Father Christmas, Don’t Cry ~2008 下北Ver.~
しゅうくりー夢
駅前劇場(東京都)
2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
8月のクリスマス?
悲しいからじゃなく、愛しいから泣けてくることもあるんだ……と、この舞台を観て知りました。
笑いあり、涙ありの2時間15分。ちょっと照れくさい言葉でも言ってみたいような、人恋しい気持ちになりました。
肥後系 新水色獅子
あやめ十八番
小劇場B1(東京都)
2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
嘘と真実
複数の時間軸を行き来しながら描く、どうしようもない男の嘘と真実。
女子高演劇部の人間関係や劇中劇で描かれる戦時中の描写、神社で自死した高校教師を取材する女など、どの場面も繊細かつ鮮やかで、登場人物それぞれの想いが愛おしい。
現実と虚構のあわいにある、ほの暗い空間。
そいういう雰囲気が心地よくて、いつまでもそこにとどまっていたい、と思ってしまう。
もしもいま、好きな劇団や好みの作り手の公演がすべて同じ日に重なったとしたら、選ぶのはこのユニットかもしれない。
若々しさと老成した雰囲気。儚さとしたたかさ。そして、嘘と真実。この小さなユニットが、これからどこへ向かうのか、本当に楽しみだ。
藪原検校(やぶはらけんぎょう)
こまつ座
世田谷パブリックシアター(東京都)
2015/02/23 (月) ~ 2015/03/20 (金)公演終了
満足度★★★★★
人間ってヤツは……
陽気なふてぶてしさと哀切さが同居する主人公の印象、劇中で語られる早物語の完成度、時代の風俗も織り込んだ物語の面白さなど多くの見どころがあったが、それ以上に、人間というモノのおろかさやみにくさ、あるいは業(ごう)とでもいうしかない何かが感じられて、何度も冷たいものが背筋を上っていくような気がした。
セーラー服を溶かさないで
CACHU!NUTS
イズモギャラリー(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
中嶋康太さん作・演出のチャーミングな会話劇。俳優陣も魅力的で、とても楽しかった。登場人物がみなエッチで、不倫劇だけれどドロドロというより(コイツらもうホントしょうもない)と笑ってしまう。そしてしょうもないけどじんわり愛しくなる。そういう物語だった気がする。
ミュージカル「北斎マンガ」
わらび座
菊川文化会館アエル(静岡県)
2021/06/27 (日) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ただひたすらに絵を描き続けた葛飾北斎の半生を、2度目の妻おことや娘お栄、滝沢馬琴らとの関係を軸に描くミュージカル。ポップな歌とダンスに加えてラップやお笑いなどさまざまな仕掛けと工夫の凝らされたステージから、時代を飛び越えて躍動する人々の情熱が観る者の胸に響く。
マキノノゾミさんによる戯曲と演出は、多くの笑いと切実な想いを丁重に描いて幅広い世代が楽しめる作品を生み出していた。時代モノらしからぬカラフルで個性的な衣装やヘアメイク、北斎の絵を大胆に取り入れた美術や工夫の凝らされた小道具等が物語と登場人物の魅力を増した。
ミュージカル「アトム」
わらび座
新宿文化センター(東京都)
2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
観てよかった……!
誰もが知っている鉄腕アトムをひとつの象徴として、ウエストサイドストーリーばりの対立と愛の物語を、歌とダンスで描いたミュージカル。
横内謙介氏のハートウォーミングなストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫る素敵な作品となっていたと思う。
アズリを演じた三重野葵さんと神楽坂役の椿千代さんの静かな中に強さを感じさせる演技、そして圧倒的な歌唱力が印象に残った。
NOT BAD HOLIDAY
劇団競泳水着
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/05/19 (火) ~ 2009/05/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
思いがしみとおる。
競泳水着を初めて観たのは、前作の「プリンで乾杯」だった。そのときにも、構成の緻密さや展開の巧みさ、登場人物へのあたたかい目線などにたいへん好感を持った記憶がある。
しかし、この「NOT BAD HOLIDAY」は、それ以上に好きな作品となった。
若者たちの恋や夢、仕事や挫折、そういうものを描きながら、中心にひとつの家族を置いたことで、彼らのこれまで過ごしてきた時間や出会ってきた人々までも感じさせるような、そういう奥行きが感じられる気がした。
時間や場所を巧みに行き来して積み上げられていく場面が、しだいに気持ちよくひとつの流れになる。
トレンディドラマというより、生きた人間のささやかな悩みや思いがけないトラブル、誰かを思う気持ちなどが、水がしみこむように自然に心に入り込んでくる、そういう芝居だった。
再生ミセスフィクションズ
Mrs.fictions
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
珠玉!
『伯爵のおるすばん』以来1年数ヶ月ぶりのMrs.fictions単独公演は「再演とかしない村」出身の彼らが禁を犯して挑んだ(!?)再演作品集でした。
それぞれ趣向を凝らした(作・演出・キャストすべて初演通りだったり、外部演出家を起用したり、別メンバーの戯曲のリメイクだったり)ラインナップに加えて、インパクトの強い怪人ビジュアルのチラシや怪人カードみたいなチケット、予約者全員に公演DVDプレゼントなど、いろいろと面白い試みもあり、企画力の確かさを感じました。
かねてから評価の高い『東京へつれてって』や『お父さんは若年性健忘症』の安定感はもちろん、登場人物のチャーミングさが印象的な『ねじ式』、奇妙な味わいでじわじわとしみてくる『まだ僕を寝かさない』など、まさに珠玉の作品集だったと思います。
ジョン マイ ラブ ージョン万次郎と鉄の7年ー
坊っちゃん劇場
坊っちゃん劇場(愛媛県)
2021/09/02 (木) ~ 2021/10/02 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この舞台では、万次郎が漂流やアメリカでの生活を経て帰国した後の日本での様子を妻となった鉄と出会いや周囲の人々との交流を軸に描いていく。ヒロインの鉄をAKB48のメンバーが交代で演じ、歌やダンスで賑やかに綴りながら、新しい価値観を日本に根付かせようとした男の意思が胸に響く物語となっていた。
おてんばで縁談など見向きもしない鉄が、因習や偏見にとらわれない万次郎の明るい強さに心を動かされていく様子が瑞々しい。早くに母を亡くした鉄を慈しみ守ろうとする女中おクニの愛情とエネルギー、誠実さと温かさを滲ませる鉄の父、万次郎を引き立てようとした江川様の未来を見据える眼差し。そして地元の期待を背負って万次郎の私塾で学ぶ若者たちや下男となる竹蔵、英語の指導を懇願する福沢ら、万次郎のもとに集った若者たち。鉄の幼馴染 菊野の前半と後半での変化。攘夷論に染まって万次郎を敵視する鷹之丞まで含め、激動の時代に国の未来を思う真摯な若さを感じさせた。変わりゆく時代を象徴するのが、いくつもの言葉であった。民主主義・自由・平等、そして愛。万次郎がアメリカで学んできたのは英語や航海術ばかりではなかった。まだ日本には言葉すらなかったそれらの概念を若者たちに熱く語って聞かせる彼の姿には、鉄でなくても惹かれてしまうだろう。テンポの良い物語を軽快な楽曲やチャーミングなダンスで彩り、エンディングではペンライトが振られる舞台。けれどその核にあるのは激増の時代の片隅で生きた人々の息遣いと骨太なメッセージだった。
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】
壱劇屋
王子小劇場(東京都)
2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
濃密な90分
四面舞台で描かれる奇妙な脱出劇は、身体表現・緊張感・笑い・カタルシス、そして、静かな感謝などに彩られた期待を裏切らない濃密な90分だった。
パフォーマンスと物語の結合が心地よく、観終わって充足感を感じながら劇場をあとにした。
やみつきになりそうな劇団だった。
審判
藤波瞬平一人芝居
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
集中と緊張
2年ほど前に別な方が演じたのを観て衝撃を受け、戯曲を探して読んだ。
それを、藤波さんが演じる。劇団しゅうくりー夢への客演で初めて彼の芝居を観たのは、もう何年前になるだろう。加藤健一事務所の研究生だった彼がこの『審判』を演じるのだと思うと、観る前から期待が高まっていた。
安易に人を誘うには重過ぎる内容だけれど、あえて友人と一緒に観た。
スゴかった。
閉ざされた空間で裁く者と裁かれる者が向き合う。息を吐く音や身じろぎする椅子の軋みさえ響いてしまいそうな緊迫感。
生と死、人間の尊厳、正気と狂気とか。
ヒリヒリするような集中と緊張の2時間15分。土曜のマチネを観たのだけれど、その日も翌日も2公演なのだと思うと何だか胸が痛むような気がした。
独り芝居『審判』
多田直人案
吉祥寺シアター(東京都)
2014/01/15 (水) ~ 2014/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
名作……
言語に絶する体験を語り続ける1人の男。
ときに激し、ときに涙ぐみ、ときに冷笑し、しかし、揺れ動きながらも務めて平静かつ理性的であろうとする。
久しく感じたことのない緊張感と集中力。
張り詰めた空気が会場中を支配し、200人近い観客が、眼をそらすことも身じろぎさえできずに、
ただただ息をひそめて1人の男の言葉を受けとめ続けた2時間15分。
壮絶な内容以上に、それを語る男の意志と、演じる役者の覚悟に圧倒された。
無頼茫々
風琴工房
ザ・スズナリ(東京都)
2015/09/12 (土) ~ 2015/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
背筋を伸ばす
大正デモクラシーという言葉に象徴されるような民主主義や自由を求める動きがある一方で、米騒動に対する報道規制など、きな臭くなっていく時代と、そこに生きる人々の思いを描く群像劇。
報道の自由。新聞の使命。そして、受け取る側の責任と権利。報道とは何か、新聞とは何か、という問いかけが何度も繰り返されるけれど、それはある意味、自由や平等という言葉へとつながっていく。
自由も平等も、当たり前にそこにあるものでなく、意識して勝ち取り、あるいは守らなくてはならないものだと。
それを示すように劇中の人々が見せる誠実さや情熱が胸に迫る。
堂海や村嶋らが、抑圧に対して彼ららしい戦い方を見せようとする場面では、思わず目頭が熱くなった。
周囲一面に新聞を張り巡らせた美術。そこにかけられた、劇中でキーとなる言葉の書かれたいくつかの札。物語の最後に、秋川が「大正デモクラシー」という札を、客席に向けて掛け直す。
昨今の状況をも思い起こさせる骨太なテーマ性と観る者の目を惹きつけるエンターテイメント性を兼ね備えた完成度の高い舞台だった。
登場する人々の、それぞれのなすべきことに向き合おうとする真摯さに、今の自分を省みて思わず背筋を伸ばした。
泉鏡花の夜叉ケ池
花組芝居
青山円形劇場(東京都)
2009/01/12 (月) ~ 2009/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★★
人ならざるモノたちの祝祭
マチネで那河岸屋(なにがしや)組、ソワレで武蔵屋組を観劇。(主人公の萩原晃を演じる役者さんの屋号で、チーム分けしてあるのだ)
那河岸屋では、ぽっちゃりしたお茶目な学円と華奢で可憐な百合、そしてワイルドな晃という組み合わせ。何より加納さんの演じる白雪のワガママで情熱的なお姫様が、いいようもなく美しい。
武蔵屋組は、凛々しい学円と清楚で妖艶な百合、そして頼もしい晃という組み合わせ。 山下さんの白雪は、蛇とも鬼とも言われる夜叉ヶ池の主の猛々しい外観から滲み出る恋心がせつない。
白雪の眷属たちの衣装や動きのポップさが素敵だった。ずっと前に観たリンゼイケンプカンパニーを思い出させる、人ではない妖しいモノたちの祝祭という風情が印象的だった。
客を舞台に乗せたり、客席に歌詞カードを配って歌わせたりと、観ているものに一体感を感じさせる演出が楽しかった。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
早くから予約して楽しみにしていたが、その期待をしっかり上回った。仕掛けの詰まった戯曲。二階席にも伝わる人々の熱量と技量。終盤、数々の伏線が繋がる快感にも増して、その人が伝えようとした言葉に胸を打たれた。
橋爪功さん、高橋一生さん、白石加代子さんがほぼ出ずっぱりって、もうそれだけで自分好み。加えて野田さんご自身が走り回りしゃべり倒す。俳優陣のご活躍だけでも観た甲斐があった。
彼の地
北九州芸術劇場
あうるすぽっと(東京都)
2016/02/12 (金) ~ 2016/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
居場所
ひとつの街で、何組かの人々の間で起こる出来事を描いたいくつもの物語が、繋がったり繋がらなかったりしながら進んでいく群像劇。
それぞれの場面で人々が見せる切実さや、シチュエーションや人々の関係が絶妙で、誰もが結局は居場所を求めるのだ、と思えて切ない。
どこにいてもいいのだと、ただ生きてさえいてくれれば、君の好きな場所で生きていけばいいのだと、最後にそういう言葉が登場人物だけでなく観る者の胸にも小さな灯をともすように感じられた。
マクベス
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2015/07/12 (日) ~ 2015/08/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
ほぼひとり芝居のマクベス
精神病院という枠組み。そこでマクベスを演じ始めるひとりの男。
これまでに何度も観ているはずの『マクベス』が、まったく別の緊張感と切実さを感じさせる舞台となっていた。
こういう演出ができるんだなぁ、芝居ってホント面白いな、そんなことを思うと同時に、二十数人の登場人物(とその膨大な台詞)を演じきった佐々木蔵之介さんの熱演が印象に残った。
怪奇探偵丑三進ノ助 ~推して参る!~
しゅうくりー夢
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2009/02/05 (木) ~ 2009/02/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
満足満足
今回の公演は、連日完売で追加公演も決まったという。その勢いもうなずける、見応えのある作品だった。
ハラハラドキドキするストーリー展開やカッコいいアクション、そしてせつない思い……。
人気のあったシリーズの続編だけれど、初めてご覧になる方でも問題なく楽しめる内容になっている。もちろん、以前の「大正探偵怪奇譚」をご覧になっていれば、「あ、あのセリフは!」とか、「あれ?この曲……」とか、けっこうピンと来る場面も多くて、ますます楽しめるだろう。
2月9日18:00~の追加公演については、まだチケットがあるようなので、気になった方はぜひ!!
恋人としては無理(JAPAN TOUR)
柿喰う客
STスポット(神奈川県)
2009/03/05 (木) ~ 2009/03/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
これも愛
初演をご覧になった方の感想などから、スピーディでハイテンションな芝居なのだろうと思っていたら。
冒頭のスピード感や小ネタの応酬に目を奪われているうちに、ふと気がつくと、疾走感の中に透き通った切なさが加わっていて。
弟子たちの過去が語られる辺りやイエスの処刑後の弟子たちの様子に、愛することや信じることへの悲しみが感じられてきたり。
これはたぶん、ある種のラブストーリーだったのだろう、きっと。
観終わった後、そんなふうに思った。
天邪鬼
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2015/09/16 (水) ~ 2015/09/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
濃密な時間
ひと目でウソだとわかる虚構らしい虚構。独特のリズムで放たれるマシンガンのようなセリフ。身体性の高いステージング。
象徴性の高い物語にどっぷりひたる、たった90分とは思えない濃密な時間だった。