住み込みの女の観てきた!クチコミ一覧

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Turning Point 【分岐点】

Turning Point 【分岐点】

KAKUTA

ザ・スズナリ(東京都)

2012/02/23 (木) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白いぞ!
北沢スズナリで劇団・KAKUTAのターニングポイントを観劇​。
巷では実力派と言われている作・演出の桑原裕子だけに初見だが観​劇を決意。

今作は劇団結成15周年記念らしく、3人の演出家によるリレー形​式のオムニバスで展開している。物語自体は二人の女性の長い期間​に渡る友情物語で、特別に目新しい物はない。だが始まりの表現方​法、役者の実力と小劇場というより商業演劇の様な華やかさと圧倒​的な力強さを感じさせてくれる。スズナリが驚くほど狭く見えたほ​どだ。明らかに最近観ている劇団との格の違いを感じる。この劇団​、パルコ劇場辺りで公演するのが向いているのでは?と思わせてく​れるぐらいだ。

そして観て良かった、次回作も観よう!と思い劇場を後にした。

ポツドール『夢の城 -Castle of Dreams』

ポツドール『夢の城 -Castle of Dreams』

ポツドール

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/11/15 (木) ~ 2012/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

完全ネタばれ
大傑作!

ネタバレBOX

2006年の再演芝居。

今作は若者の虚無感を描いている。それもあえて無言劇で(R-18の芝居)。

幕が開くと、観客はベランダの外から芝居を観るという舞台装置になっている。ポツドールの18番・他人の世界の覗き見しているような錯覚を起こさせて、観客に一切感情移入させない演出方だ(セミドキュメントとも言われている)

舞台設定は、アパートの1Kで、8人の男女が共同生活している。ベランダの前は大通りの為か、車の騒音でうるさい。その部屋では、ガングロ女性、刺青男、茶髪、オタク、やくざなどの世間で言う処の全く駄目な若者達が住んでいる。そして室内は、腐敗する程のゾッとするようなゴミ為である。兎に角、汚い部屋なのである。若者たちは、各自で勝手にテレビゲームに興じている物、漫画だけを読んでいる物、セックスをしている物、オナニーをしている物、寝ている物、ある時は互いに殺し合いに近い暴力を振い合ったりと、他人の行っている事には全く無関心で、人間の同士の付き合いが全くないのである。ある意味、人間のゴミ為の世界と言うべきだろうか?それが行われているアパートの風景なのである。そんな中で、男女が入れ乱れたセックスシーンは圧倒的で、俳優は下半身を丸出しで演じているから驚いてしまう(但し、下半身の秘部はなるべく見せないように気を使っていた)。その部屋で行われている若者の生態を、時間経過と共に、ただ見せて行くだけで、物語は全くないのである。これこそがポツドールの他人の生活を覗き見している、セミドキュメンタリーの様な芝居なのである。

しかしそんな若者の生活風景を観ていて、ある時観客はふっと気が付くのである。それは朝になると若者たちは起きて、外に出て行き、夕方には帰ってきて、夜には夕食の用意を共同でして、その後は、セックスに興じて、深夜になったら眠るのある。まさしく人間らしい規則正しい生活を毎日行っているのである。若者の無関心、無気力を描いているように見せて行きながら、人間は生きる上での行う大切な営みには決して逆らえないと言う事を明確に感じさせてくれる瞬間でもあるのだ。今作は若者の虚無感を描くという事をテーマにしておきながら、人間が生きるとは?という根本的な事に言及しているのである。それは若者でなくとも、上記の生活の様な事は、誰もが毎日していると観客自身が気がついていくのである。そこに気が付くかどうかは、観客の鑑賞能力の高さが問われる処だろう。それが分からなければ、観客失格である。この芝居を観る意味はないのである。そうでない観客は、今の若者は駄目ね?という簡単な感想で、劇場を後にしてしまうのである。
まさしく作・演出の三浦大輔の観客に問いかけの芝居でなのである。

もう絶対観る事が出来ないと思われるポツドールの代表作であり、大傑作の芝居である。

必見!
死の町

死の町

劇団チャリT企画

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/12/13 (火) ~ 2011/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

2回目の書き込み
ネタばれへ

ネタバレBOX

劇団・チャリT企画の死の町を渋谷ギャラリーアクトにて観劇。チ​ャリT企画は劇研(早稲田演劇研究会)出身だ。
時事ネタを取り上げる劇団で、前作でも死刑問題を描いていたが、​今作も原発での放射能をつけちゃぞ!事件についての芝居だった。​この問題は鉢呂大臣がオフレコ会見で、そのような事を言った?言​わなかった?事と、マスコミの発表した鉢呂大臣のコメントが各局​によってあまりにも違い過ぎていて、何故そのような事がマスコミ​側に起こったのか?もしかしたら鉢呂大臣とマスコミ側の間で何か​あったのではないか?を問う芝居だった。
それを探偵コナン、マープル、ホームズ、松田優作などが出て来て​、事件を解決していく。最初はマスコミ側からの発表文、言い分、​福島県民の言い分、世間のこの問題に対する考え方、そして鉢呂大​臣の原発の考え方など、周りからじっくり検証していき、最後にそ​の時の鉢呂大臣とマスコミの会見模様を再現して、事の真実を突い​ていく見せ方だ。
完璧な戯曲を茶化し脱線しながら見せていく演出方は、難しい問題​にすんなり入り込ませてくれる。そして観客はこの事件の問題点が​分かってくると共に、演出家のメッセージがはっきり見えてくる瞬​間でもあるのだ。
そのような流れで見せる演出方は、やはり戯曲を書いて、書いた本​人が演出をするからこそ出来る技であろう。
見応えがあり、満足させてくれる作品だった。
【公演終了】ブスサーカス【感想まとめにリンクあります】

【公演終了】ブスサーカス【感想まとめにリンクあります】

タカハ劇団

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/02/21 (火) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

チラシに騙されるな!
ややネタばれ。

ネタバレBOX

人里離れた雪山の一軒家で、ブスな愛人5人が彼氏のヒロシを待っている。ヒロシと女性5人は殺人強盗を行い、ヒロシと落ち合う予定なのだが、そのヒロシがなかなか来る気配がない。疑心暗鬼になった愛人5人は、互いのブス具合を罵りあいながら、終いには殺人までに発展していき自滅していく。

ベケットのゴドーを待ちながらを拝借しながら、女性が持っているブス具合を徹底的に描いている。その醜い女性の争いがゴドーを待ちながらを引用しているせいか、非常に不条理に見えてくるのだが、それは男性の知らない女性の秘部であり、そこに物語のメインに持ってくる作・演出の高羽彩には見事としか言いようがない。
何者か知らない女性だが、まだ20代。かなりの実力あり!と見た。
次回作も観るのは間違いなし。
玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/02/29 (水)公演終了

満足度★★★★★

お勧め
修学旅行中の中学生が宿泊先で織りなす男女の異性に対する興味の​話。
誰誰が好きだ嫌いだの話を延々と織りなしているだけなのだが、こ​れが単なる中学生の話ではなく、まるで日本社会特有の終わりのな​い無駄な会議のように感じられて面白かった。【ベケットのゴドーを待ちながら】の来るはずのないゴドーを待っ​ているのと同じで、終わりのない会話を永遠としている辺りに不条​理感が漂っている。日本社会の縮図を描くのは、不条理劇にするの​が一番適しているのではないか?と思わせてくれる舞台だった。

今作は当たらない宝くじが大当たりした気分だった。

THE BEE Japanese Version

THE BEE Japanese Version

NODA・MAP

水天宮ピット・大スタジオ(東京都)

2012/04/25 (水) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本バージョン
ネタばれ

ネタバレBOX

【The Bee 】の日本バージョンを観劇。

前回のイングリッシュバージョンと同じ戯曲で、日本人の配役に変​えての公演。
イングリッシュバージョンが外国人向けか?ややストレートプレイ​に近い形で行っていたのに対して、日本バージョンば大胆な小道具​の使い方で、野田秀樹の得意の小劇場っぽい表現の数々で展開して​いく。ただ初演に比べるとイングリッシュバージョンはさほど進化​はしているようには思えなかったが、日本バージョンの方は更に明​確にテーマを表現していったようだ。サラリーマンが被害者から加​害者に変貌していく様の変わり方が異常過ぎで、明らかに今の日本​にメッセージを訴えている。同じような問題を全世界でも抱えてい​るのに、何故日本に対してここまで訴えるのか?イングリッシュバ​ージョンは物語を通してメッセージを伝えていたのに対して、日本​バージョンは最初にメッセージありきで出来あがった芝居の様にも​感じ取れた。改めて両作品を比較してみると、世界での日本の存在位置というのがかな​り危ういのではないか?と演劇を通して野田秀樹の心の叫びが聞こ​えてくるようだった。

初演では秋山菜津子が演じた役を宮沢りえがどのように演じたか?​日本一スリップが似合う女優と言われている秋山菜津子の色気に対​して、宮沢りえは生足丸出しで、野田秀樹扮するサラリーマンに前​、後ろからと犯されていき、哀れに狂人化していく野田秀樹を見つ​める一瞬の表情、そして自らも奴隷の様に野田秀樹に奉仕していく​虚ろな表情、今作が宮沢りえの生涯の芝居でベストワンと言っても過言​ではない!と思わせるぐらいに非常に良かった。今作の宮沢りえの​芝居を見逃すのは勿体ないと思われるので、是非劇場へ!

尾藤イサオの【剣の舞】というおバカな歌が効果的に両バージョン​で使用されていた。
左の頬(無事全ステージ終了!ご来場まことにありがとうございました))

左の頬(無事全ステージ終了!ご来場まことにありがとうございました))

INUTOKUSHI

シアター風姿花伝(東京都)

2013/04/10 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

ネタばれ
ネタばれ読んでも問題なし

ネタバレBOX

劇団・犬と串 【左の頬】を観劇。

早稲田演劇研究会に所属していた劇団で、前作の公演からフリーの劇団として活躍している。今作で既に4本目の観劇だが、新作は毎回観てしまうというお気に入りの劇団のひとつだ。

仲の悪いクラスメートの幸というふたりの女性を巡って、イケメン軍団が二人の仲を取り持つという話。その浅はかな話から世界救済?という荒唐無稽な話へと展開していくのだが、戯曲の捻りや展開の面白さで見せていくのではなく、役者の身体の熱量、馬鹿馬鹿しいギャクで観客の笑いと取り、物語の全てを納得させてしまう演出術には毎度の事ながら感服してしまう。あまりにも面白すぎて、考える余地がなく、ひたすら笑いっぱなしなので、展開などはどうでも良くなってしまうのである。ある種、唐十郎のアングラ芝居を観劇している時と同じ感覚に近いかもしれない。唐十郎も物語の狙いなどを置き去りにしていく代わりに、その世界観へ没入させるという交換トレードを観客に迫ってくるのだが、それと同じ様な事を行っているような気がする。ジャンルが違えども、似たような感覚を味わう事が出来る劇団だ。

ヒロインの鈴木アメリは相変わらず抜群だ。これだけの圧倒的存在感を持っている女優は、演劇界ではなかなか見かける事は出来ない。早く野田秀樹に見染められて欲しい。そして男優人の身体の熱量は、つかこうへいの俳優陣を彷彿させる物がある。もしかしらた超えているかもしれない?それから解散した【バナナ学園純情乙女組】の演出家・二階堂瞳子が出演していたのには驚いたが、彼女は俳優は止めたほうがいいね。

今作は今までで一番の傑作だろう。そしてお勧めである。
死の町

死の町

劇団チャリT企画

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/12/13 (火) ~ 2011/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

観るべき芝居だ!
これほどまでに時事問題をストレートに追求していく劇団は今の処は全くと言っていいほど見当たらない。若手劇団のポツードール、チェルフィッチュ、五反田団、マームとジプシー・・・などの表現方法とはあまりにも相反しているので若者受けはしない劇団かもしれないが、完璧な戯曲とその戯曲をあえて崩していく演出方は、作・演出の位置にいるから出来るから技と言ってもいいだろう。確かに戯曲も大事だが、その内容を如何に、確実に、見せる方法が一番難しいのだが、簡単にやってしまうこの演出家は凄い。そして観ている観客は満足してしまう。今作は本当に大満足だ!

バンザイ

バンザイ

劇26.25団

駅前劇場(東京都)

2011/12/23 (金) ~ 2011/12/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

追加の書き込み
脇役だが、女子高校生役で出演していた岸本鮎佳と荒川佳の脱線コンビが、抜群な面白さをみせてくれた。これこそが小劇場の芝居の面白だ。
これはかなりのヒット!

女がつらいよ

女がつらいよ

MCR

王子小劇場(東京都)

2011/09/07 (水) ~ 2011/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

つらすぎますよ
初見の劇団・MCR。
人殺しの彼氏と付き合っているが年上の彼女・あずきの悩みは余命半年の命。でもそんな悩みどころではないほど世間や周りは自分の思い通りに動いてくれない。さぁ、どうするあずき!
ややドタバタ調で見せながら、ヒロインであり、主役のあずきが生きる事の難しさを、女性としての生き方を力強く演じて舞台を引っ張っていく。あずき演ずる女優さんなくしてはありえない舞台であり、そこに全てを集約している演出には感服する。これこそ演出家と主役の信頼であり、俳優で見せる演劇の醍醐味である。必見!

塩ふる世界。

塩ふる世界。

マームとジプシー

STスポット(神奈川県)

2011/08/17 (水) ~ 2011/08/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

横浜の片隅に天才がいるとは・・・・。
今までの演劇人が苦労して作ってきた演劇表現方法をあっさりと覆してしまう演出方は必見。全てが新鮮に見えてきて、尚且つ上演時間をしっかり堪能させてくれる演劇の醍醐味もある。
演劇ファンなら観なければいけない舞台。観るべし!

Kと真夜中のほとりで

Kと真夜中のほとりで

マームとジプシー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

またもや傑作を作った!
ネタばれあり。(ネタばれに書き込めないので)

3年前に突然失踪した妹(K)を探し続ける兄とその妹(K)に関​わった人達の視点から描いていく演出・藤田の手法は相変わらずだ​が、何故、妹(K)が失踪したかではなく、失踪してしまった妹(​K)が個人の記憶、社会の記憶の中から何時か消えてしまうのでは​ないか?という不安と悲しみを描いている。繰り返される同じ場面​の連続、反復のセリフ、ラップ、舞台をひたすら踊り続ける人達の​姿は空しくなるほど悲しく切なく迫ってくる。そして圧巻なのはク​ライマックスで妹(K)と関わりがあった各々の人達が全てが登場​して、大音響の下で、一斉に踊り、セリフを発して、妹の関わりを​語っていくのである。そしてクライマックスの後の場面に、これが​現実の社会でないか?と演出・藤田は問いかけてくるのである。

今作は2時間だったが、相変わらず俳優の運動量は日本一であろう​。
そして野田秀樹の演劇はスポーツだ!の迷言は、今や劇団・マーム​とジプシーの迷言だな。

『THE BEE』English Version ワールドツアー

『THE BEE』English Version ワールドツアー

東京芸術劇場

水天宮ピット・大スタジオ(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

最高傑作
過去の演劇歴史上に名を残す作品であり、野田秀樹の最高傑作であ​り、僕自身の約30年間の観劇ベストワンに近い作品である。今回​は何年か振りの再演である。

内容は、脱獄犯に妻と子供を人質にされてしまったサラリーマンが​、同じ様に脱獄犯の妻と子供を人質に取り、お互いの人質の釈放を​求めて、終わりのない暴力連鎖が始まってしまうのである。

まさしくこれこそが舞台の極めつけとも言うべきの最高傑作の演劇​である。テーマもさることながら、舞台での表現方法、俳優の演技​、音楽の使い方など誰にも真似出来そうで出来ない野田秀樹の究極​の表現方法である。戯曲、俳優、演出の全てが完璧だと、観客はも​う圧倒されるしかないのである。そしてただ圧倒されるではなく、​観劇後にかなり深い余韻を残し、野田秀樹のメッセージを感じるの​である。これこそが本当に体感出来る演劇です。

日本バージョン(過去に観劇)もありますが、是非、イングリッシ​ュバージョンをお勧めします。

まほろば

まほろば

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/04/02 (月) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

三田和代の怪演
ネタばれあり

ネタバレBOX

新国立劇場にて蓬莱竜太の【まほろば】を観劇。
今作は劇団・モダンスイマーズとしてではなく、蓬莱竜太が戯曲の​み提供した作品。

人生に追い込まれた男性達を描くのを得意とする蓬莱竜太が、女性​だけのドラマを描くとどのようになるかのか?
以前に劇団・モダンスイマーズで観劇した【夜行ホテル】というの​が、過ちを犯して逃げてきた男性達が、狭いホテルで、もがき、苦​しみながら人生をどのようにして立て直していくのか?という芝居​だったが、今作も同じ様な閉じ込められた設定である。

とある田舎町の祭りの最中で男性達が出払っている家では、本家を​必死に守ろうとする母と大母様、突然東京から帰省した長女、それ​にバツイチの次女とその娘、そして次女の今の彼氏の娘の6人の女​性だけで展開するドラマ。 閉じ込められてという設定ではないにしても、祭りで出払っている​男性達が帰ってくる間を家で待っている女性達=閉じ込められてい​る?とやや設定が似ている点が面白い。今作は女性のみのドラマであり、彼女達に降りかかった危機という​のが、血脈、結婚、不倫、閉経、生理と過ちは犯していなくとも人​生に降りかかった危機をどのように乗り切るか?男性ならそんな状​況でもロマンの一つでも語ろうとするが、女性は決してロマンなど​を語ろうとせず、現実のみを見据えてその場を乗り切ろうとするの​である。男性が見たら非常に息苦しく、女性が見たら自身の現在を​踏まえて観てしまう辺りがこの舞台の面白い処である。男性作家な​ので男性視点が多少あるだろうなぁ?と思っていたが、そのような​事は一切なく、女性の視点のみで展開している。この設定の代表格​である長女役の秋山菜津子は、小劇場出身ながら風格があり、商業​でもこなせる女優だ。演劇界では大竹しのぶの次の位置にいる事は​間違いない。そして三田和代というベテラン女優は、怪演という言​葉がピッタリと当てはまってしまうほどの俳優になっていたのは驚​いた。

今作の戯曲は岸田戯曲賞を取っただけに、見応えのある芝居であり​、脱ドラマが叫ばれている若手の演劇人には到底書く事の出来ない​傑作戯曲である
三鷹の化け物

三鷹の化け物

ろりえ

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/09/30 (金) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

凄いぞ、こいつらは!
日、三鷹芸術文化センターにて今年期待の劇団3本の3本目を観​劇。その劇団の名はロリエ。以前に観た2本が面白かっただけに、​今作への期待が高まっていた。
上演時間約3時間、一体何を見せてくれるのか?
芸人を辞めた健二郎が偶然、皇室の恋子と出会う。そして恋に落ち​てしまう。こりゃロミオとジュリエットかな?と始まりから一気に​テンションの高い芝居で観客を魅了する。
が、それはそこまでで、それから1時間40分近くダラダラ、タラ​タラ発展しない恋の話しで、一旦休憩が入る。何故、今年の期待の​劇団なのか?この劇団は終わったなと思いつつ、後半を観る。そし​てそれからが全てが変わるのである。健二郎と恋子が恋愛から結婚​に発展してしまい、それを知った健二郎の母親が怒りだすのである​。その母親は実は怪物(ゴジラ)で街を破壊しながら、息子に会い​に来るのである。そして制御の利かなくなった母親(ゴジラ)と息​子の対決がこのロリエの見せ場だったのである。当然、無名の劇団でゴジラなんか出て​こないだろうと思っていて、どうせ音や映像処理かと思いきや、高​さ10メートル以上、横幅8メートル以上の等身大のゴジラの上半​身が登場してきたのある。それもそのゴジラの出来がかなり精巧に​出来ていて、首が回り、火を吐いたりするのである。もうブラボー​!ブラボー!としか言いようがない素晴らしさなのである。これこ​そ生の体感、こんな生の体感は過去には誰もやったことないぜ!と​いうぐらいに凄いのある。全てをここに持ってきた作・演出の奥山​雄太には演劇人にはない末恐ろしを感じてしまったのである。

バナ学バトル★☆熱血スポ魂秋の大運動会!!!!!

バナ学バトル★☆熱血スポ魂秋の大運動会!!!!!

バナナ学園純情乙女組

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/10/26 (水) ~ 2011/11/01 (火)公演終了

満足度★★★★★

あんたらは凄いぜ!
今作が池袋演劇祭だからかもしれないが、前二作から更に激しさが増していた。もう毎度の事ながら圧倒されっぱなし!もうこれこは見ない事には始まらないだろうな!今回で初めて気がついたが、演出家・二階堂瞳子を行っている事は究極のアングラだ!そしてバナナを見てもっとも喜ぶのは故・寺山修司だろうな。

あゆみ TOUR

あゆみ TOUR

ままごと

森下スタジオ(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

今作も傑作!
ネタばれあり

ネタバレBOX

赤ん坊が子供になり、青年になり、大人になり、そして老人になっ​ていくという人間の一生を描いていく内容で、それを8人の俳優が​、動きのリズムと短いセリフの言い回しで、代わる代わる演じて見​せていくのである。それも一つ場面が終わったら交代するのではな​く、一つのセリフ、一つの動きなどによって8人の俳優が瞬時に交​代して主役を演じていき、人間の一生を反復して描いていくのであ​る。果たして人間の一生を8人が演じるという事は、その主役の生​き様は描けるのか?というのは愚問で、今回描いているのは貴方(​観客)の人生なのですよ!と言わんばかりに、観ている観客が自分​の人生と照らし合わせて舞台を観てしまう?という錯覚に落とし込​んでしまうのである。
演出家は俯瞰の視点で人間の一生を描いているので、やや奇抜かと​思われそうな表現方法でも、それがテーマとピッタリ合致した演出​方なので、違和感なく世界観に入り込める。

そして前作の舞台・わが星も歴史に残る傑作舞台だが、今作もその​一本に入るだろう。
探索

探索

城山羊の会

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

観客席に西田敏行さんが来ていた!
本日、三鷹にて劇団・城山羊の会の探索を観劇。

ネタバレBOX

ある男を殺害する為に購入した拳銃を空き地で試し撃ちをしていたら、誤って人を殺してしまった。殺された故人の家族、殺した男とその家族、そしてそれに関係している人々。そして故人の家族が犯人を探索していくうちに、全く関係ないと思っていた周りの人々までもが関係ない所で繋がっていく話である。
前作同様、ちょっとした出来事から次第に周りの人達との関係を掘り下げていく手法は相変わらずで、全くのリアリズムではないのだが、人間の嘘と本音の部分を少しだけクローズアップしていきながら、段々笑いに転化していき、微妙なリアリティーを作り上げていく。
この劇団の面白い所は、最初の出来ごとのきっかけは大して話しに影響はなく、それ以外の所で人間同士の関係性を繋げて見せていくのである。それが全くドラマチックではない下世話な展開なのだが、それをドラマチックのように見せていくのが非常に面白いのである。
コメディー?不条理?判断は難しいとこなのだが、また次回作も観たくなるほどに惹かれてしまう劇団なのである。
おしまいのとき

おしまいのとき

ポツドール

ザ・スズナリ(東京都)

2011/09/08 (木) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

大傑作
スズナリにて、劇団・ポツドールのおしまいのときを観劇。ついに作・演出の三浦大輔が最高傑作を作ったのだ。今回でポツドールは5本目で、久しぶりの新作で期待値が高すぎてやや不安だったが、見事にそんな不安を払拭してしまった。今回はあまりの衝撃でネタばれはしないが、三浦大輔の得意の低温の人間像、全く感情が感じられない人物、まるで観客が他人の生活をのぞき見しているドキュメンタリーのような見せ方、クライマックスは暗くてあまり見えない舞台の見せ方、そして舞台セットが二面の同時進行とその辺りの表現方法は相変わらず絶好調。そして驚くような衝撃のラストシーンには唖然とした。だがそのラストシーンはポツドールを何度も観ている観客には衝撃度が高いが、初見の観客にはそれほどでもないのが残念だ。だが今作で三浦大輔は自分のテーマを全て捨てたのである。だから次回作は間違いなく大きく変わるだろう。だから今作を見逃すともう永遠に今まで築いてきたポツドールの世界は見れないだろう。

スキラギノエリの小さな事件

スキラギノエリの小さな事件

城山羊の会

小劇場 楽園(東京都)

2012/06/06 (水) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

山内ケンジ?健司?
何となくネタばれ?

ネタバレBOX

劇団・城山羊の会の【スキラギノエリの小さな事件】を観劇。

ヨーロッパ北東辺りのスキラギノエリという小国は、頼りない国王とプライドが高い王妃、そして息子スキラギ、家来ゴルク、そこに出入りしている修道女ヨハンナがいる。
国王は何時も女遊びに興じ、王妃は家来と浮気まがいの事をしている。そんな夫婦にも息子のスキラギの悪戯には手を焼いているので、家庭教師ホロスを雇い入れる。だが家庭教師ホロスの努力も空しく、息子スキラギは小国にいる連中の偽善性を暴きだしていくのである。

内容はこのような感じなのだが、毎度の事ながら物語らしい物語が殆どなく、ちょっとした出来事から(息子スキラギの悪戯)誰もが持っている本音と建前の本音の部分をやたらにクローズアップして描いていく。その本音の部分をやや茶化した感じで見せて、更に役者の芝居と台詞で強調しているので、観客は妙なリアリティーを感じてしまい、笑いの渦に誘われていくのである。
とまぁ感想はこのようなのだが、どうも上手く面白さを説明出来てないのが本音なのだが、完璧な戯曲と役者への演出が非常に細かく丁寧で、作・演出の山内ケンジは計算しているのか?自然発生で出来た物なのか?は分からないが、ただ毎回きっちりと独自の世界観が確立されているのは確かだ。はっきり言える事は「山内ケンジという人はあの面白いCMを撮っている人だね。何となく舞台の感じも分かる気がする」という発想で観劇してはいけないという事だ。
今作の石橋けいの芝居の上手さは観客を虜にする(特に今作は男性客) そして山口奈緒子も暴れまくりも良い。

今作はかなりお勧め。小劇場ファンにはたまらない芝居だ。

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