日本人のへそ 公演情報 日本人のへそ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    良い出来、良い劇団。これでラストなのは勿体無い。そう思わせるいい芝居だった。『虚構の劇団』、結構観た気がしていたが実はニ回だけ。『サードステージ』と混同していた。

    井上ひさしの戯曲デビュー作。こまつ座で観た朝海ひかるさん出演の作品がエロかった。強烈に印象に残っている。
    冷静に観ると、日本人論の塊。『日本のボス』なんて、今まさに暮らしているこの現実の仕組みを大声で糾弾している。一般的な皆さんはニヤニヤ苦笑いで収める話なのだが、山上徹也みたいな自爆テロリストがうようようごめいている時代の変革期。「こんな国は嫌だ!」と叫び出す奴が現れるかも知れない。同性愛ネタも強烈で、「昭和天皇のルックスがイマイチだから日本軍は弱くなった」と言いたい放題。タイトに削ってある為、作品の本質が掴み易い。

    かつて一世を風靡したストリッパー、ヘレン天津を演じる小野川晶(あき)さんが魅力的。おかっぱの女学生姿はT-ARAのボラムを想起。葉山レイコに似た美人。
    狂言回し的存在の久ヶ沢徹氏は膨大な台詞を炸裂。冒頭の歌の途中で「間違えた!この後何だったっけ?」と他の共演者に聞いてそこから立て直す場面も。観ているこっちがハラハラした。
    小沢道成氏のスタイリッシュなヤクザ、渡辺芳博氏のクリーニング屋の親父も強烈なインパクトを残す。
    健康的な木村友美(ゆみ)さんの肢体も目立つ。
    下着姿で踊りまくる華やかな女優陣が美しい。
    梅津瑞樹氏のファンが矢鱈いた。
    ストリッパーのストライキの歌が秋元康調で良かった。

    上部スクリーンにテンポよく映し出されるイラストが本当によく出来ている。膨大な言葉遊び、聴覚だけの情報が視覚を使ってより深く認識でき、井上ひさしの徹底的に詰め込んだ言語世界を密度濃く味わえる。

    ネタバレBOX

    岩手の山奥の村から集団就職で上京する女の子。「都会の男に汚される位なら」と、実の父親に強姦される。勤め先のクリーニング屋では主人に愛人になるよう懇願され、奥さんから追い出される。転げ転げて職を転々とし、トルコ嬢からいつしかストリップの舞台に。ストライキのリーダーになり初恋のバッタ屋(ヤクザ)と再会し結婚するもそれも束の間。日本の風習、権力者への贈り物として組長、右翼、遂には代議士の妾に。『嫌われ松子の一生』だ。小野川晶(あき)さんの佇まいが良い。

    私立吃音矯正学院の教授の論説。『人間の尊厳を冒す「吃音症(=どもり)」とは“言葉”の病気である。“言葉”(=文字、言語)を操ることこそ、人間が他の動物と一線を画す拠り所である為、真の人間的病気といえる』。井上ひさし自身も吃音症に悩まされた経験があり、それが元になっている。
    この人間の尊厳を取り戻す為の治療劇こそが今作。

    井上ひさしは「吃音症の人は心の優しい人だ」と書いている。他人の反応を気にする余り、適切な言葉を見付けられず慌ててしまい喋れなくなる。自分の伝えるべき言葉が見付からないまま、羞恥に悶え苦しみ続ける。
    結局、今作では誰のどもりも治ることはないのだが、この治療劇をずっと続けていくことそのものが治療であるという結論。井上ひさしは生涯治療を続けたのだろう。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    井上ひさしの破格の戯曲を、賑やかな弾けた芝居として見事に成功させた。この戯曲前半は歌とコントとストリップショーの数珠繋ぎで、意外と隙間があって、下手をすると隙間風が入ってきて熱量を下げてしまう。今回はそこを映像と照明とテンポでうまく埋めて、軽やかに見せた。ヘレン天津(小野川晶)の「転々の変転」は、元は合唱隊と教授の歌だけなのに、紙人形芝居の演出で楽しめた。冒頭の「あいうえ王」の吃音矯正セリフや、教授の長セリフも奥の壁に映像や、キーワードを映した。井上ひさしの言葉の芸術を、耳で聞く聴覚だけでなく、視覚化もして観客が飽きずに楽しめるようにした。そういう工夫が随所にあった。カットもうまく施して、長さを感じさせない。前半1時間40分、休憩15分、後半45分。計3時間10分。

    何と言っても殊勲賞はストリッパーを演じた女優陣。胸から腰から見事な曲線美と、シェイプアップしたおへそで、見惚れてしまった。しかもたくましい。堂々としたお色気サービスで、安心して見ていられる。特に小野田晶は、セーラー服のおぼこ娘から、成熟したストリッパーに見事な変身で感心した。セーラー服時代は黒髪のカツラを被っていたかな。それも大きい変化。胸も急に大きくなったように見えたのは不思議。おそらく衣装のせいだろう。

    コメディアンのチャンバラコントも井上ひさしの戯曲からは離れて、自由に創作。いくら切られても死なないギャグなど、二人の刀の掛け合いが素直に笑えた。。

    音楽も良かった。担当は河野丈洋。服部公一、宇野誠一郎の先人のいいところは残しつつ、うまい具合にリニューアル、アップデイトしていた。「10人のコメディアン」は「10人のインディアン」が元なのであまり変わらない。しかし、岩手の農民たちの歌は、メジャーとマイナーの転調を使った、結構聴かせる歌にしていたし、ストリッパーたちの立ち上がる歌も良かった。「日本のボス」だけは、ピアノ以外のドラムや管楽器も入れて派手なアレンジで、非常に盛り上がった。

    後半のレズビアン、ゲイとオネエのコント、推理劇風の犯人探しも淀みなく、どんでん返しが綺麗に決まった。劇場は平日の夜なのにほぼ満席。下ネタ満載のお下劣なセリフがポンポン弾けて、げんきになる芝居だった。

    ネタバレBOX

    友人の感想。見るのは2度目だけど、こんなに下ネタ満載だったかと驚いた。初期の井上ひさしらしい。
    どもりは最も人間らしい病気、はなるほどと思った。歌や芝居は吃らないというのは本当? 言葉遊びも多くて、井上ひさしの言葉への愛と執着を感じた。
    男の人はストリッパーのビキニ姿に見惚れるだろうけど。女優はどう思って演じているか。インティマシーコーディネーターを使う芝居もあるけど、今回はどうだったか。

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