鑑賞日2020/12/08 (火) 19:00
今年度、シアターXの1人芝居試演は2回目、「狂人日記」に続く。
やはり、題名がそのまま原題である作品の方が、観劇の訪れる方にしては、足を向けやすい。
1人芝居でも、相応の名のある方の場合、舞台装置に凝り、舞台美術が絢爛で、シチュエーションに演者が配慮をしない舞台が多いと思うけれど、ここはそれ、自ら場を作り上げる、自己構築芝居。
そうか、1人芝居の魅力は、どの角度から見ても良いことだよ、それなら後ろからもありだ。「狂人日記」でもそれは成立しただろう。1人芝居とは、見世物なのだから。
満足度★★★★
シアターX独特の主催行事は多々あるが今回は<一人芝居>試演会vol.5、前半最後の演目との事で「一発限り」の上演を観た。(後半の5名による試演は来年3月頃より順次実施との事。)
服部吉次によるカフカの短編の上演。舞台奥のパネルの一部が外れ道具類が見える隙間から、スタスタ登場した氏の右手には紙が握られており、「読むのか・・」と思っていると、イソップ寓話の一話をやろうという。舞台役者たる氏一流の耳心地良い口上で、4行ばかりの話の朗読を挟みつつ「皆さんとこれをやる」との提案。やんわりかつ強引な動員による大がかりな客いじりの後、本編へ。
舞台脇にも客席を置いた三方客席に挟まれたステージ前方で、カフカの風変わりな(という事はカフカらしい)短編が始まった。服部吉次という俳優の面白さが、このステージの面白さの全てと言って良く、それはシアターX恒例の上演後交流会での服部氏の語りに続く。とりわけ黒テント役者(それ以前に音楽一家出身)の面目躍如たるオープニングとラスト(と途中にも一箇所)の生ソプラノサックスが聴かせる。黒テント芝居が音楽抜きに語れぬのと同じく、服部氏のこの作品の解釈(又はカフカ理解、又は本上演の文脈)に関わる何かを感じさせるのである。(氏の音楽への造詣を知った思い出として・・黒テントの2007年「上海ブギウギ」の幕間で斎藤晴彦と二人で披露した懐かしの楽曲を巡る歌・演奏込みの丁々発止。両者一歩も引かぬ凄技であった。)
一人芝居研究会?は数年来シアターXでレパ上演(ローズ)を続けて来た志賀澤子が別作品をやる他、石井くに子、谷田川さほとベテラン役者が名を連ね、作品の方ではやや若手の女優が石原燃戯曲に挑戦するようで楽しみ。