kikiの観てきた!クチコミ一覧

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ジョン マイ ラブ ージョン万次郎と鉄の7年ー

ジョン マイ ラブ ージョン万次郎と鉄の7年ー

坊っちゃん劇場

坊っちゃん劇場(愛媛県)

2021/09/02 (木) ~ 2021/10/02 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この舞台では、万次郎が漂流やアメリカでの生活を経て帰国した後の日本での様子を妻となった鉄と出会いや周囲の人々との交流を軸に描いていく。ヒロインの鉄をAKB48のメンバーが交代で演じ、歌やダンスで賑やかに綴りながら、新しい価値観を日本に根付かせようとした男の意思が胸に響く物語となっていた。
おてんばで縁談など見向きもしない鉄が、因習や偏見にとらわれない万次郎の明るい強さに心を動かされていく様子が瑞々しい。早くに母を亡くした鉄を慈しみ守ろうとする女中おクニの愛情とエネルギー、誠実さと温かさを滲ませる鉄の父、万次郎を引き立てようとした江川様の未来を見据える眼差し。そして地元の期待を背負って万次郎の私塾で学ぶ若者たちや下男となる竹蔵、英語の指導を懇願する福沢ら、万次郎のもとに集った若者たち。鉄の幼馴染 菊野の前半と後半での変化。攘夷論に染まって万次郎を敵視する鷹之丞まで含め、激動の時代に国の未来を思う真摯な若さを感じさせた。変わりゆく時代を象徴するのが、いくつもの言葉であった。民主主義・自由・平等、そして愛。万次郎がアメリカで学んできたのは英語や航海術ばかりではなかった。まだ日本には言葉すらなかったそれらの概念を若者たちに熱く語って聞かせる彼の姿には、鉄でなくても惹かれてしまうだろう。テンポの良い物語を軽快な楽曲やチャーミングなダンスで彩り、エンディングではペンライトが振られる舞台。けれどその核にあるのは激増の時代の片隅で生きた人々の息遣いと骨太なメッセージだった。

『OKINAWA1972』

『OKINAWA1972』

流山児★事務所

Space早稲田(東京都)

2016/09/15 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/09/24 (土)

流山児★事務所も風琴工房も好きでよく拝見しているけれど、それぞれの持ち味が活かされて、絶妙のバランスとなっていた。

フィリピン人との混血の青年の半生を軸に、義賊めいて親しみやすい沖縄の裏社会の人々が、沖縄の日本返還で本土のヤクザに牛耳られることを恐れ、結託しようとする経緯と、時の総理大臣 佐藤栄作と首相の肝入りで返還の交渉に携わった政治学者の苦渋の選択。

重いテーマやさまざまなバックボーンを踏まえた物語なのだけれど、転換や解説もショーアップされて楽しく、至近距離で観るアクションの迫力に眼を奪われた。

沖縄の置かれた立場の矛盾も苦悩も伝えつつ、ストーリーの面白さに引き込まれ、さまざまな場面で笑い、手に汗握る。骨太でアングラで、でも緻密さやスマートさも感じさせる、絶妙のバランス。加えて、登場人物がそれぞれとても魅力的で、ああ、もう一度観たかったなぁ、と思った。

彼の地

彼の地

北九州芸術劇場

あうるすぽっと(東京都)

2016/02/12 (金) ~ 2016/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

居場所
ひとつの街で、何組かの人々の間で起こる出来事を描いたいくつもの物語が、繋がったり繋がらなかったりしながら進んでいく群像劇。

それぞれの場面で人々が見せる切実さや、シチュエーションや人々の関係が絶妙で、誰もが結局は居場所を求めるのだ、と思えて切ない。

どこにいてもいいのだと、ただ生きてさえいてくれれば、君の好きな場所で生きていけばいいのだと、最後にそういう言葉が登場人物だけでなく観る者の胸にも小さな灯をともすように感じられた。

ミュージカル「ハルらんらん♪―和崎ハルでございます」

ミュージカル「ハルらんらん♪―和崎ハルでございます」

わらび座

わらび劇場(秋田県)

2016/04/16 (土) ~ 2017/01/03 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/05/03 (火)

女性の、いや人間の権利や尊厳、誇り、そういうものを言葉で説明するよりもっと切実に描いて、我々が我々らしく生きることを考えさせる。

英雄でも超人でもない当たり前の人々が、精一杯生きる姿の強さと美しさが印象に残った。

無頼茫々

無頼茫々

風琴工房

ザ・スズナリ(東京都)

2015/09/12 (土) ~ 2015/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

背筋を伸ばす
大正デモクラシーという言葉に象徴されるような民主主義や自由を求める動きがある一方で、米騒動に対する報道規制など、きな臭くなっていく時代と、そこに生きる人々の思いを描く群像劇。

報道の自由。新聞の使命。そして、受け取る側の責任と権利。報道とは何か、新聞とは何か、という問いかけが何度も繰り返されるけれど、それはある意味、自由や平等という言葉へとつながっていく。

自由も平等も、当たり前にそこにあるものでなく、意識して勝ち取り、あるいは守らなくてはならないものだと。

それを示すように劇中の人々が見せる誠実さや情熱が胸に迫る。

堂海や村嶋らが、抑圧に対して彼ららしい戦い方を見せようとする場面では、思わず目頭が熱くなった。

周囲一面に新聞を張り巡らせた美術。そこにかけられた、劇中でキーとなる言葉の書かれたいくつかの札。物語の最後に、秋川が「大正デモクラシー」という札を、客席に向けて掛け直す。

昨今の状況をも思い起こさせる骨太なテーマ性と観る者の目を惹きつけるエンターテイメント性を兼ね備えた完成度の高い舞台だった。

登場する人々の、それぞれのなすべきことに向き合おうとする真摯さに、今の自分を省みて思わず背筋を伸ばした。

建築家とアッシリア皇帝

建築家とアッシリア皇帝

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2022/11/21 (月) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/11/29 (火) 19:00

すごかった。解釈とかラベリングとかそういうのはもう後回しにして、ただあの膨大なセリフとくるくる変わる役割とを猛スピードで走り抜けるお二人に釘付けになった。どこか突き抜けた明るさと乾いた孤独がひしひしと胸にしみる。

青森に落ちてきた男

青森に落ちてきた男

渡辺源四郎商店

ザ・スズナリ(東京都)

2016/05/03 (火) ~ 2016/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/05/07 (土)

実際にあった出来事を、わずかに位相を変えて寓話めいた形で描きつつ、その筆致は生々しい。

敵兵を「鬼」の姿で描くけれど、実際に鬼の所業を行っているのは人間、それも同じムラに住む人々だ。

欲望や憎しみや見栄や保身やウソ。力尽くで女を襲ったり、権力を嵩にきて人々を死に追いやったり、生体解剖をしようとしたり。

物語の最後に置かれた70年後の戦争。この舞台の原型となる作品は、戦後70年を迎えた年に上演されている。寓話というには収まりきらない時代への思いが、そこにこめられているのだろう。

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

壱劇屋

王子小劇場(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な90分
四面舞台で描かれる奇妙な脱出劇は、身体表現・緊張感・笑い・カタルシス、そして、静かな感謝などに彩られた期待を裏切らない濃密な90分だった。
パフォーマンスと物語の結合が心地よく、観終わって充足感を感じながら劇場をあとにした。

やみつきになりそうな劇団だった。

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

九十九ジャンクション

王子小劇場(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★


うんざりするほど平凡な風景に、混じり始める不協和音。過去の連続殺人事件。残虐な連続殺人鬼はどういう人物だったのか。そして殺人犯の家族であるということはどういうことか。

急速に緊張感が高まり、観る側も身じろぎすらできなくなっていった。

いくつもの重い課題を抱えつつ迎えたラストシーンでの殺人犯の弟と、知らずに結婚したその妻の会話が鮮やかだった。

怒っても迷っても投げ出すのではなく、やるせない現実に眼を背けず、逃げ出しもせず、現状を見つめ考えようとする。平凡な人間の中の強さが描かれて、観る者の胸にある種の安堵感を与えた。

中盤の展開からは予想外の後味のよさがうれしく、同時に重い課題も忘れることなく抱えたまま、劇場をあとにした。

淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について

淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について

カムヰヤッセン

ワテラスコモンホール(東京都)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

誰も観たことのない犬の鳴き声。困窮しつつ借金のない暮らし。要介護度の軽さ。

そういういくつかの違和感と3人の刑事の取り調べの様子が、本当は何があったのか、ということへの興味をそらさず、それが解かれていく時間の生々しい痛みだけでなく、物語としての(こう言ってよければ)面白さ感じさせた。

ナイフで人を殺すより、借金を重ねて踏み倒す方が容易だろう、という意味のことを一人の刑事が言った。

それができなかった母と息子の繊細なやり取りを、3人が交互に語る終盤の場面。痛みと優しさが胸にしみた。

どうしようもない現実。それでも、その淵を渡らずに済むためには……。

答えを出すのではなく、あなたもそして私自身もそれぞれに立ち止まり引き返せますように、という祈りのような何か。

身につまされる、などという安易な共感ではなく、もう少し丁寧に考えてみたい気がする舞台であった。

残花―1945 さくら隊 園井恵子―

残花―1945 さくら隊 園井恵子―

特定非営利活動法人 いわてアートサポートセンター

座・高円寺1(東京都)

2016/06/01 (水) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/06/03 (金)

重い題材を、丁重かつ誠実に物語へと落とし込む姿に胸を打たれた。

観終わって、長い息を吐く。深呼吸というより、まるでずっと息を止めていたかのような心持だった。そういうある種の緊張感を背負いながら観る舞台だったように思う。

セーラー服を溶かさないで

セーラー服を溶かさないで

CACHU!NUTS

イズモギャラリー(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

中嶋康太さん作・演出のチャーミングな会話劇。俳優陣も魅力的で、とても楽しかった。登場人物がみなエッチで、不倫劇だけれどドロドロというより(コイツらもうホントしょうもない)と笑ってしまう。そしてしょうもないけどじんわり愛しくなる。そういう物語だった気がする。

げんない

げんない

わらび座

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/06/24 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/06/24 (金)

江戸中期の見世物小屋を舞台に、平賀源内という天才と彼を取り巻く人々が、封建時代の日本で「自由」を求める姿を描くミュージカル。

キャッチーなメロディ、ユニークなダンス、アクロバット、浄瑠璃や殺陣、さまざまな工夫と見どころを盛り込んだ贅沢な舞台。

中でも主人公の源内が語る言葉が、時代を見通し、未来を夢見、進もうとする意志を伝えて、この舞台を希望の物語として観る者に印象付けた。

郵便屋さんちょっと2016

郵便屋さんちょっと2016

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

つかこうへい氏の複数の初期戯曲をもとに、横内謙介氏が脚本を書き、劇団員の個性を生かして演出した熱い舞台。

つか作品らしい理不尽さや強引さや屈折、あるいはえげつなささえもがっつりと見せながら、主人公のセンジロウはどこまでも明るくポジティブである。

つか芝居のレトリックと同時に、そのポジティブさが物語を牽引する。

なるほど、これはつかこうへい氏へのリスペクトであり、そして同時に劇団としての扉座らしさを詰め込んだ作品なのだと思った。

恐怖時代

恐怖時代

花組芝居

ザ・スズナリ(東京都)

2016/07/06 (水) ~ 2016/07/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/07/08 (金)

凄惨な悲劇を、様式美と遊び心で夏の夜にふさわしい美しい舞台に仕立てた。

浴衣姿でメイクもなし、舞台も蚊帳をひとつ吊っただけのほぼ素舞台。そういうシンプルな道具立だからこそ、キャスト陣が観せる大人の余裕と艶やかさが際立ったのだろう。

泉鏡花の夜叉ケ池

泉鏡花の夜叉ケ池

花組芝居

青山円形劇場(東京都)

2009/01/12 (月) ~ 2009/01/22 (木)公演終了

満足度★★★★★

人ならざるモノたちの祝祭
マチネで那河岸屋(なにがしや)組、ソワレで武蔵屋組を観劇。(主人公の萩原晃を演じる役者さんの屋号で、チーム分けしてあるのだ)

那河岸屋では、ぽっちゃりしたお茶目な学円と華奢で可憐な百合、そしてワイルドな晃という組み合わせ。何より加納さんの演じる白雪のワガママで情熱的なお姫様が、いいようもなく美しい。

武蔵屋組は、凛々しい学円と清楚で妖艶な百合、そして頼もしい晃という組み合わせ。 山下さんの白雪は、蛇とも鬼とも言われる夜叉ヶ池の主の猛々しい外観から滲み出る恋心がせつない。

白雪の眷属たちの衣装や動きのポップさが素敵だった。ずっと前に観たリンゼイケンプカンパニーを思い出させる、人ではない妖しいモノたちの祝祭という風情が印象的だった。

客を舞台に乗せたり、客席に歌詞カードを配って歌わせたりと、観ているものに一体感を感じさせる演出が楽しかった。

ミュージカル「アトム」

ミュージカル「アトム」

わらび座

新宿文化センター(東京都)

2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

観てよかった……!
誰もが知っている鉄腕アトムをひとつの象徴として、ウエストサイドストーリーばりの対立と愛の物語を、歌とダンスで描いたミュージカル。

横内謙介氏のハートウォーミングなストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫る素敵な作品となっていたと思う。

アズリを演じた三重野葵さんと神楽坂役の椿千代さんの静かな中に強さを感じさせる演技、そして圧倒的な歌唱力が印象に残った。

アンネの日

アンネの日

風琴工房

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2017/09/08 (金) ~ 2017/09/18 (月)公演終了

満足度★★★★★

舞台の上に8人の女性。それぞれの初潮の思い出を語っていくオープニング。

生理用品開発に携わるチームの奮闘を通して描かれるそれぞれの人生と、研究の苦労やマーケティングや環境問題まで含めた幅広い問題提起と。膨大な量の情報を、観る者の気持ちをそらさず見せる手腕もさすがだった。

オープニングで語られた思い出が、そのあとの物語に投影されていく構成が気持ちいい。最初に提示された疑問が物語の中で解決されていく様子も本当に面白かった。

観終わって、ああ、元気出た!!と思った。

登場人物がみんな愛しいし、それを演じるキャストがホント素敵だった。

弱さも迷いも、それぞれの真実の中で美しい。それはたぶん彼女たちが前を向いて生きているからだ。

ああ、女に生まれてよかったと、ごく当たり前に思った。いや、もちろん男性がご覧になっても面白い芝居だったはずだけれど。

女でも男でも、それぞれが生きていくことをまるごと愛せるような、そういう舞台だったように思う。

勧進帳

勧進帳

木ノ下歌舞伎

まつもと市民芸術館 小ホール(長野県)

2016/07/14 (木) ~ 2016/07/16 (土)公演終了

満足度★★★★★

細長いステージは、ポスターの写真同様、道を表しているのだろう。関を守る側、越えようとする側。それぞれの思惑を追いつつ、物語は進む。ラップなども使ったスピーディな展開に、すり足のような和物の所作が混じる独特の雰囲気。

弁慶と富樫の命を賭けたやり取りの緊張感と疾走感、そして、越えられぬ境界を見据える哀切さをスタイリッシュに描いていた。

そこで見せるいくつかの関係が興味深い。弁慶と富樫の丁々発止のやり取り。主を守るために主を叱咤する弁慶の胸のうち。直接には目線を合わせることもない義経と富樫のある種の共感。

義経を演じた高山市のえみさんの、静かな覚悟を感じさせる凜とした美しさと、冨樫役の坂口涼太郎さんの胸のうちをうかがわせる微かな笑みが、それぞれ切なく印象に残った。

Le Fils 息子

Le Fils 息子

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2021/08/30 (月) ~ 2021/09/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

それぞれが葛藤し悩む中、愛情を抱きながらもすれ違っていく。ヒリヒリするような展開を息を呑むように見守った。戯曲も演出もキャストもハイレベルで完成度の高い舞台だった。

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