実演鑑賞
満足度★★★
タイトルのイメージから楽しいラブコメを想像していたのだが、社会に適応しているよう必死に見せかけた、社会不適合者の「心の旅―地獄篇―」だった。当日配布パンフがオールカラーで凄い出来。舞台は角に柱を挟んで、L字型二面に客席を配置する為、重要な場面の時はどちらにも見えるよう役者が配慮してくるくるくるくる回ってくれた。物凄い台詞の量、主演の大図愛さんと佐藤ホームラン氏にリスペクト。2回の公演の為とは思えない熱量。
高校教師の佐藤氏はコンビニの女子高生店員、大図愛さんがお釣りを渡す度に毎回手を触れてくれることが気になって仕方ない。自分にだけなのか?誰にでもなのか?妄想が妄想を呼び、到頭デートに誘ってしまう。
「ガトーフロマージュ」がこの世界を脱出するキーワードで、廃線寸前の心の列車に乗って、終点の何駅か先まで進まなくてはならない。二人の心の牢獄に棲み着いた“あおい”(梅木彩羽〈いろは〉さん)。彼女(彼)への贖罪から、心に蓋をして生きていくことを決めた過去。大図愛さんがうまく説明出来ないオリジナルな魅力に溢れていて、痛みが生々しい。生活の手触り、体臭、寝癖、服の皺、余りに現実であり過ぎて御伽話には成り得ない話。二人のデートシーンの演出がエレクトリカルパレードみたいで楽しい。脇を固める通行人のような役者陣がいい仕事をしてくれる。