。】 公演情報 生きる。【全日程 終了致しました。】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    演技派によるコントが面白い!
    オムニバス・コント7本。場内は爆笑の渦。学生たちにも大ウケだった。
    「アドリブクイズ」はエチュードや大喜利のようでもあるが、他の6本は多分に演劇的要素が濃い。
    パンフの挨拶文によると7本中3本を「声を出すと気持ちいいの会」主宰の山本タカが作・演出したそうだが、どれがそうなのかは記名がないのでわからない。山本はシリアスで幻想的な作品で注目されている学生作家だが、コメディアンとしても魅せ、こんなに面白い俳優とは知らなかった。
    草野峻平、中島綾香、宇高大介、米澤望と、明治大学の演劇で活躍している演技派の面々が汗だくでコントを演じてくれるのが嬉しい。宇高と米澤のリラックスした表情を初めて見たので新鮮だった。
    次回公演の企画も決まっているようで楽しみだ。

    ネタバレBOX

    「幼稚園」

    「グーチョキパーで何作ろう」で無邪気にお遊戯する園児と保育士。園長先生が帰ったのを見計らって保育士たち(草野峻平・宇高大介)が園児たちに「大人教育」の特訓を始める。
    幼稚園バスの中での年長さん(山本タカ)が年少さん(米澤望)にレクチャーする大人顔負けの現実的な会話が可笑しい。
    「年長になるとスイミングスクール行かされたりして自由時間が少なくなるからいまのうちいろんなことやっておけ」とか「初コーラ、刺激的だったぜ」、「いまの世の中どうなるかわからないし、先のこと考えとかないと老後のお金とか心配だろ。親の前では将来の夢はニンジャとか言ってあるけどさ」など。
    停留所にお迎えに来たママ(中島綾香)の前でふだんのあどけない幼児に戻った年長さんはおもらしをし、泣きじゃくる。バスの中から呆気にとられて見守る年少さんへ送る年長さんの鋭い視線が印象的。

    「死者への手向けⅠ」

    電車に乗っている男女社員(中村優作・中島綾香)の会話。上司が急死したらしく「部長も本望だったでしょう。大好きな埼京線で轢かれたのだから・・・」。
    変だな、と思っていると告別式が始まる。
    受付で渡す香典は乗車券。「電車葬」なのだ。和尚さん(草野峻平)が会場の優先席に案内され、ケータイが鳴って通話し、大顰蹙。和尚の読経も鉄道に関すること。遺族の妻と息子が山手線の駅名を順に暗証し、ラブホ街の駅名で妻が反応するという解説が入る。後ろから和尚がまったく関係ない「ススキ野」なんて囁くと、妻(山本タカ)は激しく動揺する(笑)。
    網棚の上の棺に向かって、読み終わりの新聞やマンガ雑誌を放り投げる参列者たち。
    棺は列車ごと燃え盛るトンネルの中で荼毘にふされるため、参列者は列車を降り、ホームで黄色い線まで下がってお見送り。さらに白線の内側まで下がってそれぞれの人生を生きるのだそうだ(笑)。

    「死者への手向けⅡ」

    今度は母(山本タカ)も亡くなり、一人残された息子(宇高大介)を喪主とするミュージカル葬。いかにもミュージカルナンバー風に歌い上げたり、間で台詞をつぶやいたり、パロディーが笑える。

    「打ち合わせ」

    プライドの高い有名シナリオライター(草野峻平)とフジテレビの若手プロデューサー(山本タカ)の会話。プロデューサーが中座してケータイで部下に「そんな作家契約切っちまえ!」と怒鳴っているのを聞いて弱気になったシナリオライターはTV局の条件を呑むことにする。それはスポンサーの意向を汲んで商品名を台詞に入れたり、フジテレビの“反戦特集企画”に協力して台詞に反戦色を盛り込むことなのだが・・・。
    シナリオライターが言う「私は自分の作品の中で“企業の犬”みたいなマネはできんよ」がキーワードとなる。


    「企業の犬」

    前のコントの打ち合わせの結果、放送されることになったTVドラマが演じられる。不自然なほど企業名が出てきて、広報資料のように商品の特徴が俳優の台詞によって説明されるのが可笑しい。
    果ては男友達(宇高大介・米澤望)が喧嘩を始めると、ヒロインのみどり(中島綾香)が「喧嘩しないで!いまも世界のどこかで戦争が起こっている。戦争なんて大嫌い。戦争反対!」と叫び、全員でフジテレビの「戦争反対特集企画」の番宣をする(笑)。フジテレビという実名を使う必要はなかった気もするが。

    「アドリブクイズ」

    TV番組という設定。3人の俳優(中島綾香・草野峻平・宇高大介)がコントをする中、司会者(山本タカ)が途中で動きを止め、「ここから彼らはどういう行動をとるでしょう?」という問題を出し、ゲスト回答者2人(中村優作・米澤望)が答え、採用された答えをコントで演じる。
    森進一と川内康範の作詞騒動や狂言の大笑い、EXILEのチューチュートレインなどが採用され、最後に全部通してコントを見せる。中島の変わり身の表情が秀逸。

    「死刑」

    囚人1743号こと三ケ日みかん(中村優作)の死刑が執り行われるまでを描く。死刑台というのは鏡餅で、みかんはそのてっぺんに「橙」として登るのがオチ。ナンセンスなのだが、途中がシリアスな展開。死刑台が運ばれてきて「この鏡に・・・」と囚人が言った段階でオチが予想でき、そのうしろで死刑執行人(山本タカ)が緑色のハチマキを用意するので早々とわかってしまうのが残念。死刑執行が決まったみかんの前に和尚(草野峻平)が現れ、みかん農家の母親(中島綾香)の切々たる手紙が読み上げられ、囚人が死刑台に登る残酷な場面に向かって客席の笑いは高潮していくという仕掛けが逆説的で面白い。

    私の好みは「幼稚園」と「死者への手向けⅠ」だった。

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