ショーメン 公演情報 ショーメン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★

    赤シャツ茶髪
    舞台の四方に客席を設けるという、なかなか珍しい形のダンス公演。舞台は長方形の白い床。客席は長い辺に3列、短い辺に4列。開演前、どこに座ろうかとかなり迷った。

    ネタバレBOX

    ダンサーの編成は男6女5。全員が金髪茶髪で、形はいろいろだが一様に赤いシャツを着ている。開演の15分くらい前に登場して、ウォームアップを兼ねた感じで開演時間まで動き回った。白い床に金茶の髪、赤いシャツというのがなかなかポップな色彩感。
    雑然と、思いおもいにダンサーが動いているその中央付近で、任意の二人が激しく動きながら体を接近させる。近づきつつ、接触・衝突をかわしながらの相当すばやい動き。
    たとえばストリートダンスで、大勢が円陣を作り、その輪の中でダンサーが一人ずつ踊りを披露して技を競うというスタイルがある。開演前のパフォーマンスにはそれに近いものを感じた。
    今回はなにしろ、ダンサーの周り全部が正面だというコンセプトでダンスを作っているので、見る側もついそういう意識で見てしまう。

    開演前のかなり活発な動きに反して、開演直後は意外なほど静かな展開になる。いろんな向きで静止したままのダンサーたち。そのうちの二人、三人が動きを合わせて徐々に動き出す。
    四方の客席の角のところが4つの通路になっていて、ダンサーはそこを通って盛んに出入りを繰り返す。

    開演前のパフォーマンスを除けば、上演時間は60分ほど。前半はダンサーの動きも緩やかで、まるで白い床に配置されたオブジェのよう。
    舞台にいるダンサーというのは、人間の形をしているという意味では具象そのものだが、床の上で丸まって蠢いたり、抱き合った二人がまるでダンゴ虫のように転がることで俄然、抽象性を帯びてくる。四方に観客がいるという観点からすると、白い床の上でゆっくりと変化するダンサーの体を見せるこの前半は美術のインスタレーションに近いのかもしれない。美術館に展示された彫刻などは、どこが正面というわけでもなく、観客が作品の周囲を移動しながら眺めることが多い。ダンスの場合は観客が移動しなくても作品のほうが動いてくれる。

    後半になるとだんだん動きが活発化する。シンプルな、力強いリズムで全員が踊りだす終盤では、民族舞踊というか盆踊りというか、作品として特に正面を意識することもない、ワイルドな群舞になる。

    実際のところ、舞台の四方に客席を設けるというのは、観客よりもダンサーの意識への影響のほうが大きいだろう。
    一観客としては、踊る側の心理などはなかなか想像もつかないが、ステージを客席が囲む形のパフォーマンスについて、この作品を見た後であれこれと考えた。

    演劇では青山円形劇場というのが周囲客席型の代表だろう。ただ、演劇は台詞をしゃべるので、役者が後ろ向きになったりすると声が聞きづらくなるし、役者の表情が見えなくなるので、四方が客席というのは基本的には演劇向きではない。
    スポーツ観戦の場合は、相撲にしろ、野球にしろ、アイススケートにしろ、体操にしろ、周囲どこから見てもそれなりに楽しめるし、正面をそれほど意識することもない。
    ダンス作品の場合は、声は基本的に発しないから正面に観客がいる必要はない。ただ、ダンサーの表情が作品にどれほどの重みを持つかによって、正面の重要さは変わってくるかもしれない。とはいえ、終始後ろ向きで踊られたら、それはかなりイヤだろう(笑)。

    山田うんのダンス作品の場合は、感情表現よりも、体の形と動きの面白さを追求するという面が強いので、今回のような四方客席型の上演でも不足感なく見られたのだと思う。

このページのQRコードです。

拡大