公演情報
「どっか行け!クソたいぎい我が人生」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
静かな演劇系の一つだろうと(見てないのに)認識していたが、今回初観劇にて、思っていたより中身が詰まっていると感じた(風景描写に終わる「静かな演劇」系作家も多いが)。
占部房子演じる母が、やや「迷惑がられ」なキャラで、愛すべきキャラでもあるがスピリチュアルに依存する(ゆえに)忙しない。娘や弟、その妻という親族が彼女の能動性に対する受け手となっているが、第三者的存在として母の職場のうんと若いバイト青年がいる。家庭の事情で苦労して育った変わり種で、繊細さと豪胆さを同居させたマイペース人間。母と職場で会話をし、近々誕生日だというその日、気さくなバイト青年は母とお出かけ(デート)に付き合い、その足で自宅に連れて来る。誕生日のケーキを持って来た弟夫婦と、娘が居る。全く物怖じしないバイト青年と、親族それぞれのキャラとの接触によるリアルな化学反応が良い。母はバイト青年に運気を宿す的な腕輪を贈るが、少しスピリチュアルに傾きかけている弟の妻も「私ももらっていい?」と欲しがり、母は一瞬止まるが気前よく差し出す。バイト青年が母に対し分け隔てなく、遠慮もなく、この日は母の存在も受け入れられた良き日。だがバイト青年と娘が出くわし、カメラマンを目指して東京に行くというバイト青年の話から、娘は自分の中に興味を芽吹かせる。バイト青年がカメラの学校の関係で単発の仕事があるので近々東京に行く、という話を聴いて娘は思わず「自分も行きたい」、と言う。その後母の不調が始まり、一悶着の末、どうにか東京行きは叶うが、「母には自分が必要」という観念に囚われていた娘がそれを一枚一枚剥ぎとる過程もそこに挟まり、劇の最後には母に自分の意思を伝えるに至る。
母は別れた夫が娘を奪いに来る、という強迫観念に常に囚われ、元夫の状況を探るよう弟に依頼してもいたが、終盤、元夫は数か月前に病院へ運ばれ亡くなっていた事を知る。夫が娘を奪いに来る・・被害妄想に駆られテンパり、風水やスピリッツの雑多な知識を自分流に解釈し、誕生日に娘からもらったルビーのピアス(冒頭、娘の愛情の証を母が受け止める心温まるシーンがある)をゴミ箱に捨ててしまう。そしてそれを「こうするしかないの」とわざわざ娘に告げる母(深層心理で娘を憎んでいるといった線はなく、娘との二人暮らしの継続だけを願いとする母の「苦渋の決断」として演じている)。娘を背中からハグする場面が何度かあるが、占部は精神状態の振れ幅の大きいこの人物を双極性障害や多重人格のようには演じず、愛=依存感情の多面的な表われ方として滑らかに演じ、存在感があった。ルビーのピアスをゴミ箱に捨てたと聞いた娘は母の行為を「症状」として受け止め切れず、娘の反応を見て「まだゴミ箱に入ってるから(大丈夫)」と告げるも娘は不満を露出させ、出て行く(娘にとってここが母との関係における許容限度である事が如実に判る場面を作っている)。
共依存の母娘の関係が断ち切られる大団円は、すっかり静かになった母親が東京から戻って来た娘を迎え入れ、彼女の吐くだろう言葉をとうに分かっているようにソファに座って正面を向いている。一筋の涙が見えたと思うと暗転。美しいラストである。
福名理穂・ぱぷりかを随分前に検索して確か中国地方だった記憶。それを思い出したのは広島っぽい方言で芝居が進む。この方言の味もいい。
ハッピーエンドではあったが、ディテイルが物を言う芝居である。弟は元々姉の持つ弱さを見て育ったのだろう、障害児の兄弟姉妹を持つ子どもを「きょうだい児」と呼ぶらしいが形象にその面差しがあり、心根の優しさと同時に、姉を良く知っているからこその用心深さもある。その優しさと、彼の妻がスピリチュアルにハマる素養のある人、という取り合わせがまた「ありそう」(生涯苦労を背負うタイプの人ってのがいる)。バイト青年はその飄々とした風情が現代の達観した若者のある種の典型にも見える。どの役も好演していたが、中心となる母の存在感がやはり大きかった。
一点、未回収というか疑問が残ったのは、終盤の母親は社会性をも疑いかねない状況になるが、バイト青年も居るスーパーには出勤している日常が、欠勤続きになっているといった説明はなく、状況は変わっていないという前提で良いのだろうと思いつつ観ていた。外で働く日常は自己が暴走しない歯止めになっているはずで、その部分が気になったと言えば気になった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
#占部房子 #富川一人
#林ちゑ #阿久津京介
#岡本唯(敬称略)
2021岸田國士戯曲賞を受賞した #福名理穂 さんの新作。また更に脂が乗ったのではなかろうか。キャスティングも、依頼できる範囲、選べる範囲が少し広がったはず。今回のキャスティングも素敵だった。
福名さんの本には、少し生き辛そうな人、少し周囲を困らす人がいる。今作も悪気はないけれど人を困らせる人と、それを献身的に支えたり見守ったりする人がいて、観ながら呼吸が苦しくなる。
人の不幸は蜜の味。認めたくはないけれど、誰もが心の奥の奥の隅の方に持っている感情。対象が身近な人であればあるほど、その毒は強く痺れる。
絡まった親子の絆、ちぎれた……或いはちぎれかかった親子の絆の修復は一筋縄ではいかないことを我が家でも実感している。
何を選択したとしても、若者の未来には光が差していて欲しいと切に願う。
実演鑑賞
満足度★★★★
共依存症の話である。舞台は広島の小さな地方の都市の母子家庭の家族物語だが、見ているうちにいまこの社会に瀰漫している世界が広がっていく。岸田戯曲賞を受賞した作品は見ていないが、正当な演劇の伝統も感じさせる新人の爽やかな初見であった。現代版・「欲望」のブランチである。
夫と別れた母44歳(占部房子)は娘(林ちえ)を引き取って暮らしている。別れた夫のことは気になるが知りたいような知りたくないような。密かに弟(富川一人)に聞いたりしている。弟が妻(岡本唯)とともに姉の近くに住んで、なにかと面倒を見ているのは、この姉には、ちょっと病的な依存症があって、霊的な存在や占いを信じて生活の指針にしてしまうからだ。娘を溺愛して、大学三年生になっても手元から離せない。占部房子演じるこの母の造形が、新鮮で、まずこの舞台の第一の見どころだろう。こういう人物は、今の社会のどこにもかなりいるが、今までは都合のいい脇役でしか舞台に出てこなかった。
この舞台はそれを正面に据えて、今の社会の鏡にしている。
この母の誕生日。娘は、母のためにイヤドロップを買ってきた。冒頭で、二人の共依存が日常の一コマとして描かれる。母の働く場の若い労働者(阿久津京介)や弟夫婦を招いての誕生日パーティ。娘の自立や、弟夫婦が交通事故にあう事。近所で起きた同年齢家族の殺人事件の噂話、父が実は死亡していたことなどをめぐって、家族関係が微妙に変わっていくのを面白く見せる。ダレない。
最近の若い演劇人も劇団も、威勢よく踊ったり歌ったりしたり、したり顔でスローガンを叫んだり、自分本位の身辺雑記をやって見せたりするだけでは、やっていけないことが分かってきて、芝居でリアルを求めるようになった。この新人福名里穂もこの家族の表現はリアルで、かつ、新鮮、面白く見られる。先に言ったように、見ている間は笑っているが実際はこういう人間関係の不調は今この社会に上から下まで溢れているのだ。占部房子はそこをユニークに演じる。新劇系のうまいとされている女優なら出来る役だろうが、愛嬌もある独自の世界を開いて、この女優らしい実績を一つ積んだ。占部以外のよく小劇場で見るが俳優たちも、役を把握して的確に演じている。
人物の配置はいいのだが、この後物語の推移が、普通の運びであるのが物足りないが、ここをユニークにすると、普通の社会の話でなく共依存症の病気の話になってしまうのでやむを得ないところだろう。
昨年の岸田戯曲賞と言うのはよくわかった。だが、このタイトルは下手だなぁ。
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/11/25 (金) 14:00
2度目のユニット。昨年度の岸田戯曲賞を受賞後の初作品。家族の物語。(2分押し)105分。
広島の小さな町で暮らす母と娘。星占い,パワーストーン,タロット等のスピリチュアル系にハマる母と、独立したいが決断ができない娘と、母の弟夫婦や母の職場仲間の若い男が展開する物語。母と娘の両方に問題と言うか引っ掛かりを感じるのだが、それぞれに共感できる/理解できる部分もある。私の感触に最も近いのは弟か。母役の占部房子の存在感は見事。