ハレモノ 公演情報 ハレモノ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★

    正しいことばの使い方
    2007年4月22日(日) 18:00 千秋楽
    『ハレモノ2007』
    下北沢「ザ・スズナリ」

    間寛平………長野にあるさびれた旅館の主人
    ベンガル……新人賞を取って以来、ヒット作が出なくて苦悩する小説家

    ネタバレBOX

    約1時間50分。前半の1時間は世界観・人物を知るためのギャグ、ボケ仕合。会場はかんらかんらと笑う。
    後半の50分はストーリーの中核に向け、動き始めました。
    冒頭の導入、実はエンディングでタネ明かしとなります。
    これは喜劇であり、エンディングはシュールな結末を迎えました。


    冒頭の導入、第一幕はこう始まる。
    スーツでビシっと決めたベンガル演じる小説家の芥川賞の授賞式から始まる。謝辞が建前で、本音は芥川賞を取るべくして執筆した作品とスピーチ。そのスピーチは『思い起こせば、あの男が現れなければ…』としめくくられる。

    『正しいことばの使い方』という作品で新人賞を取って以来、ヒット作に恵まれず、テレビのワイドショーのコメンテーターとして日銭を稼ぐ日々。若いディレクターにコメントが難しく、さらに話が長い。もっとカンタンに短くと叱咤される。

    なんとか起死回生をと模索した小説家は、賞を取る創作小説を作るために、生まれ故郷の長野に1ヶ月ほどこもることにする。
    新人賞を取った作品が長野で執筆した為で、再起をかけようとしたのである。

    さびれた旅館についた小説家。そこで出会った旅館の主人に翻弄される。ことば使いがおかしい。話が通じない。
    堅物の小説家は自由奔放な主人に困惑する。

    主人の妻が美人であることから、創作小説を不倫と逃避行の話として考える。しかし、なかなか話が思い浮かばず、先に進まない。

    旅館の主人は作家志望であった。3年前に子供が他界した手術する金がなかったため、筆を取るのをやめた。今は好きでもない旅館を営む主人をやっているのである。
    美人な妻は主人に、自分の過去の作品を小説家に見てもらうように薦める。小説家の刺激になるだろうと。主人は自分の作品をプレゼントとして小説家にあとでもって行きますと言う。

    そんな中、近所の少女が旅館の夫婦にあいさつにやってくる。女優志望の彼女は上京して成功したいと告げる。少女の父は大反対、母親は娘に興味がない為、旅館の夫妻に自分の気持ちを知ってほしかったためである。

    そんな気持ちを知った旅館の女将は、ここに宿泊している小説家にTV関係者のコネクションを紹介してもらうように薦める。
    少女は意気揚々と小説家の部屋を訪ねることにした。

    何か刺激がほしい小説家は、少女が部屋にやってきたことを、旅館の主人からの刺激的なプレゼントと勘違いする。
    娼婦と勘違いした小説家の事件は、地元スポーツ紙のスキャンダル記事となる。

    旅館の主人のプレゼントであった作品を小説家が見るが、最初の1ページの導入部だけを見て、ダメだダメだと思った。あんたは昆虫や動物の世界を書くのがいい、と適当なアドバイスを言うだけであった。
    あなたの言うことはでたらめだらけだ。正しいことばを使いなさい。

    スキャンダルが大きな騒ぎとなり、出版社から釈明会見を開くことを迫られる。小説家は旅館の主人に口裏を合わせ、次のことば以外のことはしゃべらないように命令する。
    『それは全くのデタラメです』
    『先生はそんな人じゃありません』
    『私が目撃者です』

    記者会見で主人がインタビューされたとき、最初はスキャンダルを否定する内容となり、小説家はほっとした。
    しかし記者からの追及で、このことばが裏目に出た。
    小説家は主人を問い詰めるが、主人はこう言った。
    正しいことばを使ったほうがいいんじゃないですか、と。


    スキャンダルがもみ消せなくなり、新作小説出版の話はなくなる。小説家としての人生を終わらせまいと、部屋にひきこもりペンを取るが、話がすすまない。
     話が進まないのは旅館の主人を殺していないからだ!と思い、主人に襲いかかる・・・。
    ここで舞台は暗転する。

    (次の幕は拘置所・刑務所か?と想像したが少し違った)

     エンディングは、冒頭と同じく、小説家の受賞スピーチのシーンとなる。しかし辺りの様子がそぐわない。何かがおかしい。
     明かりが全体を照らす。
     小説家の服装は病院のパジャマ。隣には精神科医。
     その脇には、出版社の担当者と旅館の主人。

     旅館の主人は無名ながら新人賞を受賞したのである。
     その新人賞作家は入院している小説家にお見舞いにやってきたのであった。
     作品は動物のキリンのメルヘンなストーリー。奇しくも小説家がそういうものを書いていればいいんだと適当にアドバイスしていた話であった。

     ぶつぶつとスピーチする小説家。旅館の主人の名前を耳にして暴れだすが取り押さえられる。

     新人小説家が口にする。正しいことばを使いなさいと僕に教えてくれたじゃないですか、と。

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