自由を我らに 公演情報 自由を我らに」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★★

    戦後の日本というもの
    終戦直後の最も混乱期というときに、この緩さなのか?と
    はじめ躊躇しましたが、ぐいぐい引き込まれるストーリーに
    そんなことも吹っ飛んでしまいました。

    とにかく会話が素晴らしい。それぞれの役柄が誰であるという
    説明も一切なく、終始 大人数が舞台上に揃っているのに、
    混乱させられることもなく、存在の意味を納得してしまう。

    時代錯誤だなんだと言われ続けている、現在の日本国憲法。
    確かにそれは否めないが、制定したあの時代、敗戦直後の
    日本人が、いろんな気持ちを押し殺し、未来へ期待を込めながら
    推し進めたのは事実。

    このお芝居はフィクションですが、そういう「人の気持ち」に
    気付かされた作品でした。これは本当に惜しみない拍手!

  • 満足度★★★★★

    井上ひさしが見たら嫉妬する傑作!
    初めて見た44プロデュース。非常に良質で誠実な芝居作りをされていてとても好感。再演ものらしいが、確かに素晴らしい作品だった。12人の怒れる男、12人の優しい日本人へのオマージュもあって書かれた作品だろうが、この作品はそれらと同等の魅力のある非常に良質な台本だった。
     名うての役者、特に女優陣の素晴らしい活躍によって珠玉の作品は非常に完成度の高いものになっている。福島まり子と種子のものすごい女優対決は最高に面白いし、井上カオリは今までのどの作品よりも素晴らしい。江原里実が手堅く自分の役割を演じきり、小山萌子がいつもながら見事に演じる。男優では佐藤正和(ブラボーカンパニー)が出色。芹沢、大出、白井、そして44北川も素晴らしい。
     井上ひさしが見たら地団駄踏んで悔しがるだろう。正直、昭和三部作と匹敵する作品であり、1本の作品で井上さんが描きたかったことを描きっているのだ。超オススメ!

    ネタバレBOX

     舞台設定はユニーク。日本国憲法前夜、分かりにくい条文を噛み砕いて表現して欲しいと、政府は日本の文筆業関連の人々を一室に呼び2時間でなんとか分かりやすく書き換えてくれないかと頼む。
     小説家、劇作家、コピーライターなどなどが悪戦苦闘。そして、、、、、。思い切り笑いながら最後はじーんとして日本という素晴らしい国に生まれたことの誇りまで感じさせてくれる。
     描かれている人物の中には、まだ戦時中の気持ちを引きずる人もいて…。
  • 満足度★★★★★

    踊る会議で日本国憲法を考え、コトバの力を信じる
    再演ということらしい。再演するだけあって、とてもよくできた話だと思う。
    リズム感があり、うねりがある。
    観ながら日本国憲法について、もう一度考えようという気にさせる。
    役者のキャラクターもはっきりしていて、わかりやすい。
    各キャラクターについてくどくど説明しないところもよい。
    たっぷり楽しんだ110分。

    ネタバレBOX

    GHQがつくった日本国憲法の草案を、限られたわずかな時間の中で、推敲するために集められた、小説家、広告文案家、新聞記者、劇作家、詩人など、言葉を仕事にする人たち。言わば、言葉を信頼し、言葉の力を信じている人たちだ。
    話は脱線しながら、実際の時間と同時進行で(特に夜の公演はまさにオンタイムで)日本国憲法の問題点と要点を明らかにしていく。

    戦争が終わり、今まで言いたいことも言えなかった、言葉を仕事にする人たちは、終戦とともに解放された感があるのだろう。
    ほぼ全員が浮き足立っている。言葉を自由に使える解放感を満喫している様子だ。
    したがって、会議は脱線の連続である。
    憲法を推敲しようという重い仕事の場で、そこまではどうかな、と思うほどではあるのだが(悪のりとも言う)。

    戦中には偏向報道をしたであろう新聞記者の発言が面白い(特に9条関連が)。また、戦中も戦争スローガンをつくっていて、今も広告の宣伝文句を書いているという広告文案家という設定も面白い。

    踊る会議に笑わせながら、本質に切り込み、日本国憲法への疑問を投げかける。
    当然、観ているわれわれに投げかけているのだ。
    その問い方の内容は、やや直接的であり、というか、言わばベタなのだが、これぐらい基本的なところでもいいのではないだろうかとも思った。中学生ぐらいに見せてもいいのかもしれない。

    伝え方ととらえ方、言葉を仕事にしている人たちだからその解釈が面白い。「基本的人権」の「的」の話なんて考えてもみなかった指摘だ。

    敗戦直後の日本人が考えたであろうことや、初めて触れる「基本的人権」や「自由」や「権利」そして、「戦争放棄」をどうとらえるのかということ。
    言葉の難しさ、表現の難しさ、理念や希望、そんなことを踏まえつつ、ラストを迎える。
    第9条の解釈は、戦勝国の思惑はどうあれ、そこには戦争を体験した者だけが語ることのできる、未来への願いが込められているのだということを強く再確認するのだ。
    ここへの議論の重ね方がうまいと思った。一対多の状況の中にあっても正論をきちんと主張し、誰もが納得するような、心に響く言葉にしていくところがいいのだ。

    もちろん、「言葉」は「言葉」でしかないのだが、言葉を使う人たちだから、それを、つまり「言葉」を信じることができるというところが、キーポイントなのだろう。
    単に正論が正論であるから反論できなかった、ということではないということなのだ。

    登場人物たちの個人名をあまり重要視しないこと、その人の人となりをくどくど説明しないあたりに「12人の怒れる男」が思い浮かんだ。
    特に、ラストへの収束感と波が引くような静寂感に、それを強く感じた。

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