夢を見る 公演情報 夢を見る」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    シアターX「一人芝居」シリーズ鑑賞2つ目。挑戦者の中でも若い清水優華は名も覚えあり、今調べると結構見ていた(直近では「農園パラダイス」、韓国現代戯曲リーディングの前回「刺客列伝」、そしてアンサンブル時代の各舞台。容姿と相伴って思い当ったのは「農園パラダイス」のみ、ほぼ主役のあの女性役だ)。
    この企画に加わった俳優諸氏が、順繰りに試演会を行ない、今回が後半戦の一回目という。一時間半の距離を走り切るだけでも唸る。激情に身を震わせる終盤、ドラマの結語に向かう感興に飲まれまいとして飲まれ、それでも走り切ったという感じであった。「ヘル」という風変わりな名を名乗る元従軍慰安婦の女性と「私」との交流を一人称で書いたのは劇作家石原然との由であるが、今回のに先行して同じ一人芝居プロジェクトのメンバー、中山マリにヘル役を当てがった二人芝居を上演。相当見やすい舞台であったと想像されるが今回は難しい一人芝居。見せられているのは「芸」ではなく、テキストに対する演者の思い入れであり、ヘルという存在(との格闘)を通して社会から異端視されて生きた/生きる人々を思い、包摂の意志を伝えんとする行為、に見える。
    毎回恒例らしいアフターミーティング(観客交えたトーク)で役者が述べた、「芸を見せる等という構えを取ったが最後化けの皮がはがれ、太刀打ちできない」、そういった存在に出会った事を喜び、純粋に打ち込む俳優の姿勢には感銘を受けた。社会的ポジションを目標とする(誰もが持つ)態度はなく、役とテキストとに向き合う自身を観客との間では媒介者として立てる(自分を評価する者との対峙ではなく)。この何とも評しようのない穢れなさ、というより恐らく強さは、舞台にその片鱗が窺えたように思うがトークの場がなければ触れられなかったと思う。
    役者に苦行を強いる故か不思議な光沢を放つ一人芝居。次回試演会は6月との事。

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