朗読劇 「天切り松 闇がたり ~闇の花道~」 公演情報 朗読劇 「天切り松 闇がたり ~闇の花道~」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/02/06 (日) 16:00

    朗読劇の域を超える圧巻の熱量と台詞回し。
    盗人噺にボロ泣きしつつ爽快感に浸る、この久しぶりの幸福。
    原作の魅力のひとつにキャラの立った登場人物があり、それが歌舞伎のケレン味と相性抜群。
    演者の気持よさそうな江戸弁に、聴いている方も酔いが回るように引き込まれる。
    控えめながら差し込まれる映像と効果音も効果的。
    あー、あの台詞、また聴きたい、ずっと聴いていたい!

    ネタバレBOX

    客席に向かってロビーを歩いているとき、聴こえて来た曲にまずやられてしまった。
    トム・ウェイツの、大好きな、泣ける一曲。
    ― ひと弱さを認め、それを愛し、それを守る強さを粋と言う ー
    かどうかわからないが、登場人物の熱いキャラに呼応するような選曲だと
    勝手に感動してしまった。

    さて、もはや獄中の名物となった「天切り松」の闇語りである。
    近頃の若え囚人だけでなく、看守も居並ぶ中で、松蔵爺さんが語るのは
    酒とばくちに溺れて娘を女郎屋に売り飛ばし、今また息子を
    スリの大親分「仕立屋銀次」に預けに来たどうしようもない父親のこと。
    その父親に「二度と息子に会わせない」と言い放ち金をやって帰らせる。
    銀次から言いつかった安吉親分は、”これから仕立屋一家から金がもらえる”と踏む
    小ズルい父親を完全に排除するのだ。

    この一家を成す面々が実に魅力的でほれぼれする。
    松蔵に天切りを仕込む黄不動の栄治、スリで絶世の美女振袖おこん、
    松蔵の姉を苦界から救い出そうと手を尽くす漢気溢れる寅弥、
    安吉一家の金庫番で頭脳明晰な詐欺師、書生常、
    犯罪者である彼らが、松蔵を育て成長させていくそのプロセスに
    珠玉のエピソードが散りばめられている。

    ピカレスク文学に洗練と漢気が加われば最強だろう。
    あとはもう私の好きな “ころんころん回る江戸弁”だ。
    お願いだから噛んでくれるな、このカッコいい台詞を!
    という私の祈りなど全くもって不要だった。
    これ、シリーズ化してくれないかなあ。
    芝居でも朗読劇でもいい。
    この「台詞と侠気」に耐えうる役者をそろえて欲しい。
    必ず駆けつけます。

    客席中央に作者の浅田次郎氏が来ていた。
    アフタートークで紹介されて、立ち上がりちょっと会釈した氏に
    「この人からあのキャラが生まれたのか」と感謝の念でいっぱいになった。

    帰り道、ボロ泣きしながら肩で風を切って歩きたい気分になった。
    これが私の演劇体験最高の〆である。
                                                         

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