ミシェル・ノワレ/カンパニー・ミシェル・ノワレ「Chambre blanche」 公演情報 ミシェル・ノワレ/カンパニー・ミシェル・ノワレ「Chambre blanche」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    5人の魔女
    ダンス・トリエンナーレの第3弾は、ベルギーのミシェル・ノワレの振付作品。素晴らしかったヤスミン・ゴデール作品のあとだけに、それほど期待せずに見に行ったのだが、これが予想外に面白かった。
    ベルギーのコンテンポラリーダンスのカンパニーといえばローザスが有名だが、女性ダンサーしか出ていないという点でも、この作品はローザスの「ローザス・ダンス・ローザス」を想起させる。
    ただし、ミシェル・ノワレの作品は、BABY-Qの東野祥子のような、ちょっとダーク・ファンタジーな雰囲気がある。上演時間は約80分。

    ネタバレBOX

    舞台の三方には薄水色のカーテンが下がっている。舞台中央に白い四角の机。背もたれのない黒い椅子がいくつか。
    出演者は女性5人。振付家のミシェル・ノワレも出ているが、ダンスの主力は若手の4人。全員衣裳は黒ずくめ。薄手のワンピースはノースリーブで裾が膝丈。序盤はそのうえにコートを着用。脱いでカーテン付近に吊るしたり。
    開演前から客席に背を向けて座っている金髪の女性がひとり。これがミシェル・ノワレ。彼女がカーテンの向こうへ消えるのと入れ替わりに別の女性が登場。机の周辺をゆっくりと移動。そしてまた別の一人と入れ替わる。この辺は机周辺の動きそのものよりも、人物の出入りの呼吸が面白い。カーテンで区切られたスペースは控えの場所で、カーテンの向こう側で起こっている出来事のほうがむしろ重要、そんな印象を女性たちの振る舞いから感じる。
    一人ずつだった登場がやがて二人になり、三人になる。ダンサーの顔が識別できないうちは、出演者が何人なのかもわからず、人物の出入りにまどわされる。金髪が二人、黒髪が二人、赤毛が一人。ほぼ白黒の舞台なので、髪の色がとくに印象に残る。ジョージ・ミラー監督の映画「イーストウィックの魔女たち」に登場した3人も、髪の色が3色に分かれていたのを思い出す。
    ダンサーの動きには独特の緩急がある。目配りや顔の動きとあいまって、周囲への警戒感がはっきりと読み取れる。何を警戒しているのかはわからない。ただ謎めいた、張り詰めた雰囲気の中でダンサーが動く。
    若い4人のダンサーの踊りが中盤のクライマックス。それぞれが特徴となる自分の動きを持ったうえで、ときおり動きが揃うというのが振付の魅力。特に黒髪の二人は背丈も似ていて、姉妹のようだった。
    後ろ向きで立ち、カーテンに投影された影といっしょに躍るところも印象的。
    ミシェル・ノワレが机を移動させる長い場面。机は自動で動いているように見えたが、どういう仕掛けになっていたのだろう。
    暗転によって時折謎めいた短い場面が差し挟まれる。その辺にBABY-Qと似たものを感じた。トップレスの女性の背中が一つから三つに増える。背中の動きはまるで女性版の室伏鴻。蛍光灯の光に照らされた白い胸が机に横たわるラストでは、フェスティバル・トーキョーで見たロメオ・カステルッチの作品を思い出した。

    ミシェル・ノワレという人、けっこうキャリアがあるようだけど、これまで来日したことはあるのだろうか。もしまた日本で作品が上演されることがあれば、ぜひ見てみたい。




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