満足度★★★★
暗黒メルヘン、闇の世界のファタジー
くるみわりの世界が、現実とも夢ともとれるのは原作の世界観だと思いますが、さらにこの芝居が現実か虚構かわからなくなる仕掛けがあるあたりが、いかにも寺山でした。
満足度★★★★★
怪しく、美しく、楽しく-アングラの魅力満載
演劇実験室◎万有引力の本公演50回記念公演。寺山修司が1977年に人形アニメーション映画の台本として書き下ろしたものを岸田理生が潤色し、さらに演劇実験室万有引力のJ・A・シィザーの演出プランにより、初めて上演されることになった。
かつて西武劇場(現パルコ劇場)で上演される予定が実現せず、映画化も実現しなかったというが、人形アニメの「くるみ割り人形」はサンリオ映画によって1979年に映画化され、作詞は寺山修司が担当している。おそらく当初は、寺山の脚本で映画化されるはずだったのではないだろうか。
「残酷メルヘン」と銘打たれ、子供向けの内容ではなかったので採用されなかったのだろう。今回の会場には小学校低学年くらいの子供連れも来ていたが、この年齢でアングラ芝居を体験できたってスゴイ!
この話はクラシックバレエでしか知らなかったが、寺山はホフマンの「砂男」と「胡桃割りとねずみの王様」をベースにして、「夢」と「眠り」の問題に取り組んだ。子供を眠らせようとするために紡ぎだした砂男が夢の中にも出てきたらどうなるんだろう、という寺山の問いかけ。
舞台はとにかく、怪しく美しく楽しく幻想的で、ワクワクした、中学生のころ、中に入ることができず、想像していた自分の中の60年代アングラ劇「天井桟敷」のイメージそのままで感動した。暗転が多いが、通常の芝居の暗転とは異なり、闇が舞台の要素のひとつになっている。昔、「アングラ劇は闇を味方につけた演劇」と言った人がいたけれど、まさにそのとおりだと思った。