studio CAS/T the4th recital 公演情報 studio CAS/T the4th recital」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    ヨーロッパの雰囲気が魅力的
    「ふだん、ダンスにあまり縁のない人にも観てほしい」という趣旨に反応して観に行きました。
    コンテンポラリーダンスは久々で、観終わっての感想は、何か癒されたというか、元気をもらえた爽快感がありました。
    このところ、立て続けにお芝居を観ていたせいか、筋を追ったり、台詞に注目しないで楽しめるダンスもたまにはいいなあーと思いました。
    2部構成で、第一部はバラエティー豊かなダンスで綴るエチュード、第二部は演劇的な内容の「Chess」。
    全体を通して洗練された構成・演出で、とても楽しめました。ただ一点、予約時に、「全体を見渡せ、比較的前方の観やすい良いお席がご用意できます」とのことだったのでしたが、私は目にダメージがあって極端に視力が弱いため、当日用意された客席中段より後方の席では、ダンサーの顔の表情がほとんど読み取れませんでした。残念です。席が後ろの方と知っていたら、オペラグラスを持参したのに。
    プログラムに出演者の顔写真が載っていないので、初見では誰がどの役を踊っているのかもわかりません。
    観客のほとんどが主催者の教室の生徒さんとその関係者で占められているせいかもしれませんが、外部にアピールしていく意向なら、一般客への配慮も必要ではないかと思います。

    ネタバレBOX

    第一部はエチュード。森羅万象、生物の営みを表現し、「生の歓び、素晴らしさ」を訴えているらしい。いちおう各シーンの表題はプログラムに書いてあるけれど、暗い客席でいちいち数えて照合して観ているわけにもいかず、観てすぐそれだとはわからない抽象的なダンスもあるので、自分の見方が合っているのかどうか自信がない。
    ただ、「労働」の部分だけは動きですぐ理解できた。弾むようにリズミカルな動きで、ダンサーがまるで音符のようだった。多様な音楽の選曲が素晴らしく、その場面のダンスの雰囲気にとても適していた。流麗な振付が印象的。
    ダンサーの技量にばらつきがあるせいか、群舞の場面では一斉に同じポーズをとるときに角度や動きがそろわず、片足で立つとふらついている人もいた。金子氏の振付は技量の優れたダンサーを揃えたら、もっと引き立つに違いない。
    虹のようにカラフルな衣装(Kei)や、シーンの終わりを表す照明の落とし方が迫り来る夕闇のように絶妙だった。振付が多少単調な場面もあったが、音楽でカバーされていた。

    第二部は物語性が濃い舞踊劇風。こちらの出演者たちは第一部より技術的に上級者を集めているようだった。西洋のチェスと「ロミオとジュリエット」の悲劇が組み合わされたような内容。
    白と黒のチェスの駒で対立する両家の人々を表現し、衣装(金田かお里)は中世のヨーロッパ貴族風。シーン1の「繰り返される悲劇」で、両家の間に「ロミオとジュリエット」のすれ違い自殺の場面が暗示される。これが両家の対立の発端らしい。やがて、白の貴族の家に男の子が誕生し(両親の間からまさにポコッと産み落とされる 笑)、黒の貴族の家の娘と相思相愛になるが、両家の両親同士がいがみ合っているので、若い二人は悩み苦しむ。
    シーン3の「祝い」の場面で、両家の人が白黒入り混じってまるで中世絵画のように静止する場面が美しい。両家にはそれぞれ、神父とシスター(ロミ&ジュリで言うところの乳母役?)がいて、それぞれ白と黒で色分けされ、シーン7の苦悩の場面に登場する。この神父とシスターが2人の家のしがらみや「良心の呵責」を表しているようだ。若い2人の衣装の胸にも十字架がデザインされているのは、「ロミオとジュリエット」の原作はモンタギュー家とキャピレット家の対立が宗教戦争を象徴しているという背景がうかがえるようで興味深かった。
    そして「ロミオとジュリエット」のように、また若い2人の死によって両家は和解する。
    衣装デザインがとにかく素敵で振付もドラマチック。特に、中世の舞踊を再現したような輪舞が良かった。

    金子礼二郎氏のダンス作品はヨーロッパの雰囲気があって好きだ。また観てみたいと思う。

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