赤い月 落ちた犬 聞こえますか 悲鳴 公演情報 赤い月 落ちた犬 聞こえますか 悲鳴」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    語りと人形の劇「犬」

    “病んだ魂”。嫌な予感がして観に行ったが、ズバリの内容。仏教説話調の気の滅入る鬱話。漱石門下の作家、中(なか)勘助の1922年(大正11年)発表の小説が原作。仮面と衣装だけの人形二体を使って演じられる。下手の端の向かいに生演奏で劇伴を奏でる松本利洋氏、生ドラムの迫力。笛やギター、DTMを駆使して飽きさせない。上手に語り手の玉寄長政(たまよせちょうまさ)氏、下手に語り手の岡屋幸子さん。この二人が台詞なども担当。バラモンの苦行僧の操演はかわらじゅん氏。子供を孕んだ若き美しき娘の操演は奥本聡氏。

    11世紀、アフガニスタンのスルタン(君主)、マームード(マフムード)はインドに17回侵攻、略奪と虐殺を繰り返した。イスラム教徒である彼等はヒンドゥー教仏教ジャイナ教徒を迫害し寺院を破壊して回る。北インドのクサカという町で森の中、苦行を続ける一人の老いたヒンドゥー教のバラモン僧。ハヌマーンに願を掛けて礼拝に通う若き美しき娘と出会う。娘の願について問い質すと、侵略してきた将校に犯され身籠ったこと、そしてその男のことが忘れられずもう一度逢いたいことを告白する。バラモン僧はその娘に七日間の清めの儀式を強要する。草庵で全裸になり、聖水で身を浄める娘。半生を賭した禁欲の果てに老僧が辿り着いた真理とは。

    なかなか観られない邪悪な演劇。性的描写の過激さをもって、発禁処分を喰らった原作。「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」。

    ネタバレBOX

    二人が犬になるまでが面白かった。犬に化身してからは「語り」ばかりなので、もう少し絵的に見せて欲しかった。(二体の犬の人形も欲しいところ)。
    話が佳境に入るとドラムが盛り上がり、岡屋幸子さんの台詞が掻き消されて聴こえないという勿体無さ。

    『秘密集会(しゅうえ)タントラ』のような後期密教の思想を連想。全ての欲望、快楽を否定して煩悩を跳ね除け禁欲主義に生きることと、禁じられた全てを肯定して欲望のままに生きることは実は同じ道程なのではないか?という発想。
    真言宗の開祖、空海の秘した禁断の『理趣釈経』の内容は性愛と煩悩の全肯定であった。

この公演に関するtwitter

初日1週間前から「団体名」と「公演タイトル」を含むツイートを自動表示します。
(ツイート取得対象にするテキストは公演情報編集ページで設定できます。)

  1. ところで横浜ボートシアター『犬』、CoRichではチラシの惹句がタイトルと間違われるという悲劇が発生しているのであった……。 横浜ボートシアター「赤い月 落ちた犬 聞こえますか 悲鳴」11/18(金)~11/20(日)於:ウエス… https://t.co/lv04rwzjUF

    約2年前

このページのQRコードです。

拡大