公演情報
「コメンテーターズ」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/25 (日)
#コメンテーターズ
#ラッパ屋
語り部は引きこもりの息子 #瓜生和成 さん。でも、彼はいたってノーマルで素直で客観性がある。それがむしろ、現代社会が抱える闇にも思える。インターネットというバケモノが日本に入ってきてもうすぐ30年になる。誰もが発信できる時代で、ネットが大きな影響力を持つようになったのに、全く力を感じられなかったり。もう何を信じていいのかわからない。一般人の意見とは何か。そもそも一般人とか普通とかいう概念が揺らいでいる。そこへ来て、国民の誰もが忖度してしまうなら…何も信じられないし、怖い。恐ろしい世の中。報道は、元来そうした偏りの要素を持っているもの。政治的なことも経営的な面でも影響を受け、忖度する。
これを、まさに五輪開催中に観る不思議。開催反対の声はどれくらい本気だっただろうか。政治家もデモも、パフォーマンスで終始し、それでヨシとしてはいなかっただろうか。本気ならば、もう少し違ったうねりのようなものが起こるのではなかろうか。
そんなことへ思考を広げながら観た。
こうなったら、ノコギリ男爵ブログだけが頼りだな。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/20 (火) 18:00
座席1階
劇作家の妄想の世界なんだと思うが、この妄想はリアリティーがあって単なる妄想ではない。事実が先か妄想が先か。同時進行でパンデミックの中の五輪の行方を楽しめる、笑えるし笑えない鮮烈な舞台に仕上がっている。
設定が優れている。リアリティー満載だからだ。主人公は定年退職して年金受給までには早いおじさんで、退職後に勤めた会社がコロナ禍でつぶれてしまい、ネットで仕事を探すというところから始まる。口から先に生まれてきたようなおしゃべりで明るい妻は家計を助けようとスーパーのパートに出る。一人息子は見た目引き込もりだが、観察眼が鋭く家族との関係は悪くない。このおじさんがネットでの就活に飽きて暇を持て余してユーチューブを始める。ひょんなことから大当たりしてしまった結果、テレビの朝ワイドのスタッフの目に留まり、おじさんユーチューバーとしてコメンテーターに登用される。
コメンテーターはキャラ付けされていて、本音とは違う役割を演じるという「あるある」設定だ。コロナ報道で欠かせない女性医師とか、いつも政府の味方をする政治評論家、それに対抗して野党的立場から厳しい言説を展開するジャーナリスト。とまあ、現実のワイドショーを地で行く展開である。そこに「視聴率が取れそうだから」という局側の理由で起用されたおじさんコメンテーターは、庶民的目線とおやじギャクで人気が定着するのだが、ある時、自らの立ち位置と全く逆の意見を言ってしまう。
話題転換とか場を鎮めるためにと登場するミュージシャンの歌とダンスがライブで展開され、これがまたコロナ禍をうまく歌った秀逸なメロディーだ。政治評論家とジャーナリストのバトルもおもしろい。本物のワイドショーを皮肉っていることに加え、そのシュールな展開が笑いを誘う。だが、おじさんコメンテーターが思わず選択したコメントは、この世の中を鋭く突いていて、笑いながらも笑えないのだ。
どんな展開で締めくくるのか、妄想の終着駅を妄想してみたのだが、これが意外なラストシーンだった。あまりにもベタな、というと身もふたもないが、このベタさ加減に思わずウルっと来てしまう。久しぶりに聞いたこの言葉、70年代、懐かしのキーワードだ。ああ、あの頃はまだ、日本は右肩上がりで五輪を開く意味もあったなあ。帰りの電車で思わず、こんな妄想を繰り広げたのであった。
この舞台はおもしろい。劇作家鈴木聡は「この一年、こんなにも家にいてテレビのワイドショーを見た一年もなかった気がする」と書いているが、そのお陰でこんなシュールな妄想がさく裂した。十分、家にいた価値はあったのではないか。