ニコニコさんが泣いた日 公演情報 ニコニコさんが泣いた日」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    じんわりハートフルな反戦ドラマ
    作品説明文から戦時中、上野動物園の動物が当局の命令で殺された史実をもとにした話だとは想像がついたが非常に良質な心温まるお芝居になっている。派手な演出はないけれど、小学校高学年以上なら親子で観られる作品だと思う。

    ネタバレBOX

    表題にある「ニコニコさん」は純朴な象の飼育員で、作・演出の内堀優一が演じている。
    ある街の動物園には、仲良しの象のトリオ=女の子らしくやさしい花子(山岡祐子)、頭の良いトンキー(中川敏伸)、負けず嫌いで活発なジョン(北上智子)、ちょっとシニカルなワニ(高橋雄一)、おっとりしたライオン(井上玲央人)らがいる。動物たちの擬人化した演技が楽しい。
    飼育員のミツ(藤田みか)とヤエ(植草美帆)は姉妹。美術学校の生徒で画家志望の大介(飯田真二)は動物好きで毎日動物園にやってくる。学生たちの赤狩りを目的に特高の刑事塚田(矢野平祐)は大介を尾行している。
    戦争の影響で動物園の入場者が激減したため、園長(青木隼)を中心に飼育員たちはアイディアを考え、野球が得意で豪球を投げるニコニコさんと象のトリオで子どもたちに野球を見せて大人気を得る。しかし、戦況が進み、街中の動物園に動物を置くことは治安上よろしくないとの当局の命令で、飼育員の小林(家紋健大朗)は動物たちの移送受け入れ先を地方に求め東奔西走する。ヤエは大介の勧めで動物園のことで力を貸してもらえないかと左翼活動に参加し、逮捕されてしまう。特高の拷問は厳しく、大介は目を潰され、ヤエは衰弱して獄死する。やっと受け入れ先を決めて小林が戻ったときには、既に当局の命令を受け、断腸の思いでミツが決心し、動物たちは餓死や薬で殺されてしまったあとだった。小林にも赤紙が来ていた。そして終戦。盲人となった大介が動物園を見学に来ている。傍らには復員してきた小林が。「私の目には象の野球が焼きついています。絵描きになる夢は絶たれたけれど、象の野球を絵に描いてみたかった」と大介は語り、ニコニコさんは「動物を殺さないですむ戦争をしてください。そうしたら、僕はお国のためにどんなことでも一生懸命に働きます」と訴える。
    終戦の8月、声高に反戦を訴えるのではないが、動物たちと飼育員の交流を通し、じんわりと観る人の心に戦争のむごさがしみてくる。
    動物園の柵と獄の柵を兼ねたゲートの置かれたシンプルな舞台装置も心に残る。

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