音楽劇『山彦ものがたり』 公演情報 音楽劇『山彦ものがたり』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★

    久々の朋友観劇は「ら・ら・ら」以来、二度目か。劇団を知ったのは古いが(観たかった公演も多々あったが)見れてない。今回はよきタイミングで観劇の運びに。
    「トライアル公演」とは対コロナの意か、音楽劇の部分か(両方かも)。劇の方は日本昔ばなしをこれでもかとぶちこんだ音楽劇で、小品と予想したのが外れた。うさぎと亀の話に始まるがその亀が浦島太郎の亀として登場し、いやいやながら竜宮城に付き合った後、うさぎへの義理を果たそうと駆けっこに戻るといった、時間経過無視のごった煮風。うさぎも駆けっこの途中で狸に会い、かちかち山のいたずら兎を演じる。その他、花咲か爺、蟹むかし、天女の羽衣、旅人馬、桃太郎など。それぞれに脚色が加えられている。桃太郎は平和な国であった鬼ヶ島を侵略し、「私たちはあなた様にどんな無礼を働いたのか」と問われるというよく知られた芥川龍之介翻案の善悪逆転版。
    問題は、音楽が途切れなく鳴っている作り。音楽は上田亨。冒頭とラストは「子供の心でなければ分からない」という歌詞が結語になるソロと合唱の合わさった曲で、これを聴くだけで壮大な物語を味わった気分でじんと来てしまうのだが、その後もそれなりに力の入った歌が話ごとに歌われる。話は単なるパロディ、音楽によって格好がついている、というのか、馴染みのある話の意表を突く翻案は面白いのだが、共通のメッセージで通底している訳でなく、そう分かってしまうと「意表を突く」パターン自体に変化を加える(繋がっていないと思っていたものが繋がった、とか。いやそれは昔話では無理)等がなければ観劇への集中は当然途切れる。最後は何やら教訓めいたものを掲げて昔話部分を閉じていたが、もう忘れたが賛同しかねるメッセージ。無理やりの感ありであった。ただラストソング(冒頭と同じ)はやはり素晴らしく、なぜこの感動を薄めてしまう「音楽鳴りっぱなし」の劇にしてしまったのか、と残念さは残った。
    話を一つ削るだけで随分締まったと思う。が、それで締まらないから話が増えてしまったのだろう。
    俳優は皆それなりに歌える役者で、特にアンサンブル部分での繊細な表現は(新劇系の劇団なのに?)なかなかのもの。

このページのQRコードです。

拡大