覇王歌行(はおうかこう) 公演情報 覇王歌行(はおうかこう)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 今から本当の事を話しますよ
    今から本当の事を話しますよ、と歴史の登場人物が観客に語りかける。

    項羽と劉邦の話の知識が、そもそも無いので、どれくらい史実(と云われているモノ)を遊び倒しているのかは定かではないが、
    博物館で、自分の持ち物だった遺物を手に取り、「本当はね~」ってな具合で話しかけてくる項羽は愛くるしい人物だった。

    ネタバレBOX

    最後の最後で、最近の歴史研究では~、と、それまでの物語を更に無化するような字幕(字幕のみ!舞台は無人)を入れれる作家のセンスがカッコイイ!
  • 満足度★★★★

    中国劇の力の一端がここに…
    現在の世、項羽が自身の時代を振り返り、物語る形で本作は幕を開ける…。

    いや、凄かったですね。
    観ようかどうか迷っている人は観た方が良いと思います。
    中国という国の、演劇力の高さに「わずか」に触れた一夜でした。

    項羽と虞姫。二人が初めて出逢った時に姫が見せた艶やかな舞。
    ひらひらと軽やかな身のこなしに合わせてふんわりと舞っていく生地の
    動きに合わせるように、音楽が鳴り響いた時にははっとさせられ、

    有名な「鴻門の会」のエピソードの時の、劉邦を狙う項荘の剣舞の
    身のこなしの凄まじさに目を奪われる。

    中国の役者は迫力があるね。 つい食い入るように見てしまう。
    惜しむらくは、もっと広いステージで上演したらさらに迫力ある舞台に
    なっていたのではないかということ。

    ネタバレBOX

    演出も素晴らしかったけど、脚本・潘軍の項羽の解釈が素晴らしい。

    野心に満ちて、なおも満ち足りることを知らず、傲岸不遜であれど
    誇り高く、自分を、信を曲げることをしない男。 そして夏の空のように
    大きい思慮を持ち、ロマンチックな男。
    正直、憧れますね。 素直に格好良いと感じます。

    対して、劉邦は人質となった祖父と妻を、項羽の計略にびびって
    助けることが出来ず、果ては「二人を煮汁にするのなら、その一部を
    私にも分けて下さい」と言い募る、腰ぬけ男。 
    計略には巧みだが、本質的にはならず者で信義を知らない。

    項羽の独白にも「信を裏切るのは最大の恥知らずだ」という言葉が
    あるように、この辺は中国の激動の70年代を潜り抜けた作者の
    人間観がそのまんまストレートに出ていますね。

    結局、項羽の悲劇は自身が「見え過ぎる」ことにあるのでしょうね。
    虞姫が「将軍の悲劇は常勝であること」と喝破していましたが、
    項羽自身自分の気質が天下には求められていない、故に滅ぶ運命しか
    用意されていないことを見通していた節があります。 その運命を
    気高い項羽は甘んじて受ける。 一種の悲劇です、これは。

    最後の場面での「四面楚歌」。 一般的には、自分の周りには
    もう一人として味方は無いのだ、と理解されがちだけど。

    項羽は言う、

    「私には隠されたある一面が見えていた。あれは漢軍の敬意の
    表れなのだ」

    つまり、これから滅びゆこうとしていく一人の英雄に対しての隠し切れない
    万人の尊敬の念と、ある時代の葬送歌だというのです。 この解釈は
    ハッとさせられましたね。 深い洞察です。

    虞姫がいわれてるより、出番が少なくてそこは残念だったけど
    一人の男の語る「物語」としては素晴らしく、まさに時を超えて過去に
    自分を重ねるような思いがしました。

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