ガラスの葉 公演情報 ガラスの葉」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
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  • 満足度★★★★

    白井晃演出に松井るみ美術
    美術にうっとりため息。揺れる装置とともに心たゆたう2時間。帰り道に“家族”について考えをめぐらせることができました。田中圭さん、素晴らしい。

  • 満足度★★★★★

    重なり合う「葉」の家族達
    白井氏の演出は、観る人色々感じると思うのですが、生々しく艶やかな
    陰翳にあるような気がしてならない。 闇が妖しくうごめき、
    その中を光が鮮やかに照らす。 いつもそう思うのです。

    その独特の演出が、一見はごく普通の家族達の裏に潜む思惑や
    攻撃性、狂気、崩壊感覚を上手く抉り出していて、ここ最近の観劇の
    中では群を抜いて脳裏に刻まれました。 観客が多いとはいえず、
    空席も結構目立ったのが不思議な位の、高レベルっぷりでした。

    余談ながら局面、局面で流れる、音数少なめなのに妙に耳に残る
    ピアノの響きが気になって気になって、後で調べたら「中国の
    不思議な役人」でも楽曲を提供している三宅純氏の手になるものと知り、
    それなら当然か!!と膝を打った次第。

    ネタバレBOX

    私は、芥川龍之介「藪の中」が大好きなのですが、この作品にも
    同じ匂いを感じますね。 こういう話はものすごく好み。

    あの物語では、「誰が若主人を殺したのか」、そのことをめぐり、
    証人達の言う事が食い違い、結局全ては「藪の中」に終わるわけですが。

    局面、局面で兄スティーブン、弟バリー、母親の証言がことごとく
    食い違う。 同じ時、同じ場所にいたはずの人物達が全く違う事を
    証言する。 まるで、同じ映画を観ているのに、解釈が食い違う。
    そんな有様を見せつけられ、観客は戸惑う。

    なにしろ、誰の言葉を信じるかで、登場人物達のキャラクターまで
    変わってくるのだから。 

    兄の言う事を信じるなら、弟は父親の死を受け入れられない、
    限りない妄想にとりつかれた心の弱い人間になるし、逆に
    弟の言う事を信じるなら、兄はとんでもない偽善者で母親は
    息子可愛さにその片棒を担ぐ共犯者、ということになるのだから。

    そもそも、物語の根幹をなす「父親の死」についても、観客に
    明かされる要素が少ない。 これは物語を通じ全てにいえるが。
    何故死んだのか、だいたい自殺なのか事故なのか。

    人物達の言葉が全て嘘とはいえず、かといってまんま真実を
    語っているとは思えないので、自然他の部分から読み取っていくことに
    なるのですが。 微かに分かるのは。

    ①死んだ父親はどちらかといえば内向的で、子供たちを恐れてか
     引きこもりの傾向がみられること。

    ②一応兄は母親の、弟は父親のお気に入りという事にはなっているが
     実は互いに愛しながら、心の深奥では必ずしも完全に心を許さず
     憎んでいるきらいすらあるということ。

    ③②の「隠された憎しみ」の理由はどうも、兄、弟、母親が相互に
     相手の中に「死んだ父親」を見ており、その互いの存在に密かに
     耐えがたいものを感じているらしいということ。

    ①~③は私の解釈なので、他の人はまた違ったものを思うかも
    知れません。 特に、生前の父親がどういう人間か、その受け止め方で
    かなり変わってくると思います。 私は…ノーマルな人とは思えなかった。。

    舞台は緊張感に満ち、知性と暴力の相反する要素がふんだんに
    盛り込まれた台詞の応酬で時間はあっという間です。
    舞台の、時折バチバチと点灯する蛍光灯が良い感じ。 あのせいで、
    なんか普通の変哲ない部屋が、まるで息苦しい地下室にでもいるような
    雰囲気を良い具合に持てました。

    最後、観客はきっと身近な存在の家族でも何一つはっきりしたものは無い、
    確かなことはその人だけにしか無い、人生はその繰り返しだ、好む
    好まざるに関わらず、との感触を多かれ少なかれ抱え家路に着くでしょう。

    皆上手かったけど、銀粉蝶はどんなに仰々しい台詞でも、挨拶くらいに
    自然に聞かせる、見せる有様が流石と思いました。
    そして田中圭。 前半のぶっ飛びっぷりと、後半の純粋過ぎるバリーの
    ふり幅の広過ぎる役柄を違和感なしに見せてくれ、今後も大いに期待。
  • 満足度★★★★★

    作家と演出の相性抜群
    フィリップ・リドリーの以前観た作品よりは、大変わかりやすく、自分の境遇に、卑近な部分も多々あり、終始興味深く観劇することができました。

    この作家と、演出の白井さんの相性もピッタリな上、出演者が誰も皆素晴らしくて、のめり込むように舞台に集中してしまいました。

    萩原さんの好演は言うまでもありませんが、舞台出演の度に飛躍的に成長している田中圭さんが、「ガラスの動物園」のローラの男性版のような、繊細な心を持つ青年を、魂を込めて熱演され、観ている私まで、胸が締め付けれる思いでした。

    ある意味、普遍性のある、家族劇の決定版のような作品でした。

    ネタバレBOX

    舞台セットが、縦長に組まれ、そのセットが右に左にと軋みながら、移動するアイデアが、この作品の雰囲気に見事マッチし、大変秀逸でした。
    セットが軋む音と、登場人物の軋む気持ちが重なり、大変刺激的な舞台美術に、ただただ感服!
    まさに、総合芸術の真髄を見た思いです。

    暗い芝居なのに、演劇好きな人間としては、大変ワクワクさせられる舞台作品で、心底、観劇できたことを感謝しました。

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