住み込みの女の観てきた!クチコミ一覧

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アンダーグラウンド

アンダーグラウンド

無隣館若手自主企画vol.14 小林企画

アトリエ春風舎(東京都)

2016/10/07 (金) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

参加型演劇とはつゆ知らず、サリーという謎の地底人の案内には度肝が抜かれたが、始まってみるとそんなに参加せずに済んだのはホッとしたのかもしれないが、何かを期待したのは間違いない。
こんな事をするのは寺山修司以来か?
だが観客を巻き込んだ割には、それと内容が交わってこないのが残念な処だ。それがもっと上手くいけばかなり面白くなる予感あり。
まぁ、でも最初に驚きをくれたサリーに万歳!というところだろう。
狂犬百景(2016)

狂犬百景(2016)

MU

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2016/10/01 (土) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

MUの【狂犬百景】を観劇。

街では人間を噛み殺す狂犬が多数出現していて、パニックになっている。
その犬はゾンビに変身するウィルスを持っていて、街中は狂犬とゾンビの天国になってしまいそうだ。
その騒乱の中で描かれる人間模様を短編集として描いている。

パニックとゾンビと映画の要素をたっぷりと感じさせてくるのだが、
それはただの背景に過ぎず、その混乱の中で垣間見える人間の本質を炙りだしていく。
ただそんなパニックの状況での炙り出しは、正義、勇気、プライドなどが定番なのだが、今作では、日常の恨み、つらみ、嫉妬ばかりが表に出てきて、そんな状況で出るわけないだろう?と思いがちだが、そこに妙に現実味を感じてしまい、一番危険なのは狂犬とゾンビとウィルスではなく、人間そのものだと感じてしまうほどだ。
やや平田オリザの【東京ノート】に通じるものがあるようで、演出家の眼差しをちゃんと感じられる良好な芝居であった。
遊侠 沓掛時次郎

遊侠 沓掛時次郎

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/08/27 (土) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

北村想の「游俠・沓掛時次郎」を観劇。

演出は寺十吾。

旅芸人の話である。
長谷川團十郎率いる芸人達は、とある田舎町で興行を打っている所に、若い女性が入団を申込んで来る。とりあえずひと夏の公演のみ許可され、劇団員として働く。そして最終公演を演目が決まり、幕が開くと現実なのか嘘なのか分からない芝居が始まるのである。
シスカンパニー主催なので、名優ばかり文句のない出来である。
旅芸人物なので、地方で行うような弁当を食べながら、お気楽に観れるかと思いきや、これが意外や意外、手の込んだ戯曲であった。
最後の演目が始まると同時に舞台は一転して、東京から来たあの若い女性のその後の人生が始まるのである。
その彼女は今では身持ちを崩し、とても惨めな生活を送っているのだが、実は旅芸人のヤクザな劇団員に引っかかった為である。
そして彼女を救おうと劇団員が奮闘して、彼女を救い出し万歳!で終わるのだが、それが実は現実ではなく、最後の演目の芝居だった!というカラクリなのである。
当然観客は疑いながら観ているのだが、疑いながらもすんなり観てしまうという心地良さを感じるられる芝居であった。
チャンバラ音楽劇幕末スープレックス

チャンバラ音楽劇幕末スープレックス

劇団子供鉅人

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2016/09/17 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

劇団子供鉅人の【幕末ス―プレックス】を観劇。

関西の劇団で、以前から観ようかな?と思っていた劇団である。

伊井直助を殺害し、財宝の地図の半分を手に入れた尊王攘夷を掲げる侍たちと、彼の財宝の地図の残りの半分を持っている愛人の花魁との攻防を描いた物語である。
歌、踊り、ナンセンスギャグの連続で、肝心な物語には殆ど関心ナシで、横道にずれっぱなしのだが、大人数の人海戦術で見せる演出は、舞台ならではの迫力だ。
クライマックスはよくある話で締めるのだが、それでもカタルシスを感じさせてくれる辺りはご愛敬か。
蜷川幸雄が、演劇とは【その日、その時、その場所でしたか体感できないものだ】と言っていたが、まさに生でお祭りを体感させてくれるイベント的な催しがこの劇団の持ち味なのだろう。
演劇に何を求めるかで変わってくると思うが、内容そのものは決して面白くはなかったというのは間違いない。

次回作は、本多劇場で100人の俳優を登場させるらしい?
MONTAGNE/山

MONTAGNE/山

青年団国際演劇交流プロジェクト

アトリエ春風舎(東京都)

2016/09/17 (土) ~ 2016/09/19 (月)公演終了

満足度★★★

ネタばれなし
作家の事前に決めていたテーマがあり、それに準じて物語を作っているような感じなのだが、これが中々面白い。テーマが俳優の芝居によって簡単に凌駕させてしまう事が大きな狙いでもあるのだろう。

ストリッパー物語

ストリッパー物語

9PROJECT

d-倉庫(東京都)

2016/09/14 (水) ~ 2016/09/18 (日)公演終了

満足度★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

元北区つかこうへい劇団の団員による、つかこうへいの【ストリッパー物語】を観劇。

初期の作品なのだが、バージョンが色々あり、今作は初期のものと思われる。
以前に観たポツドールの三浦大輔版は、ストリッパー明美とひものしげさんの話しから、明美が病に侵され踊れなくなると同時に、しげんさんの娘が、アメリカ留学でダンサーになる夢が破れて、
ストリッパーになるという物語であったが、今作は明美としげさんの関係を中心に描いている。
社会の底辺の人間愛を大きく謳った作風を、激しさと笑いで期待するのがつかファンの心情だが、その辺りを一切排除して、男女の一途な恋愛模様で攻めてきているので、やや拒絶してしまうほどだ。
演出の狙いという事であるのだろが、残念ながらつかこうへいを求めてきているファンとしては、どうかと思ってしまうのである。
ただ演出を変えてきているは分かっているのだが、未だにつかこうへいを求めてしまう自分自身の観賞法もどうかと思ってしまうのである。
子どもたちは未来のように笑う

子どもたちは未来のように笑う

遊園地再生事業団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/09/03 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

宮沢章夫の【子どもたちは未来のように笑う】を観劇。

セックス、妊娠、出産、障害児、
そして子供を持たないという選択...。
それぞれのエピソードとリーディングを交えながら、子供を作るという事について論じていく物語である。

鳥籠のような出口が狭いセットで綴られる様々な出来事。
まるでそれは狭い我々の国土の様でもあり、自由を失った我々の姿でもある。
そしてその中で右往左往する我々の姿。
テーマを先に持ってきて、それを論じていく芝居ながら、主義ありきの退屈な芝居にはならず、短い物語の羅列と多種多様な小説をリーディングしながら、観客もテーマについて自ずと問いかけてしまう芝居でもあった。

流石、宮沢章夫である。

お勧めである。
ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景

ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景

マームとジプシー

彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)(埼玉県)

2016/08/25 (木) ~ 2016/08/28 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

マームとジプシーの【ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景】を観劇。

JR福知山線の脱線事故をモチーフにした、記憶を辿る物語である。

今作は初期の作品の焼き直しであり、俳優も一般から公募していたようだ。

ここ最近では、以前に行っていた反復を使った表現方法を止めて、違う形で物語を語っていたのだが、今作は初期作品なのだろうか?昔の方法論に立ち返っていたようだ。
脱線事故に乗り合わせていた乗客のほんの少し前の瞬間から事故までの間の出来事を、何度なく繰り返される反復動作に嫌がでも当時の事故を思い起こさせる。
過去の作品で、何故そのような事が起こったのか?という確信に迫る程、必要なまでに反復で描いた作品もあったが、今作は事故の惨劇を風化させないというメッセージを記憶に置き換えている。
そしてその記憶も物語を通してだけではなく、五感を通していく感じさせてくれる技法には、武者ぶるをしてしまうほどだ。
過去にこれだけの演劇があっただろうか?
それほどまでにこの劇団は、とんでもないのである。

お勧めである。
イヌの日

イヌの日

ゴーチ・ブラザーズ

ザ・スズナリ(東京都)

2016/08/10 (水) ~ 2016/08/21 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

長塚圭史の戯曲【イヌの日】を観劇。
演出は、ゴジケンの松居大悟。

好きだった女の子、むかついた奴など同級生四人の男女を防空壕に15年も好奇心で監禁してしまった少年・中津。
そこに閉じ込められてしまった男女には、食料などをちゃんと供給されているからか、立派な大人に成長しているのだが、社会との接点がない為か、中身は子供のままである。
そしてある日、中津の友人・孝司が彼らの世話をする事になるのだが、この異常な状態を阻止しようと、監禁された彼らを逃がそうとするのだが......。

作・演出の長塚圭史版は観ていたのだが、すっかりその事を忘れてしまい、観終わった翌日にやっと気が付いた?という体たらく。
だがその当時は、それほど印象になかった作品であったようだが、演出家が変わって時間を得て観て見ると、戯曲が放っているメッセージにはゾッとしてしまうほどだ。
今作は15年も監禁された異常な状態の中で、監禁する側、された側の心理状態を描くのではなく、人間が生きてく上で取得する道徳、教育、社会性などを得る事が出来なかった者が社会にどれだけ悪影響を及ぼすのか?という警告が戯曲の裏に隠してあったようだ。

常に観終わった感が充実する長塚圭史の戯曲だが、その裏を読みとらなければ大損をしてしまうカラクリには気をつけなければいけない。

傑作戯曲である。
ただしヤクザを除く

ただしヤクザを除く

笑の内閣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/07/13 (水) ~ 2016/07/18 (月)公演終了

満足度★★

ネタばれなし
アマチュア劇団?という感じは否めないが、扱っている内容が興味深いのが特徴的だ。

ややチャリT企画に似ているかも?

あの日々の話

あの日々の話

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2016/07/07 (木) ~ 2016/07/18 (月)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

玉田企画の【あの日々の話】を観劇。

大学サークルで総会を終えて、カラオケをしている男女の話し。

毎度の事ながら、男女の関係を妙な空気感で見せている。
密室劇で、ポツドールにやや似ていて、好きだけど告白出来ない?性交したいけど出来ない?というモヤモヤな男女の気持ちを、現代口語演劇で表現している為か、観ている観客はたまらなく面白い。
呑気な恋愛物かと思いきや、平田オリザの様にほんの少しだけ社会背景を見せてくれる辺りは抜群である。

何時観ても外さない劇団である。

お勧めである。
特別公演『アンポはつづくよどこまでも』

特別公演『アンポはつづくよどこまでも』

プロジェクト・ムー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/06/28 (火) ~ 2016/07/01 (金)公演終了

満足度★★★

アンポは?
蜷川幸雄亡き後、革命劇をやる劇団はこれで皆無か?と思っていたが、
いましたねぇ~。
素晴らしい!

ニッポン・サポート・センター

ニッポン・サポート・センター

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/11 (月)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX


平田オリザの新作【ニッポン・サポート・センター】を観劇。

サポートセンターでは、DVや家庭貧困などの無料相談を行っていて、
職員の他に、近所のボランティアの人達も交代で手伝いに来ている。
様々な問題を抱える職員達とボランティアの活躍?を描いている。

解決する事のない数々の問題を、起承転結の境目のない構成で語られていて、開演のベルと共に始まる事もなく、開場と共に舞台では既に俳優が演じていて、客電が落ちることなく、客席が埋まった辺りから徐々に物語が始まっていく。
そしてそこで起きている顛末を、覗いて見ているような錯覚?に落していくのが平田オリザの見せ方だ。
今作もサポートセンター内だけのドタバタ劇のようでありながら、何気ない会話の中から、世界での日本の立ち位置を感じらせてくれる辺りの戯曲とそれをさらりと演じている俳優の上手さは大したものである。
そして大切な事を語っている俳優がずっと後ろ姿で、それを聞いている俳優しか見せない手法は何時もながらである。
劇場に来て、芝居を観て、非日常を経験した!という往来の演劇体感が全くない代わりに、独自のものを作り続けている平田オリザは、我々に別な演劇体感させてくれる。

傑作であり、お勧めであり、面白い演劇である。
新・二都物語

新・二都物語

新宿梁山泊

花園神社(東京都)

2016/06/18 (土) ~ 2016/06/27 (月)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

新宿梁山泊の【新・二都物語】を観劇。

唐十郎の原作で、前作【二都物語】の続編だ。

朝鮮海峡を渡ってきたリーランの物語で、金守珍が描く唐十郎の世界観は話を大きく広げていくのが特徴のようで、大陸をまたいだ話だけに、そこを焦点にしたようだ。
唐十郎の戯曲の良さは、混沌を背景に、誰もが持っている秘め事のような恋愛行為の喜びに浸れるのだが、金守珍は全くそこへは行かず、ダイナミズムを主体にした恋愛物ので攻めてくる。
大きく好みは分かれるだろうが、個人的には全く受け付けないが、これが金守珍の世界観であるのならば、誰も文句は言えないのである。

幸子を演じた女優さんの力強さは群を抜いていた。
お見事!
郵便屋さんちょっと2016

郵便屋さんちょっと2016

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

扉座の【郵便屋さんちょっと】を観劇。

今作は殆ど観る事が不可能なつかこうへいの初期の作品で、絶頂期の彼にもろに影響を受けた横内謙介の作品である。

立ち退きで困っている菜の花郵便局と女性局長。
そこに局長の腹違いの兄・ジョン・センジロウがハリウッドから助けにくるのだが、それによって暴かれる郵便局で行われていた数々の愛の不正と機密。
そしてそれを狙うヤクザ(童貞軍団)と神奈川県警が入り乱れ、壮大な市井の人々の愛の物語が始まるのである。

とても分かり安い勧善懲悪になっていながら、多数の登場人物の背景を自虐ネタでさらりと説明する上手さと、それを伏線として利用する展開の持って行き方には何時もながら圧倒される。
そして時代背景は現代なので、時事ネタは満載である。
こんな説明をすると中身のないただの娯楽作品に思われがちだが、やはりつかこうへいの「人を愛する」という事がテーマになっているので、
やはり熱く、涙してしまう。
そして今作があったからこそ「熱海殺人事件」という傑作が出来あがったと言っても過言ではない。

様々な人達がつかこうへいの亡霊を追っているが、直接関係していなかった横内謙介こそ彼の事を一番理解しているかも知れない......。

お勧めである。

アベベのベ 2016

アベベのベ 2016

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★

ネタバレ
ネタバレ

ネタバレBOX

チャリT企画の「アベベのべ2016」を観劇。

政治と物語を上手い具合に交わらせる事が出来る劇団。
それも時事問題を見事に絡ませるのが得意なのだが、それを物語に上手く乗せて、カタルシル?までなかなか行き着けないのが難点ではある。ただ分かりづらい時事ネタを、観客に分かりやすく、興味を持たせようとする狙いは上手くいっているのは確かだ。
そしてそこに行ったら傑作を簡単に作る事が出来るだろう。
今作はそこそこの出来ではあるが、過去に「ネズミ狩り」という傑作があるのだから、今後も期待しよう。
義経千本桜—渡海屋・大物浦—

義経千本桜—渡海屋・大物浦—

木ノ下歌舞伎

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2016/06/02 (木) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

木ノ下歌舞伎の【義経千本桜~渡海屋・大物浦】を観劇。

またも歌舞伎である

平安時代末期、源義経は平清盛との源平合戦で勝利を収める。
がしかし、兄・源頼朝に不信感を抱かれ、謀反を疑いまでかけられてしまい、仕方なく都落ちの為に九州に逃れるが、道中に立ち寄った船宿には平清盛の子孫・平知盛が復讐の牙をむいて待っているのだった.....。

平安時代の不安な世の中を、現代の政治、文化と重ね合わせていき、複雑な時代背景などもさらりを描き、小気味良い演出で攻めてくる。
そして戦乱の時代に産み落とされた己の人生、運命な抗いながらも復讐に向かう平知盛の人生は何ぞや?をクライマックスに期待したのだが、どうも今作はそこに焦点を持って行かず、戦っている平知盛を見守る家族、復讐をされた側の源義経の見解、そして復讐を成し遂げられなかった後の平知盛の無念さを描いている。
このような描き方は悪くはないが、物語の展開としては、どう読んでも復讐を最後の大詰めに持って行っているのに、突然違う方向から描き始める辺りから、徐々に観客は失望感を感じ始めてしまう。
折角、観客全員が物語の転に乗り出しているのに、何故ここで観客を路頭に迷わせる流れに変えてくるのかが理解不可能である。
そして転の波に転げ落ちた観客は思うである「この演出家は何がしたいの?」と。
そして終わりにかけては、源義経から見た世界を描くというのも意味が分からずという感じだ。
観客は観たいのは、平知盛の無念の人生観なのだ。その人生観を徹底的に描く事が木ノ下歌舞伎なのだと。

そう残念ながら、今作は演出家の演出ミスなのである。
渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾 「四谷怪談」

渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾 「四谷怪談」

松竹/Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/06/06 (月) ~ 2016/06/29 (水)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ
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ネタバレBOX

串田和美の【東海道四谷怪談】を観劇。

故・中村勘三郎から20年来続いているコクーン歌舞伎である。
今作は通し上演を前提に作られた北番である。

誰もが知っている東海道四谷怪談は、お岩と伊右衛問との呪い?呪われた?という話に終始しがちだが、
本来は、江戸城・松の廊下で、浅野内匠頭(塩治判官)が吉良上野介(高師直)に起こした刃傷事件が発端になっていて、
その背景を知らずに、今作を観てしまうと面白さが半減してしまうというカラクリがある。

当時は今作と仮名手本忠心蔵を二日間かけて上演して、
一日目~忠臣蔵(前半)~四谷怪談(前半)
二日目~忠臣蔵(後半)~四谷怪談(後半)~忠臣蔵(最後)
という形態で上演していたらしく、そこに大いなる意味があり、表の仮名手本忠臣蔵、
裏の東海道四谷怪談という事がテーマになっており、表と裏の意味を知ってこそ、面白さが更に増していくのである。
そして刃傷事件でお家断絶になってしまった浅野内匠頭(塩治判官)が吉良上野介(高師直)を討ち入る日までの約二年間の物語である。

今作を観て始めて知ったお岩と伊右衛問の関係、お岩は伊右衛問に殺されたんではなく、偶然死んでしまったという事実、
伊右衛問は根っからの悪い奴ではなく、元々はお岩を愛していたという事実、
そして直助というもう一人の主人公で出てくる事によって見えてくる吉良上野介(高師直)への討ち入り計画、
直助が惚れた女はお岩の妹?などなど驚愕の事実が満載の作品である。
まさしく今作こそが鶴屋南北の戯曲の面白さを垣間見れる作品ではあるが、
そこに串田和美という演出家が手を加える事によって、更に奥深く迷宮な世界が見えてくるのである。
そしてこの因果応報の因を探る事が今作の最高の面白さであろう。

大傑作である。

太陽

太陽

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2016/05/06 (金) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

イキウメの【太陽】を観劇。

ウィルスにより、夜しか生きられなくなってしまったゾンビ人間と辛うじて生き残った少数の人達の戦いを描いている。
ゾンビ人間は、感情喪失を失った代わりに、永遠の若さと肉体を得る事が出来るようになった。
そして人口増加と社会は往来の安定を取り戻しているようなのだが、実のところは.....。

決してゾンビ芝居ではないのだが、汚染によって隔離されてしまi,
閉じ込められてしまった街、そして風評被害、差別と今の時代を先読みしたかのような内容である。
2011年に初演らしいのだが、時が経てば経つほど、今作のテーマを真摯に受け止めてしまうようだ。
特に経済の安定こそが、生きてく上での最重要事項?という今の資本主義社会にどっぷりつかっている我々に警告を発している作品だ。

見応えがあり、お勧めである。
わかば

わかば

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2016/05/01 (日) ~ 2016/05/09 (月)公演終了

満足度★★

ネタばれ
女性作家が愛を描くと妄想以上に歪んでしまうのは何故だろうか?

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