ROMEO and TOILET 公演情報 ROMEO and TOILET」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    徒労の美
    昨年末、アサヒ・アートスクエアで上演された
    開幕ペナントレースのニューヨーク凱旋公演「ROMEO and TOILET」が
    装いも新たに3月のシアターグリーンにやってきた。

    再演といっても開幕ペナントレースの再演である。
    それはそのまま再構成という言葉に置き換えられる。
    キャストの一部に新メンバーを迎え、
    新しいアレンジを加えての上演は非常にスリリングであり、
    東京芸術見本市2010の関連で初めて観劇した者はもちろんのこと、
    彼らの舞台を観るのは5回目である自分にとっても
    刺激的なライブだった。



    正直な話。
    アサヒ・アートスクエアの凱旋公演よりVJが加わった開幕のステージに、
    自分は支持者として一抹の不安を感じていた。
    ただでさえ高さのある会場でのアクトに、揃って低身長のパフォーマー、
    大スクリーンに大写しの映像、という取り合わせは
    本来彼らが最大の武器としてきた身体の存在感を薄めてしまうのでは
    と思ったからである。

    意図したものなのかはわからないが、
    実際、昨年末の「ROMEO and TOILET」は、ビギナーに対して
    ある意味親切であり、ポップなつくりをしていたように思われる。
    身体の存在感がやや薄かった。味付けがやさしかった。
    たとえるなら、ロックバンドにターンテーブルが入った演奏のように
    公演全体から「気に入らなければ流せる」ような風通しのよさを感じたのだ。
    今回の公演の知らせを聞いたのは、開幕ペナントレースがこれ以上ポップに
    ならなければよいな(今のバランスなら常人から変態まで広く楽しめる)
    と思っていたまさにその矢先であった。



    で、3月バージョンを観た。

    結果……よかった!!!!!!

    身体が濃かった。味付けがしつこかった。
    ポップなんてとんでもない、恐ろしい地獄絵図がそこにはあった。
    途中失笑すること複数回。えらい興奮したのである。
    ビギナーにとって快適だっかたはわからないが(笑)
    本当にあきれ果て、シビれた。
    その「痺れ」はメンバーの人選と劇場のつくりによるところが大きいと思う。
    彼らの狂態に拍車がかかっていたこと、
    また、(Box in Boxシアターの構造上)客の視界にその狂態から
    目を逸らす場所がなかったことがよかった。

    なかでも、特に目を引いたのはサポートメンバーの存在。
    マンガばりの特権的肉体を持つヤナカケイスケ 改め 谷仲慧輔、
    そして郷家まさゆきの怪演である。
    鹿殺し 高橋戦車の不在を一切感じないほど客演陣が充実していたのだ。
    一方、フロントマンであるテンション番長 高崎拓郎 改め 高.ok.a.崎拓郎の
    尋常ならざるテンションは過去最高潮。
    劇団員 あらいたろうが便器に暴虐の限りを尽くされるお馴染みのネタや
    劇団員 大窪祐々 改め 大窪寧々の情けなさが炸裂する定番
    「サーカス一のスター I am a オロチ」など
    最早伝統芸能のようにリピーターに定着している演目も健在。

    つまりは彼らの身体パフォーマンスって団体競技であり
    エースが点獲って、新人が目立てば、もう再演だの何だのって
    カンケーなくなるのだ。単純に気持ちいい奇行の観戦時間。
    つまり、何度だってまた観たくなる彼らになるのだった。



    気の利いたギャグはタイトルだけ。
    美女不在。
    涙を誘うストーリー皆無。

    それでも目を離せない狂態を、個人技ではなく演出で創っているのが凄い。
    俺は一生忘れないと思う。
    「ゲットマッスルアイアンボディー!」と何度も絶叫して倒れた
    ヤナカケイスケの全くの徒労を。
    全身タイツの男が白目を剥いてゲロゲロ悶えているのを
    ただ客席でじっと見つめているだけの全く意味のない時間を。

    あれ?あの公演、VJあったっけ?くらいのほうが開幕のライブはいい。
    それは、身体の勝利であったということだ。



    あれ?あの公演、VJあったっけ?

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