kikiが投票した舞台芸術アワード!

2020年度 1-10位と総評
10knocks~その扉を叩き続けろ~

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10knocks~その扉を叩き続けろ~

劇団扉座

10作品日替りリーディングのうち4作品を拝見。公演が始まってから、これがどんなに大変なことかようやくわかった気がした。毎日が初日で千秋楽。単に台本を持ち替えれば済むという内容ではない。朗読という枠組に留まらない多彩な演出で、劇団員やゆかりのゲストが入れ替り立ち替り濃密な芝居を繰り広げる。何より脚本の良さが際立ち、物語の面白さを存分に味わえた。

江戸系 宵蛍

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江戸系 宵蛍

あやめ十八番

幻の2020オリンピックと昭和39年のオリンピックをつなぐ怒涛の物語に引き込まれ、巧みなミザンスから目が離せない。政治的な題材の現代劇でさえ古典のエレガンスが香る、あやめ十八番らしさを堪能した。
客席で、楽隊の演奏が振動となって身体に伝わり、人々の足取りが床を震わすのを感じる。生の舞台の醍醐味に(観にきてよかった)と心から思った。
2度目観たときには、終演のアナウンスをかき消すように拍手が鳴り続けた。上手から飛び出してきた主宰が楽隊とキャストを手招きする。立ち位置を確認するように登場した人々がもう一度客席に向き合うと、一際大きな喝采が響いて会場内の温度が微かに上がった。

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

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天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

東宝

シェイクスピアの台詞を縦横無尽に織り込んだ戯曲の面白さは重々承知していたけれど、それ以上に大劇場を満たす祝祭感に圧倒された。鮮やかな色彩と音楽、そして何よりたくさんの言葉が人間の業や愚かさとともに生きるエネルギーを描き出した。

BLACK OUT

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BLACK OUT

東京夜光

ネット上の感想に惹かれて観に行った。
商業演劇の演出助手をしつつ個人ユニットの主宰もしている主人公の葛藤とコロナ禍に翻弄された公演に携わる人々を描く私小説的(?)演劇。ステージの上に新しい物語を紡ごうとする人々の奮闘と誠実が胸に残った。

雉はじめて鳴く

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雉はじめて鳴く

劇団俳優座

チラシの文面や写真からの漠然とした(メロドラマチックな)予想などかすりもしない切実な内容に惹きつけられた約2時間。戯曲・演出・キャストそれぞれの確かさが美しく実を結んだ、見応えのある舞台だった。
登場人物にリアリティがあって、いろんな場面で身につまされた。なかでも健の母親を演じた清水直子さんの演技は凄まじかった。
老舗劇団らしい骨太さと細やかで組み上げた誠実な舞台。よいものを見せていただいた、と思う。

謁見

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謁見

やみ・あがりシアター

1公演につき観客8名限定とし、架空の国の女王への謁見という劇中の設定がそのまま感染症対策となる仕掛けにまず興味をそそられたが、観ているうちに物語や設定、そして登場人物たちの想いに引き込まれた。

ある国の女王が抽選で選ばれた国民1人と毎日謁見することとなり、職業も経歴もさまざまな相手と女王との会話を描くうちに、国の情勢や女王の人柄、評判、置かれた立場などが見えてくる。
そして描かれる思いがけない結末。
伏線も寓意もたっぷりの物語にひたる約80分、しっかり楽しませていただいた。

風吹く街の短篇集 第二章

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風吹く街の短篇集 第二章

グッドディスタンス

ある家族の重ねてきた年月を、18年ぶりに会う兄と弟のやり取りで綴っていくオトナの会話劇。クスッと笑ったりじんわりしたり、気がつけばあっという間の約50分。脚本も演出も確かな手腕で、2人のキャストの魅力を引き出していた。

カストリ・エレジー

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カストリ・エレジー

ゼータクチク&ACTACTION by TEAM HANDY

途中でアッと思った。そうか、『二十日鼠と人間』がベースになってるんだ。
そう気づいてもヒリヒリするような緊張感は微塵も緩まない。抗えない運命のようにラストの一点に向かって行く人々の息遣いまで聴こえる。
あの空間であの芝居、贅沢が過ぎる。座席の位置を変えてもう一度観たかった。

ののじにさすってごらん

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ののじにさすってごらん

やしゃご

近年個人的に赤丸急上昇の見逃せないユニット。作・演出の伊藤氏の1人ユニットだけど常連の俳優陣もめちゃ好みで、ここ数年楽しみにしている。
今回も、なんていうか痛いくらい切実な日常を描いて胸にしみる。細やかな生活感が今のリアルを映し出していた。

音楽劇 獅子吼

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音楽劇 獅子吼

オールスタッフ

戦時下の動物園。老いた獅子と元飼育係の若者。
戦争という理不尽の中で、動物も軍人もそれぞれの矜持と愛情を試される。
浅田次郎の短編小説を音楽劇にした脚本と演出の手腕、少数先鋭のキャスト陣も見事。
特に、生演奏のお二人とコロスのお三方の確かな技術と表現力が物語に深みを加えた。

総評

新型感染症の影響で、多くの舞台が中止や延期となった。上演できた作品も、これまでにはなかった葛藤や苦労をされたはずだ。

そんな中で幸いにも拝見できた舞台はリピートを含め61本、作品数でいうと54本となった。

その中から、評価というより好みで選んだ10本。

ことに『10knocks』を含めた扉座の、この状況下でできることを模索しつつの活動が印象に残った。

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