朗読劇 少年口伝隊一九四五 公演情報 朗読劇 少年口伝隊一九四五」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★★

    広島とヒロシマを後世へ伝える口伝隊
    井上ひさしさんが演劇研修所の研修生のために書き下ろした朗読劇ということで、初演のときから気になっていたのだが、タイミングが合わず、観ることができなかった。
    今回、やっと観るとこができた。

    シンプルで、やはり素晴らしい作品だった。
    「広島がヒロシマになる」という言葉のセンスと、わずか60分の上演時間なのに、その内容の濃さは、井上ひさしさんならではではないだろうか、と改めて思った。

    ネタバレBOX

    広島がヒロシマになった日に、生き残った3人の尋常小学校6年の少年たちは、焼けて新聞発行ができなくなった中国新聞社からのニュースを言葉で伝える口伝隊となる。
    ところが、うち1人が原爆症のため病床についてしまう。残った2人は懸命に看病をしながら口伝隊を続ける。
    そして、終戦。
    数カ月後、米軍がヒロシマに進駐してくるという知らせがあり、少年たちの脳裏にはある考えが浮かぶ。
    しかし、そんな中、巨大な台風がヒロシマを襲う。

    冒頭、短い日常の描写から、原爆投下直後への様子を描くのだが、それは言葉(台詞)だけでも鮮やかにイメージがわき、息苦しくなるほど辛い。
    そして、生き残った少年たちの境遇と、ニュースを通じて彼ら自身の口で語られる、戦中と戦後に行われ、語られる世の中の欺瞞は、やるせない。

    冒頭からラストまで、どのエピソードも心を揺さぶられる。
    取り組む役者たちの気持ちも強く伝わる。
    シンプルな衣装で、年齢的にはたぶん同じ歳だろうが、幅のある年齢の役割を、ほぼ台詞だけでうまく演じていたと思う。
    主人公の3少年の生きている、という感じや、新聞社のはなえさんを演じた方の、落ち着いたトーンが印象に残った。

    ギターの生演奏も素晴らしいし、この舞台に見事にマッチしていた。

    まるで瓦礫のような、舞台の中央にある小さなセットと、それに砂をざらざらと落とす演出もいい。

    声によって、ニュースを伝える役割がある口伝隊の話なのだが、この舞台そのものが、広島がヒロシマになったことを、後世に伝える口伝隊の役割を担っているのだと思う。

    だから、新国立劇場の演劇研修所では、研修生が3年次に取り組むべき作品として、この井上さんが書き下ろしたこの作品の上演を今後も続けていくだろうし、続けてほしいと願う。
    この苦しみや痛みや悲しみを一緒に、未来にも届けてほしいと思うのだ。2度とこのようなことが起きないように。

    新国立劇場の公演は、7/31までだったが、詳細は不明だが、板橋区立文化会館8/4(水)19:00開演の公演があるらしい。

このページのQRコードです。

拡大