※CoRich運営事務局はテーマの真偽について調査を行っておりません。募集情報に応募する前に、投稿者のプロフィールや公式ウェブサイト等をよくご確認ください。

演技が下手な人ほど「感情」から入る。プロが実践する逆転メソッド

  • 劇団天文座 劇団天文座(0)

    カテゴリ:フリートーク 返信(0) 閲覧(5) 2026/01/17 10:51

「感情を作ろう」としていませんか?それ、演技の最大の落とし穴です。
プロの演技指導者が明かす、自然で説得力のある演技を生み出す5つのステップを徹底解説。この記事を読めば、明日からあなたの演技が変わります。

なぜ多くの俳優が「不自然な演技」になってしまうのか
演技経験者なら誰もが一度は悩む問題があります。
「悲しいシーンなのに、なぜか嘘くさくなってしまう」
「感情が表面的で、自分でも納得できない」
「セリフが棒読みに聞こえる」
その原因は明確です。プロセスを逆にしているから。
多くの人は「悲しいシーンだから悲しい顔をしよう」と考えます。しかし、これが演技を台無しにする最大の原因なのです。

演技の黄金ルール:5つのステップ
プロが実践する演技は、必ずこの順序で構築されます。
1. 事実(Fact)
脚本にある事実、または想像で補う具体的な設定
2. 反応(Reaction)
五感を通じた自然な心の動き
3. 感情(Emotion)
反応の結果として自然に湧き上がるもの
4. ビート(Beat)
思考や目的が変わる瞬間の見極め
5. 行動(Actioning)
相手に影響を与えるための心理的行動
この流れを理解し実践すれば、演技は劇的に変わります。一つずつ詳しく見ていきましょう。

ステップ1:事実は「具体的」でなければ無意味
抽象的な事実がNGな理由
脚本に「寒い場所」と書いてあったとします。あなたはどう演じますか?
悪い例:
「寒い」という漠然としたイメージで演じる
良い例:
「気温3度、隙間風が吹いている」という具体的な事実を設定
なぜ具体性が必要なのか?北海道出身者にとっての「寒い」と、沖縄出身者にとっての「寒い」は全く違うからです。気温3度という数値があれば、コートを着る、震える、といった具体的な反応が自然に生まれます。
2種類の事実を区別する
A. 脚本に書かれている事実(絶対)

日付、場所、過去の出来事など
これは俳優が変えてはいけない

B. 脚本に書かれていない事実(想像で補う)

部屋の匂い、床の質感、遺体の傷など
これは俳優が自由に設定できる

例えば「妹の遺体」というト書きに対して:

ただ「遺体がある」では不十分
「顔に痣がある」「髪が乱れている」など具体的に想像する
その具体性が、次のステップである「反応」の質を決める


ステップ2&3:反応→感情の順序を死守せよ
「感情を作る」は演技の重罪
演技指導の現場で最も強調されるのがこれです。
× 間違ったプロセス:
悲しいシーン → 悲しい表情を作る → セリフを言う
○ 正しいプロセス:
具体的な事実 → 心が自然に動く(反応) → 感情が湧く → セリフが出る
具体例で理解する
設定: 妹の遺体を見るシーン
ダメな演技:
「悲しまなきゃ」と思って泣く準備をする
良い演技:

事実を設定:「妹の額に5cmの傷がある」
その傷を想像の中で見る
自然に「うわっ」という反応が起きる
悲しみが湧いてくる
セリフが自然に出る

準備した事実が具体的であればあるほど、反応は鋭くなります。

ステップ4:ビート — 思考の変わり目を見逃すな
セリフを一本調子にしないための技術
長いセリフや会話を「思考の単位」に区切る作業がビート分けです。
重要な基準:
「どう言うか」ではなく「なぜ言ったか」で区切る
実践例
セリフ:「自殺なんかじゃない。殺人だ。姉さんは妹が邪魔になったんだ」
ビート分け:

「自殺なんかじゃない」/ (相手の認識を否定したい)
「殺人だ」/ (真実を定義したい)
「姉さんは妹が邪魔になったんだ」/ (動機を暴露したい)

それぞれの思考の単位で、目的が変わっています。この切り替えを意識することで、演技に立体感が生まれます。

ステップ5:アクショニング — 相手に何をするか
「他動詞」で考える演技術
ここでの「行動」とは、物理的な動きではなく相手への心理的な働きかけを指します。
使ってはいけない言葉
× NG:

「悲しむ」「怒る」「困る」
これらは自分の状態(感情)であって、行動ではない

○ OK:

「突き刺す」「すがりつく」「誘惑する」「断罪する」「暴露する」
相手に影響を与える他動詞

具体的な設定例
先ほどのセリフに戻って:
セリフアクショニング「自殺なんかじゃない」否定する「殺人だ」定義する「姉さんは妹が邪魔になったんだ」暴露する「だから殺したんだろう」断罪する
各セリフに「相手をどうしたいか」という明確な意図を設定することで、演技に方向性と力が生まれます。

脚本のト書きは「絶対」である
書かれている指示を守る重要性
最近の脚本は、ト書き(動作指定)が非常に詳細です。

「歩きながら話す」
「正面を向く」
「メモを取りながら聞く」

これらは脚本に書かれている事実なので、俳優は必ず守る必要があります。
書かれていない部分は自分で決める
一方、ト書きのない空白部分はどうすべきか?
例:長い会話の後に「立ち去ろうとする」というト書きがある場合
問題:
それまでずっと棒立ちでいいのか?
解決策:

どこで立ち上がるか
どこで相手から目を逸らすか
どこで相手に近づくか

これらを事前に「事実」として決めておく。決めておかないと、相手の動きに釣られて一貫性が失われます。

インプロと脚本芝居の決定的な違い
未来を作るか、過去を埋めるか
インプロ(即興):
「今」の反応で「未来」を作る
脚本芝居:
決まった「未来」に対して、そこに至る「過去」を埋める
しかし脚本芝居でも、インプロ的な「展開が変わる瞬間」を捉える能力は重要です。「どこで戦術を変えるか」というポイントを多く持っている俳優は、演技が単調になりません。

実践ケーススタディ:よくある失敗と解決法
ケース1:漠然とした死のイメージ
問題の演技:
「死体が転がっている」というセリフで、ただ漠然とイメージしていた
改善点:

どんな死体なのか?
どうやって死んだのか?
具体的な事実がなければ、リアルな反応は生まれない

ケース2:アクションのチェンジが曖昧
問題の演技:
「目を合わせようとしない」というト書きから、次の行動への切り替えが不明瞭
改善点:

「ここまでは目を合わせない」
「この言葉をきっかけに目を合わせる」
切り替えポイントを明確に決める

ケース3:ト書きの無視
問題の演技:
「メモを取りながら聞く」とあるのに、メモを取らない
改善点:

脚本に書かれている事実は絶対
演出家の意図を尊重し、指示を守る


まとめ:正解は一つじゃない、正解の数を試そう
演技に「唯一の正解」はありません。しかし「正解の数」は無限にあります。
今日から実践できる5つのアクション

事実を具体的に設定する
気温、匂い、人間関係の歴史まで詳細に
感情を作らない
事実に反応し、自然に湧くのを待つ
ビートを刻む
思考の変わり目を見極める
他動詞で行動する
相手に影響を与える動詞を選ぶ
脚本を守り、空白を埋める
書かれた事実は絶対、空白は想像で埋める


あなたの演技が変わる瞬間
「なんとなく」の演技から脱却する鍵は、このプロセスの徹底にあります。
次の稽古では、まず台本を開いて:

事実をすべて書き出してみる
ビートにスラッシュを入れてみる
各ビートにアクショニングを設定してみる

この準備をするだけで、演技の質は劇的に変わります。
観客の心を動かす具体的で力強い表現は、こうした地道な準備の積み重ねから生まれるのです。

この記事で紹介した手法は、スタニスラフスキー、マイケル・チェーホフ、イヴァナ・チャバックなどの演技理論を基礎としつつ、現代の実践的なワークショップで磨かれたメソッドです。

このページのQRコードです。

拡大