「前略疾走」 公演情報 「前略疾走」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    ただのお笑いではないセンスが光る
    劇団だるいの作品は、作・出演者の佐溝貴史の言葉を借りれば「身の回りで面白いことが増えれば、ちょっとだけ生活が楽しくなって、ちょっとだけ生活が豊かになるような気がします」というコンセプトで作られているようだ。
    スタイルとしては故林広志がやっている「更地」などに近い演劇コント。東京大学で演劇をやっていた男性陣に、今回東京女子大、お茶の水女子大のメンバーが加わって小道具、衣装にも凝り、華やぎが出た。
    インテリの社会人劇団らしく、ただのお笑いではない。日常に話題をとりながらも、現代社会の諷刺も込め、しかも抑制がきいて嫌味はなく、随所にセンスが光る。
    大上段に振りかぶった「演劇」ではなく、仕事で疲れた人が休日に頭を休めながらゆったり笑える小品集。サービス精神にあふれ、寄席の雰囲気に近いかもしれない。
    当初の予定が変更され、1時間45分で6本の短編集となった。普通、短編でお笑いでも長時間休憩なしで続くと、見ているほうは疲れるのだが、ここの公演は疲れないのが有難い。
    内容はネタバレで。

    ネタバレBOX

    「オフ会」(小林早苗 作・演出)
    ブロガーの青年(中野和哉)には女子からのカキコミが多い。オフ会を楽しみにしていると、そこにヘンテコな愛読者が現れて・・・・。匿名の世界を皮肉り、仲間内のカキコミが多い実情も表現している。大島健吾のコスプレ少女がキモカワイイ。
    「ベッドルーム・ファルス」(大島健吾 作・演出)
    飲み会でしこたま酔った女性。朝目が覚めると隣りにはゆうべ一緒だった男の友人が寝ている。そこへ彼女が無事帰ったかと心配した彼氏が訪ねてくる。彼女はこの場を取り繕うとして、彼氏を買い物に行かせようとするが・・・。
    劇団だるいの第1回公演からの再演物。当時、私が一番面白いと思った作品で、作者の大島自身も気に入っていると言っていた。初演は大島が彼氏を演じたが、今回は中野が演じ、若干、演出も変えている。ナチュラルな芝居で笑わせる中野が演じることで、また趣が違ったが、私は初演の大島のパニくった軽演劇的なおかしさのほうがこの作品には合っている様に思えた。
    女が男に水を吹きかける場面も、初演はハプニング的おかしさがあったが、今回は女が途中から狙ったように見え、おかしさが半減した。
    開演前の客席で妙齢の女性が「ファルスは男根のことよ!」と大声を出していたのには唖然。きょうびの女性は恥じらいを知りませんなぁ。「ファルス」って笑劇のほうの意味じゃないの?男のうわごとに「ちくわ」が出てくるので、
    引っ掛けているのかもしれませんが。
    「アスモ」(小林早苗 作・演出)
    コスト削減で職場のアルバイトに「アスモ」なるヒト型ロボットが投入される。契約社員(?)は社員から「アスモ」の教育指導を頼まれるが・・・。
    「アスモ」の轟雅子は藤原紀香似の美女で、なかなかチャーミングでクチ達者でチャッカリした憎めないロボットを演じている。お父さん必見(笑)。
    そしてキャリアウーマンを演じる遠藤佑美のキッチリした演技がこの芝居にリアリティーを与えている。
    「あうんの呼吸」(佐溝貴史 作・演出)
    なかなか息が合わない2人の男が揉めていると、「あうんの呼吸の神様」の声が聞こえてきて、助けてくれると言うのだが・・・。
    大河内健詞はパントマイムで笑わせる人なので、こういう動きの間はすごく巧い。実は息が合わないとできないコントだという点でも面白い作品だ。
    神様の声を演じる大島(たぶん)もおかしい。
    「パソコン」(中野和哉 作・演出)
    ふだんはSEでもある中野の作品。ニートで引きこもりの青年(佐溝貴史)の使っているパソコンがいきなり話し始める。
    パソコンを演じる中野の関西弁のシュールさが面白い。青年は実は作家志望で「ドナウの畔で」とかいう小説を書いている。
    この小説の一場面が黙劇で演じられるのがなかなか凝っていて面白かった。この日の客席でももっとも沸いた作品で、中野は今後、シリーズ化していきたいという。
    「熱○殺人事件的なあれ2009」(大河内健詞 作・演出)
    この題名を見れば、まず「熱海殺人事件」を思い浮かべると思う。その雰囲気じゅうぶんに芝居は始まるのだが、実はこの事件の裏には・・・。パリーグファン必見です。
    大河内が映像をうまく使って、じゅうぶん演劇的な、でも落語ファンも堪能させる柳亭痴楽も真っ青の芝居を作った。彼は不思議な才能の持ち主だ。
    轟雅子の女性刑事は滑舌がよく、セリフのめりはりがきくので、引き込まれていく。

    今回、大島、大河内、中野というどちらかといえば個性の強い中にいて、一見存在感がないようで、印象に残る非常に心地よい芝居を全編で見せたのが佐溝。また、小林早苗の女性らしいおしゃれな小品も新鮮だった。
    次回公演は来年7月予定で先が長いが、続けてほしい企画です。


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