カツの観てきた!クチコミ一覧

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『ROMEO & JULIET』

『ROMEO & JULIET』

東京デスロック

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)

2009/10/24 (土) ~ 2009/10/28 (水)公演終了

満足度★★★

JAPAN ver
CONTEMPORARY SERIESの第1弾としての『ROMEO & JULIET』JAPAN Ver。
まだKOREA Verを見てないので、こちらだけ。

CONTEMPORARY SERIESと言ったものの位置付けがイマイチ良くわからない。
アフタートークを聞いても良くわからなかったです。
多田氏自身もまだ掴みかねているようにうかがえました。

昨年の「大恋愛」およびKOREA Verとは全く異なるJAPAN Ver。
見た印象としては、個人的にはデスロックの「リア王」と同じ印象でした。

「大恋愛」に熱狂した身としては、凡庸なできという印象の約1時間40分。

ネタバレBOX

入場するとスクリーンに「WELCOME」の文字。
最近の東京デスロックを見た人ならおなじみの様子です。

舞台は昨年の「大恋愛」でも舞台に使った赤い革張りのキューブ状のものをハートを模して並べてます。

Act1 TEXT。
そのまま、音楽と文字だけでロミオとジュリエットの全てを見せます。
あらすじだけでなく、ロミオとジュリエットが生み出されたシェークスピアの時代から日本に入ってきて、という背景も。
そこまではかかってる曲は大音量のクイーン。
そして現代。
ここではPerfumeに合わせてあらすじが全て語られます。
まあ最初に話のあらすじから結末までを説明するのはデスロックでは珍しい事ではないのでそのまま受け止める。

Act2 HUMAN。
ここでやっと役者が舞台に出てきます。
皆そろって白い服。
一列に並んでしばらく客席を見渡した後、ひとりずつ語り始めます。
語るのは自分の身の上の恋愛話(アフタートークで台本があるとは言ってましたが)。
ひとりひとりが恋愛話をしていったあと、最後に残った女性が「私はキャピレット・ジュリエットです」と語りだす。
他の人は身の上話をしていたけど、このジュリエットも自分の身の上話としてジュリエットの視点から見た「ロミオとジュリエット」の話をします。
あらすじ全てを話します。
最後には自分が死んだ事まで笑顔で話します。

そこから役者全員が目隠しをします。

Act3 TEXT&HUMAN。
ここでは目隠しをした役者がウロウロと舞台上を彷徨いつつロミオとジュリエットのセリフを言います。
やがて役者はひとりを残して舞台上から姿を消し、そのひとりも居なくなったかと思うと別の一人が入ってきて、舞台上でブリッジしつつジュリエットのセリフを言います。
このときスクリーンの「ROMEO & JULIET」の文字が上下逆さになるところが面白い!

やがてスクリーンにはキラリ☆ふじみ館内を彷徨うロミオを捉えた映像が流れます。
実況中継で、館内を目隠しのまま彷徨うロミオが毒薬を手に入れる(自販機で缶コーヒーを購入)。
そのまま場内へ入ってきて、毒(缶コーヒー)を飲んで息絶えます。

そこにビデオカメラを持った別の女性が現れる。
彼女もジュリエット。
スクリーンにはそのカメラが捉える映像が映ります。
息絶えたロミオの姿。
やがてジュリエットも息絶えます。

そこで他の役者たちも皆出てきて、舞台を四方から囲んで、中に入ってきてやはり目隠しをして舞台上でウロウロとしつつ銘々に言葉を口走ります。
音楽が大きくてよく聞こえなかったけど、Act2 HUMANの時の恋愛話を繰り返している様子。

そのまま終わり。


うーん。。。
色々とアイデアを盛り込みつつ、繰り返しを使ったりあの手この手で構成されているのですが、何かが足りないんです。
これは「リア王」の時も感じた事ですが、色々と試そうとして逆に拡散してしまっている印象。
「リア王」のアフタートークで岩井秀人さんが「大恋愛」や「LOVE」で感じたものが感じられなかったと言ってましたが、同じ印象。
役者が一体となってひとつのものを表現する、というのを演出するのが多田氏の真骨頂だと思います。
それがアイデアに流れて構成してゆくとこうなってしまうのか。

舞台上にうまく熱量を生み出せていないように感じました。

KOREA Verは期待してます。
生きてるものか【新作】

生きてるものか【新作】

五反田団

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/10/17 (土) ~ 2009/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

こりゃ傑作!
再演の「生きてるものはいないのか」はまだ見てないので先にこちらを鑑劇しました。
初演の「生きてるものはいないのか」を見てるからいきなり「生きてるものか」でも全然違和感なかったけど、絶対に先にもう一方を見ていたほうが良いです。
こちらの方が構造的に難解。
でもそれを逆手に取った傑作!

舞台は黒いピカピカ光る素材で作られた段差の浅いひな壇3段で構成されていて、シンプルだけど素敵です。
暗転をあまり使わないからあまり触れられないけど、五反田団は地味に照明が良いです。
主張しすぎない照明の使い方がうまい。

ネタバレBOX

最初、死体がゴロゴロと転がったところから始まって、逆再生でどんどん人が生き返っていくという「生きてるものはいないのか」のリバース。
このギミックだけでもうこの作品は面白い!
けど、やはりベースとして「生きてるものはいないのか」ありきの作品ではあると思うので、やはりこちらが後の観劇の方が良いと思います。

「生きてるものか」はラストから始まるので、どんなギミックなのかは少し見ていると理解できてくるのですが、どんどん遡ってゆくだけでなんでこんなに面白いんだろう。
死体と言っても呼吸してお腹が動いてたり、長時間横たわるので最初は皆明らかに不自然な横になってて楽な姿勢で横たわってたり、逆に後ろに歩いてゆくのも「後ろに向かって歩いてます」感じがそのまま出てたり、途中役者が思わず笑ってしまったり。
五反田団のカッチリしすぎない、悪く言えばチープとも言える演出が逆に売りなのは相変わらずで楽しいです。

オーディションで選んだ役者さんたちが魅力的で、この魅力を活かしつつ、ただ死んでた人たちの死ぬ前を逆再生してゆくだけで大きな筋も無い話をこれだけ魅力的にしていたと思います。
前田司郎さんもかなり重要な役で出てきますが、これと大原を演じた枡野浩一さんの絡みがおかしすぎでした!
前田さんがこのパンデミックの首謀者なのか、と臭わせおきながら、ああいう激安なオチというかネタバレに持っていくところはさすがです。
漬物の研究だったのですね。
「これからの日本の漬物は、大原さんの漬物か、大原さんの漬物以外かとなるでしょう」とか。スケール大きいんだけど、おかしすぎ。

細かいくすぐり満載で、最初のこの舞台の構造を提示するところ以降は終始クスクス笑い続けて、という観劇となりました。
いかにも五反田団らしい舞台で嬉しくなってしまいました。

母親の存在が面白すぎ。死ぬ前の動きとか、覗き見してるところに逆再生で戻ってゆくところとか。
藤堂演じる野津あおいさんが魅力的。でも素で笑ってたりする力の抜け具合がまた良くて。
こごみ演じる島田桃依さんも五反田団に合った脱力ぶりが良かったです。
モロトフカクテル【公演終了、次回公演は来年4月@楽園】

モロトフカクテル【公演終了、次回公演は来年4月@楽園】

タカハ劇団

座・高円寺1(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★

感情渦巻く
座・高円寺、はじめて行きました。
立派過ぎるほど立派。
ロビーが広いです。客席も傾斜が結構あるのでどこから見ても見やすそう。

で、前評判が高いこの公演、期待に胸膨らませ、見に行ってきました。

ネタバレBOX

簡単に言えば60年代の学生運動と現代の学生を重ね、そこにかつての運動の真っ只中にいたひとを出してくるという構成。

学生運動は映画や知識としてしか知らないのだけど、とても興味のあるテーマではあります。
でも、当時の学生運動そのものではなくて、現代に重ねるところがちょっと違和感。

大学で活動の拠点としていた部屋を取上げられることに対して運動をはじめるところがちょっとスケールが小さいというか。。。
当時の交換日記を話のバックに持ってきて、「モロトフカクテル」という人物をあぶりだすのは良かったです。

どうせ描くなら当時だけを舞台にして描いた方が好きと言うか、当時を振り返る形でもよいのだけど、今の学生に運動をさせるのはちょっと違和感強くて入り込めなかったです。

でも、様々な感情が渦巻く舞台は役者の演技も熱く、見ごたえありました。
わが星

わが星

ままごと

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/10/08 (木) ~ 2009/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

感覚に浸る演劇
柴幸男氏は、今の若手の演出家・劇作家の中でぬきんでた存在である事は確かだと思います。
演劇という枠にとらわれず、ヒップホップや様々な影響を惜しみなく作品に投入し、出演者たちとそれらを消化しつつひとつのスタイルを作り上げるところが他の演出家と違うところでしょう。
演出家はまず「戯曲ありき」で、戯曲の中から自分の舞台をどう組立てるかが仕事となっているけど、それらから全く自由な柴幸男さんの作風が独特なのは理解できます。

そんな新しい演劇の形の更に進化した姿を目撃する事ができた事が、自分にとって幸せでした。

ネタバレBOX

最初に劇場に足を踏み入れた時からその作品世界は始まっています。
今回も三鷹の自由に組替え可能な劇場の特性を使って、あえて黒の素舞台を作り出しています。
そして、客席はそれらを囲むように円形に配置されています。
どこから見ても見やすい親切な作りですね。
作るのは大変だっただろうけど。。。

前説明から独特の世界観が始まっていて、「あと10秒ではじまります」「途中4秒の休憩があり」とか、不思議な感覚。

舞台は最初暗転のまま、大きなステージの4方の端に散らばった役者たちの言葉の連続から始まります。
ここでシアタートラムの「ハイパーリンくん」を思い出しました。

その後明転してからは、役者さんたちが同じ感覚、同じリズムで真ん中の白い円の周りを同じ方向に回りつつ言葉を発します。
それは決して会話になっているわけでもなく、単語が飛び交うという感じ。
でも、それがリズムに合わせて繰り返されるというだけで、中毒性ないつまでも見ていたいと感じさせるものが生まれます。

100秒(でもない)で語った星の一生を、今度は80分に縮めて(?)上演します。
そこでは46億10歳の「ちーちゃん」とその家族が団地で生活しつつ、その一生をままごととして見せていきます。
「ちーちゃん」は当然地球の事で、地球が小さな女の子、という解釈もとても面白いです。
「つきちゃん」とのままごととは言えないような、リアルでささくれ立ったままごともおかしい!

そして、そんな地球の一生を望遠鏡で観察し、「先生」と対話をする少年。
「先生」と少年がザッピングで入れ替わったて会話が進むのだけど、このザッピングは正直なところあまり効果的ではなかったような気がしました。

後半になるとザッピングしなくなって、メガネの男性が「先生」と固定化されて、「こうそく」(光速と校則を掛けてるのもおかしい!)を超えて、地球とその世界の中に入っていきます。
そして少年もその世界に段々近づいていていって、最後の最後、「ちーちゃん」と少年は出会うのでした。

スケールの大きな話を団地の一家の生活に被せ、笑いも入れつつこれだけのものを80分間にまとめて見せてくれた柴幸男氏の才能が凝縮された作品でした。

この宇宙の長い歴史のなかで、たった数日間しか上演されなかったこの作品に出会えた幸運と奇跡を大切にしたいです。
『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

DULL-COLORED POP

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

『プルーフ/証明』
コロブチカでの舞台を見て、その緻密で繊細な戯曲と演出を知っていたので、谷賢一さんの演出と役者さんの演技に興味がありました。
コロブチカは素晴らしすぎたけど、ダルカラにはそれに並ぶかそれ以上のものが出きると期待させるだけのものがあるのでした。

そして、最初の一幕目を見ただけでもそれが戯曲の力やコロブチカ版負けていない事がわかって、2時間半の間時間を忘れて集中して見入ってしまったのでした。

ネタバレBOX

最初のキャサリンと父親のシーンからグイグイと引き込まれるのだけど、父親役の中田顕史郎氏の演技から目が離せない。
その声、表情、仕草。
全てが観客を引きつける。

だけど、もう一方の清水那保さんの存在感も圧倒的で、ほぼ素舞台に近いこの飾り気の無い空間を役者二人だけで完全に支配していた。

コロさんの繊細なキャサリンも好きだったけど、清水さんのガラスのような切れのあるキャサリンも好きです。

この戯曲はたった4人の登場人物の会話だけで2時間半を見せきってしまう。
実力のある役者の力を最大限に引き出させるのだと思う。
逆に力のない役者がやると荒が目だってダメなんだろうな。

オフブロードウェイから始まってトニー賞、ピューリッツァー賞などを受賞するに至った作品ということだけど、日本でもこれだけの戯曲を小劇場だけにとどめておくのは勿体なさすぎる。


できればこの演出・役者の組合わせで、そのままもっと大きな劇場へ持っていって上演してほしいものです。
世田谷パブリックシアターとか良いと思うけど。
ダルカラは活動休止という事だけど、皆さん演劇活動をやめるわけではないようなので、この発展的な活動休止後の活動に期待します。
世田谷カフカ 

世田谷カフカ 

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了

満足度

バラバラ
カフカの未完成の遺稿を元に作り上げたというこの舞台。

ナイロンは「わが闇」以来全て見るようにしていてどれも極上の作品を提供してくれて「外さない劇団」だと思っていたけど、今回は大外れだったのが残念です。

ネタバレBOX

若い劇団員たちとWSを繰り返して作り上げたというこの作品。
当日パンフには「わが闇」~「シャープさんフラットさん」は新劇的な作品だった、ような事を書いてあり、全く別のアプローチから作品を作ったということだけどそれが見事に失敗しています。

「カフカ」というお題を掲げてそこからWSで作り上げていったとの事だけど、小さなエピソードが積み重なりつつ、それによって大きなうねりを生み出す事が全く無かった。
単品のバラバラな小さなエピソードをただ並べてみただけにしか見えず、しかもそのひとつひとつが別に面白い訳でもない。
ひとつひとつでしっかり話がまとまっている訳でもない。
中途半端なエピソードをただつなげて放り出されているだけ。

これを3時間も見続けるにはあまり退屈で途中寝てしまったけど、だからと言って別に損した気分にもならず、むしろこの舞台を見に来てしまった事、忙しい中こんな事に3時間も費やしてしまった事を公開しました。

役者人も看板の役者は三宅さんだけで、他の劇団員さんたちは実力はあるのだろうけどさすがに魅力は届かなかった。
本多という大きな箱でやるにはまだまだ力不足な気がします。


長い暗転の間に役者が客席の階段に移動しつつ短い単語を交互に吐いてゆくシーンがあったけど、明らかに柴幸男氏の「ハイパーリンくん」のパクり演出で、しかも完成度は低く、それだけで見ていて嫌な気持ちになりました。

演劇界の大御所が若手の演出のパクりなんて、みっともないと思います。
正しい晩餐

正しい晩餐

劇26.25団

駅前劇場(東京都)

2009/09/16 (水) ~ 2009/09/21 (月)公演終了

満足度★★

海を見る
海の幸バージョンを見ました。
個人的には嫌いなバージョン違い作品の同時公演。
ひとつだけ見たのだと作品が十分に理解できないとかだと、逆に損をした気になってしまって、それならむしろ見ない方が良かったと思ってしまう。

このバージョンは話が最後まで謎をはらんだまま進んで、回収しないまま終わってしまっている感じで、良く理解できませんでした。
なので、全体の印象が良くても後味が悪い感じ・・・。

ネタバレBOX

「秘法館」が唯一の観光名所という海の近いペンションでのお話。
そこに新たな名物で観光客を増やそうと考える町の青年団。
そんなペンションに毎年「謎の生物ツルポゴ」を捕らえるために毎年訪れる4兄弟を中心に、ペンション経営の夫婦やその兄親娘の難しい関係などを織り込みつつ進む。

父親と娘の関係は舞台でも分かりやすく展開されているけど、もう少し丁寧に時間を割いて描いても良かった印象。
役者が好演だっただけに、無くても良いサイドストーリーになってしまっていて勿体なかったです。

ラジオはまあ、色物としてあんな感じで良いのかな?

で、4兄妹と謎の生物と今は無き父親の話がメインになってくるわけだけど、結局父親は何で死んだのか、とか実際にツルポゴを捕まえてからの病的な4兄妹の描写とかが説明されきってない、回収されきってないので見終わっても結局不満だけが残りました。
幕の頭に挿入される兄妹の食事シーンも効果的だったとは思えないし、思わせぶりに見せておくだけ見せておいて結局回収しきれてない。

25団は今回3回目の観劇。
前作「108」が大好きな作品だっただけに、今回は残念なデキでした。
はちみつ

はちみつ

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2009/09/23 (水) ~ 2009/09/28 (月)公演終了

満足度★★★★

愚かな働きばち
盲目な愛の話。

愛する相手からは愛をまっとうに受けられないと分かりつつも、のめり込んで自滅するはちみつ屋店員ふたり。

短い時間に良くまとまった物語で、それぞれのキャラが立っているため見ていて入り込みやすいし、主役ふたりの愚かな行動と分かっていても止められない姿が分かるような、痛いような感じで見ていて気持ちを揺さぶられるのでした。

ネタバレBOX

ニーナの憎々しい存在感とそれに利用されていると分かっていつつも入れ込んでしまう朔太郎の痛い気持ちが丁寧に描かれています。

間違って「あいたい」とメールしてしまったと言って朔太郎に会いに来させたり、先輩のために風俗で働くからサヨナラだね、と朔太郎の自宅へ来ては寝て、50万円と大事な朔太郎の撮った映画を盗んだり。
本当にひどい女だし、見ていてニーナにも朔太郎にも「いい加減目を覚ませ!」と思ってしまうのが、それだけこの舞台にひきつけられた証拠かな。

こゆび侍さんは初めてみました。
もっと分かりづらい話をやるのかと思っていたけど、思っていた以上にシンプルで分かりやすく、楽しめました。

ただ、見終わると何か物足りない感じも残る。
それが何かは自分でも良くわからないのだけど。

あれだけの事件があって、自分の才能と仲間の信頼を売ってまでして裏切られたのだから、あそこで終わらないでもう少し続きが見たかったし、もっと主人公の感情が揺さぶられて良いんじゃないかと思ったけど、そこを敢えて軽く見せているのが今の若い人の感性なのかな?
夜と森のミュンヒハウゼン【9/20千秋楽】

夜と森のミュンヒハウゼン【9/20千秋楽】

サスペンデッズ

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/09/11 (金) ~ 2009/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★

会場に入った瞬間から物語ははじまっている
会場に足を踏み入れると、星のホールを森に作り上げてしまった美術に圧倒されました。
本当に森の中にいる感じ。

ホールに入って手前側にデザインされた木が立っていて、それを抜けるとテーブルを中心とした舞台と客席が広がります。

最近星のホールは独特の空間作りをする舞台を沢山見せてくれて、本当に贅沢な空間だなあと感じます。

ネタバレBOX

最後の方に怒涛のように明かされているので、最初は単なるファンタジーのように話が進みます。

森を彷徨う女性が「自称医者」に連れられて、兄妹ふたりだけで森の中に暮らす家を訪れる。
このファンタジーさが最初受付けず、ちょっと引いてしまいました。
けど、病気の少女を演じる高畑こと美さんの初々しさと笑顔に引きつけられました。パタパタと家の中を走ると髪がフワっと流れる姿が魅力的で素敵でした。

物語はコラージュ的に時間も場所もポンポン飛んで、見ているとかなり混乱します。
でも、最後の最後に明かされる秘密によって、今までのフラストレーションが一気に、気持ちのいいくらいに解明されて、逆に今までの話がスッと消化されていきました。

10年ほど前に誘拐されてそのまま殺されて森に埋められた少女とその少女に拾われた飼い犬。そしてその森に迷い込んだ元看護師で、不倫の末病院も辞めさせられあてもなく彷徨う女性。

女性が少女を連れて森を出てゆく。森は焼けてしまう。

切ないラストにすっかり満足。
会場から出るときは自分もその森から出てゆく少女と同じ道を歩いて出てゆくという事で、会場の森がまた違った姿に見えるのも印象的。
そこまで考えて作られた素晴らしい舞台と演出だなあと思いました。

そして、無邪気で愛らしい妹を好演した高畑こと美さんの今後に注目したいです。
極めて美しいお世辞

極めて美しいお世辞

箱庭円舞曲

OFF OFFシアター(東京都)

2009/09/11 (金) ~ 2009/09/22 (火)公演終了

満足度★★★★

力強い会話
ようやく見る事ができました。
初箱庭演舞曲。

前半はキャラ設定や状況設定を紹介するのに費やす時間が長いかなあと思いましたが、中盤あたりから会話の濃厚さに目が離せませんでした。

130分と長いけど全く気にならずあっという間に過ぎた充実の観劇でした。

ネタバレBOX

中盤の失踪した店長が戻ってきてからのあたりから会話の濃厚さが際立ってました。

それぞれ自分の信じる価値観に基づいて行動するヘアカットの職人たち。

キャラが立っていて見やすいし、情熱を持って語るから感情移入してしまうし、台本もそれを具現化している役者さんたちも素晴らしかったです。
正直なところ台本はもう少しスマートにする事はできたと思うけど。

傾いている店の経営を立て直すため、店長は自分で調査したデータから「クーポン配り」と「スパ導入」に取組みます。
代表はあくまで技術とセンスにこだわり、安売りが店のブランドを落とすと反発します。

代表は技術もないのに会話と甘いマスクだけで客の氏名を取る若手から客を全て奪ってレベルの高いカットを行うけど、客は若い男性との会話を楽しみにしていたため微妙な表情を見せる事に落胆して「美しくない」と言います。

とても自然な会話が進む中で「美しくない」とつぶやくのがすごく不自然なのだけど、価値観の違いや技術だけが全てではないというこの作品のテーマを一言で表している、うまい言葉だと思いました。

最後の総代表と代表の、経営か技術かでの熱いやりとりは素晴らしかったです。
ラスト、総代表の奥さんがそれまで失敗していたけん玉を最後の最後、照明が落ちる間際に成功!
あれこそ「美しい」一瞬だったと思います。
哀愁の町に霧がほにゃらら

哀愁の町に霧がほにゃらら

spacenoid

王子小劇場(東京都)

2009/09/16 (水) ~ 2009/09/21 (月)公演終了

満足度

つらい・・・
何が面白いのかわからないまま120分間耐える鑑賞でした・・・。
自分たちの実生活の一部を切り取って作品化しているようですが、ストーリーは勿論ないですし、特に面白いエピソードがある訳でもなく、全体的に内輪ウケ的なネタで時間だけが過ぎていく感じでキツかったです。

途中で大切りが入るけど、全く面白くないしやってる自分たちと客席の身内だけがはしゃいでいるようでした。

最後の方は「どうしたら売れるのか」「売れてえ」とブツブツ言っては業界人を批判するだけで具体的に何をするというのが出てこないあたり、意識の低さがうかがえて残念です。

終演後にミニライブをやると言ってましたが、耐えられずに退席・・・。

「極み唄」

「極み唄」

LIVES(ライヴズ)

タイニイアリス(東京都)

2009/09/15 (火) ~ 2009/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★

濃厚!
LIVES初見でした。
普段の公演とは異なった、「単独ライブ」という劇団員のみで作り上げた短編オムニバス。
ラジオのDJの会話と曲を導入にしてつながれてゆく4編の濃厚な短編。
どれも緻密な構成と役者さんたちの個性が溢れていて笑いっぱなしでした!

大浜直樹氏、登守髭生氏、雑賀克郎氏のベテランたちがほとんどの話を回す役だったのだけど、せっかくの劇団員のみの公演なら若手に短編のひとつを任せても良かったんじゃないかな、とは思いました。

けど、ベテランはどの話でも中心になるだけのものを持っていて、話だけでなく役者さんにも魅せられる舞台でした。

演劇というよりはコントライブに近いですね。
でも、大好きです。

ネタバレBOX

「高校教師」
 生徒を仮定した空席のイスを相手に2人の教師が威勢よく説教をして、金八先生的な感動的な展開をした後に、2人が暴力を振るいだす。
 「おいおい、そこまではやりすぎだろ」と思ったところに後ろから今風の悪そうな生徒がひとり登場。この生徒の登場に今までの威勢をすっかり失って、リハーサル通りに事が運ばないでオタオタするのがおかしい!
 演劇の構造を逆手にとって笑いに昇華した作りに唸らされます。
 教頭役の無駄に声が良いのがツボでした。

「ジョニー」
 キャリアだけはあるベテランホストのジョニー。でも指名客は全く付かず、入ったばかりの新人にも追い抜かれる始末。そんな彼を何とかしてやろうとなだめたり説教したりの店長。
 勢いに任せてまくし立てる店長と、それを煙に巻くようなジョニーの無言ぶり、声の小ささ、そして女性っぽいしぐさや表情。
 そんな時に女性客が飛び込みで入ってきて、早速ジョニーを試す事に。

 とにかくジョニーの表情や少ない言葉から作り出される気持ち悪い雰囲気で笑わされっぱなし!
 そしてそれに振り回される店長との掛け合いがおかしくておかしくて。
 最後のオチの「自称ホストのジョニーです」が演目前のラジオの会話とリンクしていて上手いです。

「HERO」
 カラオケボックスに集う5人の不審な集団。強盗の計画をたてに集まっているらしい。しかし彼らは皆素人。ネットで集まった5人はお互いをあだ名で予防と言い出し、ストッキングを被り、怪しまれるとマズイからと店員が来たときだけ無理に歌って盛り上がってみせて。
 ストッキングを被って無理に盛り上がる不審集団。どこから見ても怪しい集団と化してどツボにはまってゆくのがおかしい!
 ストッキングを被って「HERO」を熱唱するのは反則というほどおかしくて。
 最後は結局競馬で大勝して犯罪を犯さずに終わるところも何だか愛らしくて良いです。

「あい」
 あるバー。ヤクザの兄貴分と弟分が飲んでいる横に名探偵コナンのような格好をした男性が寂しげに座っている。そしてヤクザに対して「何であなたたち見たいな人にはキレイな女性がよってくるのに私にはいないのか」と語りだす。
 「あい」とは加藤あいの「あい」で、コナン風の男性は加藤あいが好みらしい。そしてそれに似たキャバクラの「あい」という女性に入れ込んで3週間通い詰めたけど撃沈して意気消沈していた。

 最後はヤクザとコナン風男性がお互いに理解しあい、ジンワリとくるラストに心温められて終わる。笑いだけでなくて、こんな事もできるのかという幅の広さを見せる作品でした。
 個人的に好き。


 悪い人は出てこないでコント風の笑いを作り上げて、見た誰もが暖かい気分で帰る事ができる。そんな作風が今の小劇場ではなかなかみられなくて、これはこれで楽しいです。

 長編の本公演も見たくなりました。
ハッピーエンドクラッシャー

ハッピーエンドクラッシャー

ゴジゲン

シアターブラッツ(東京都)

2009/09/09 (水) ~ 2009/09/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

充実の観劇
2回目のゴジゲンでした。
前回は徹底したコメディで、ドタバタしつつも2時間全くダレるところなく楽しめたので今回も期待しての観劇。
そして、期待以上の作品に出会えました。

前作もただおかしいだけでなく、哀しみとか愚かさとかをしっかりと盛り込みつつ人間関係を丁寧に描いていたけど、今回は描かれる人間関係とそのもどかしさにドキドキしました。

ネタバレBOX

半年前まで高校生で、地元(博多)に残って浪人している連中と、東京から久々に帰郷する2名(+1名)。
彼らが待ち合わせたのは、高校時代の親友で仲間内では一番勉強ができたが自殺してしまった友人アベの家。

受験の時カンニングをもちかけて、それがアベだけバレて自殺してしまい、集まった仲間たちの心の中それぞれに影を落としつつ、それでも彼らは精一杯幸せであるように振舞ってみせる。

最初は大学に受かり東京に行った連中がおおはしゃぎして、それを地元に残る連中が嫉妬するという構図なのだけど、最初から自殺した親友の存在があったためそのはしゃいでいる姿にも、地元連中の強気な姿にも哀しさがあって。
そんな微妙な人間関係を演じる役者さんたちが余りに素晴らしいです。
どの人も本当にその場に生きて生活しているかのように見えてくる。
セットも地方の一軒家の裏庭を作りこんでいて、生活観があってとても素敵です。

どうしようもなく惨めな状況で「セックスさせてくれ」と頼み込むけどやっぱりダメだったり、死んだアベの兄が彼らの事を責める事なく常に無機質な笑顔で丁寧に接したてたり、10分おきに携帯のタイマーをセットしておいて友人が多いようにみせかけようとしたり。
出てくる人たちがどの人も愛らしいです。
人間味に溢れていて、虚勢を張って生きている姿が時に滑稽に、時に情けなく描かれる。
そんな作品にグイグイと引き込まれてしまいました。


物語よりも人の心の機微を描く事を最優先させたこの作品、大好きです!
作・演出の松居大悟さんは今回出演されていないけど、だからこそこれだけ丁寧で細やかな舞台ができあがったのではないかと思います。
アフタートークの時に、「終演後に役者たちがノートと筆記用具を持って現れるようになった」と語っていたけど、役者もやっていると客観的にみれない部分はどうしても出てくるので、このようにストーリーではなくて心情を描いた作品では正しい判断だったと感じました。
悪趣味

悪趣味

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

1年ぶり本公演
1年待ちました。
でも、そんなに待った気はしないです。
その間に個人の活動がそれぞれ目覚しかったから。

で、1年ぶりの本公演を楽しみにして友人を誘って見に行ってきました。
初めて柿を見た友人も興奮するエンターテイメント大作でした!
去年同じ会場で「サバンナの掟」を見たときから、目覚しい成長を遂げてますね。
去年は空間を埋めきれなかったけど、今回は空間が密度濃く活かされていました。

ネタバレBOX

間にたまに入るアドリブかどうか分からない個人の一発芸やネタは、相変わらず入ってくると演劇のペースが止まる。
けど、力の入りすぎた役者と舞台上を緩和させる役割があって、あれはあれで好きです。

ジェイソンの意味のなさや七味さんの無駄遣いなんかが、客の期待を裏読みして外させてくれて、教授と思っていた男が実はキツネの息子だったり、等のドンデン返しな展開が続くクライマックスまで全く飽きる隙がないまま疾走します。

今小劇場でここまでエンターテイメントを完成させている団体はそう多くはないでしょう。
柿はよくつかこうへいと比較されるけど、この舞台を見て劇団☆新感線が浮かびました。
それくらい充実したエンターテイメント作品でした!


会場で売っていた「真説・多い日も安心」DVDを買って家で見ました。
柿のスケールはDVDでは伝わりづらいけど、あの公演も見ていたので脳内補完しながら。
で、見終わって思ったのは、1年前のこの時点で既に柿のスタイルは完成されてるな、ということでした。

ただ、今回は個人の小ネタが多かったかな?
自分的には今回の役者さんの小ネタはちょっと多すぎて展開を滞らせてしまっていたと感じました。
というか、グダグダになる場面が多すぎでした。
でも、柿に出てる役者さんたちって本当に楽しそうで好感もてます!
五人の執事

五人の執事

パラドックス定数

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

空間に圧倒される。けど・・・。
入場すると、劇場の使い方に驚かされます!
これは本当に。

今までも五反田団やサンプルが星のホールのステージ、客席の柔軟な作りを生かして独特の空間を作っていたけど、このパラドックス定数の舞台の使い方には圧倒されます。
これは実際に見て感じてみないと分からないかもしれないです。

話はタイトル通り五人の執事が繰り広げる、自分たちの「存在」「実存」に関しての物語。

ネタバレBOX

まず、本来ステージがある場所だけでなく、更に客席も半分以上つぶしてステージを通常の3倍程度の広さにした、スケールの大きな舞台の作りに圧倒されます。
とにかく空間が広くて高い!

で、登場人物は執事が5人。
なんとも贅沢な舞台の使い方。

でも、見ている分にはスカスカという印象はなくて、広い敷地内に静かに広がる屋敷という雰囲気を作りだしています。
抽象で作り出された舞台が落ち着いて素敵だし、その空間に佇む5人の執事のタキシード姿も品があって良いです。

ただ、広く静かな舞台作りには成功しているけど、逆にパラドックス定数が毎回作り出していた、持ち味でもある会話の密度と熱が逆に失われてしまっている感じは否めませんでした。

今回は静寂と間がかなり大胆に使われているけど、見ていて退屈してしまう感もありました。

話も、今までは実話ベースに作った密度の濃い熱い話だったのに対して、今回は架空のファンタジーなのでかなり話が弱いと感じてしまいました。

主人を失った執事だけで主人を弔おうとする内に、主人の残した日記帳を足がかりにして、自分たちの存在自体を疑い、実在していない事に気づいて消えていく。
話は単純。
謎は沢山あって、多分自分の中でも十分に解釈できていないけど、それにしても今までと比べて密度と熱気が落ちていて勿体ないと感じました。
結局彼らはどのようにして生まれ出て、どのような存在だったのか、自分の中で消化しきれませんでした。
LOVE 2009 Obirin ver.

LOVE 2009 Obirin ver.

東京デスロック

PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)

2009/06/13 (土) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

ガッツりデスロック
「LOVE」初見でした。

「愛のハネムーンツアー」は青森や神戸まで行くし、既に韓国でも上演しているけど、東京公演はやはりないので半ば諦めてました。
そうしたらポッカリと予定に穴が出来て、見に行く事ができました!

「リア王」が個人的には不完全燃焼だったので、何だか久々にガッツりとデスロック作品に浸れた気がしました。

初演を見ていると色々と比較もできて面白かったのかもしれませんが、桜美林のPURNUS HALLという広めの空間とスタイリッシュな照明センスでどっぷり浸れたので、これが初見で逆に良かったのかもしれません。

プロジェクターでシンプルに浮かび上がる文字。
初日はオープニングでアンプが破壊されたという爆音。
緑、赤、青で構成されたシンプルながら美しい照明。
特にシンプルな素舞台なのですが、照明によって素舞台とは思えない様々な表情を見せてくれるあたりは唸らされました。

全く目が離せなくて集中しまくった80分。

ネタバレBOX

少し前のデスロック作品だけど、今やりたいことを封じ込めたという作品。
見る人によって意見は真っ二つに分かれると言うことだけど、僕は大好きなスタイルです。

セリフ劇が見たい人は、他にいくらでも良質のセリフ劇があるので他を見れば良いと思う。
演劇の演劇的な部分を追求した、尖った作品が見たいなら東京デスロックは外せません。

オープニングは光と音楽だけで見せて、役者は出てきません。
爆音が鳴り止んでから、ようやく役者さんがひとり出てきます。
でも、黙ったまま。突っ立ったまま。
しばらくして下手にしゃがみます。

次に人が来て。
で、しゃがむ、しゃがまないでやり取りがあって、はにかんだり。
と言うのを時間をかけて舞台上に役者が皆出揃うまで続きます。
単純なんだけど全く飽きる事がなくて、食い入るようにみてしまいました。

次に踊りだす。
一心不乱に踊りだす。
延々踊り続ける中にもドラマがあって。

で、殴りだす。
段々喧嘩になってゆく。

音楽が鳴っても誰も立たなくなって、相手を憎むという関係性が新たに生まれる。

後半になってようやく役者が声を発するけど、セリフと言ったものではなくて、ただの挨拶をわざと誰でもないどこかに発する。

その後は「○○は好きですか?」「あー、いいですね。」が延々と繰り返されるけど、ここでも一切コミュニケーションは取られない。

最後はひとりずつ舞台から去ってゆく。

ただそれだけの舞台なんだけど、何なんだろうこの胸の高鳴りは!
最近のデスロックが戯曲を重視して戯曲から発せられるものを体現していたのとは全く別のアプローチで、単にこちらの方が好きというだけかもしれない。
でも、この世界を作り出せるのは多田淳之介さんだけなので、やはり嬉しいです。

秋には「ロミオとジュリエット」を日本完全版と韓国版で上演すると言う事。
昨年の「大恋愛」はこの「LOVE」的なうねりと戯曲が並存していた美しい作品だったので、「ロミオとジュリエット」が楽しみです。
一月三日、木村家の人々

一月三日、木村家の人々

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/05/23 (土) ~ 2009/06/02 (火)公演終了

満足度★★★★

木村さんの家
もう既に沢山の方が書き込みされてますが、アゴラが絨毯敷きの普通の日本の家庭になってました。
客席はコの字型に中央の丸いちゃぶ台を囲む形です。

演出の多田淳之介さんの「今日は1月3日という事で、まだお正月も明けきらない時期にご来場いただき・・・」という前説から既に始まっている感じです。

最近の多田淳之介さんの演出の方向性とは異なる、戯曲の言葉と対話を重視した演出が光っていました。

そして何より、戯曲が素晴らしい!
介護という問題に直面する正月のある過程の一幕だけど、これはこの木村家だけでなく、どの家庭でも直面してゆく重たいテーマです。

でも、それを重くなりすぎず、笑いを交えながら描く辺りに作家の力量を感じます。

ネタバレBOX

「他人の家庭の常識は非常識で端から見ると滑稽」であるというのをうまく表現していて、シリアスなのに笑ってしまう、不思議な空間が生まれていました。
この空間を作り出したのが多田さんの演出家としての技量でしょうか。

戯曲と演出。
それぞれが高いレベルで共演した、愛らしい人々のお話です。
JUMON(反転)/便所の落書き屋さん【満員御礼で終了】『観て来た!』に全レス中!(ただいま1/3)

JUMON(反転)/便所の落書き屋さん【満員御礼で終了】『観て来た!』に全レス中!(ただいま1/3)

MU

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/05/26 (火) ~ 2009/05/31 (日)公演終了

満足度★★★

セルフプロデュースの妙
MUはとにかくセルフプロデュースが秀でています。
「新しいバンド組みました」というのも目を引くし、演劇村以外へも訴えかけるだけの戦略を練り上げられていて感心します。

でも、今回の短編2作は、正直なところそうやって間口を広げてアピールして入ってきた人たちをひきつけるだけの作品ではなかったような気がして惜しかったです。
セリフなどはセンスが良くて、洒落が効いてて良いし、モチーフも面白いのだけど。。。

ネタバレBOX

「JUMON(反転)」は前回上演も見てます。
前回は「ボーカル以外全パート募集中」の人が変人として終始一貫していたと思ったし、それを演じた平間美貴さんがちょっととぼけた感じの変な人を好演してました。
だけど、今回男性にしたせいか分からないけど、出だしだけ変人で、その後は一番の常識人になっていてせっかくの設定が生かせていなかった気がします。
ハーレムの主も女性になって粘着性が増したというか、病的な感じが出すぎていて押しが強かったです。
男女を逆転させてしまうと作品自体の印象ががらりと変わってしまうのですね。


「便所の落書き屋さん」は落書き屋という面白いモチーフを見つけて、それをどう広げるのかワクワクしていたのだけど、途中から別に落書き屋でなくても良いただの三角関係の話になってしまって、凄く勿体ないと感じました。
この話と「JUMON」での佐々木なふみさんの演技というか、演出というか、存在感が同じだったのも勿体なかったです。
佐々木なふみさんの演技はとても良かったのです。
でも、それが浮いてしまっていたのが残念。


せっかくセルフプロデュースでポップでライトなイメージを作り出しているのに、話が分かりづらいので損をしているかな。
これは作家としての戯曲のまとまりが良くなかったように思います。
演出ももっとライトな演出の方が、作り出したイメージには合っていると感じます。

全体通して小林タクシーさんのコメディーチックな存在が光ってました。
小林タクシーさんくらいの、やりすぎっていうくらい分かりやすくふざけて良いのではないかな、と思います。

でも、MUにはどうしても次回も期待させられてしまう何かがあるのでした。
リミックス【初日・土夜完売御礼】

リミックス【初日・土夜完売御礼】

国分寺大人倶楽部

中野スタジオあくとれ(東京都)

2009/05/28 (木) ~ 2009/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★

嬉しい企画!
国分寺大人倶楽部は前回の「ハローワーク」で初めて見て大好きになってしまった。
なので、今回の「今までを振り返る」企画はありがたいです。

しかもRemixということでどのように変えてくるのか、等など興味の尽きない公演です。
初日、雨がザンザンと降る中、超満員。
熱気のこもった劇場はギュウギュウ詰め。
舞台上はあまりセットもなく、シンプルな作り。
ミラーボールとテディベアと奥の小さな暖かい明りが目立ってます。

約100分。

ネタバレBOX

今まで公演してきた4つの作品を短編にしてRemixした企画。
Remixって何だろう?と思っていたが、4つの作品がそれぞれリンクしているのでした。

『リバースremix』
 マジメなお芝居で、最後の最後に毒があるけど全体的にキレイに作りすぎた感じでした。亡くしてしまった恋人と妄想の中で語り合う小説家志望の男性。思い出は美しいまま取っておきたいけど、でも美しいばかりではなくて。

『ハローワークremix』
 一度暗転してから薄明かりの中役者さんたちがセットの配置を変えて、舞台チェンジ。テーブルが置かれてパイプイスがいくつか置かれてます。職業体験にきた女子高生。その女子高生を物珍しそうに見つつも、何気ない普通の会話が続きます。
 そんな中、いかつい男性が結婚する事が分かるのだけど、その婚約者は妊娠してて、同僚の前では強がって婚約者の事を悪く言うのだけど、その婚約者が忘れた弁当をわざわざ届けに来たところでコロっと変わってやさしーくなってしまう彼が可愛いのでした。
 この話が一番気持ちよく見れて、笑いもあって好きです。

『チャイルドプレイremix』
 19歳引きこもりの男性。部屋でゴロゴロと過ごしていると父親が帰ってくる。彼は父親とふたりの家庭。父親が気遣って声をかけてやっても素直になれない。そのうち父親が「友達」を呼ぶのだけど、それが若い女性で、父親と隣の部屋で乳くり合いを始めるのでした。
 この作品の面白いところは、舞台上には引きこもりの少年がずっといるのだが、言葉を一言も発さない所。逆に隣の部屋にいる父親とその愛人らしき女性は声だけが聞こえて姿は見せない。
 父親が愛人に、少年が引きこもったきっかけの話をした段階で完全にキレてしまった少年。手にナイフを持って隣の部屋に乗り込むのでした。。。

『メリーremix』 
 メリーという源氏名のサンタのコスプレをした女性が、「そこ」にやってきた人々をエスコートする。そこにやってきた「彼」は、自分がなぜそこに来たのか理解できていない。なので、「あの方」に頼んで昨日の夜を繰り返してもらう。
 何度繰り返しても結末が変わる訳でもなく、次第に状況を理解した彼は絶望する。


全体的に暗いシーンやリアリティのない設定だと国分寺大人倶楽部の良さが半減してしまっている印象でした。
自然な現代口語でリアリティのない話をする事の難しさを感じました。
そんな中でリアルな「ハローワーク」「チャイルトプレイ」にスタイルがぴったりとハマって、魅力的な作品に昇華されていました。

これで一区切りで次のステップへ踏み出す国分寺大人倶楽部の秋の王子小劇場公演が楽しみです!
愛のルーシー

愛のルーシー

北京蝶々

OFF OFFシアター(東京都)

2009/05/20 (水) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★★

設定が秀逸
2回目の北京蝶々。

前作が新型インフルエンザで大変な事になる話で、現実世界が今まさにそんな状況。
まあ豚だったから良かったのだけど。

そんな事もあって、北京蝶々の作る作品は決して現実から飛躍してない、という事が身に染みたため、今回の作品はどのようなものを提示してくれるのか、楽しみに見に行きました。

結果、やはり期待は裏切らない作品だったと思います。

ネタバレBOX

宇宙空間での長期生活のサンプルとして実験される「バトルスフィア」という施設。
アメリカ等は既にその研究を止めているが、未だに続けているのが唯一日本、というところがまず興味を引かれる題材でした。

完全に隔離された施設で、その中では水も空気も食料も循環してひとつの生態系をなしている「バトルスフィアJ」という施設。
その中には「楽園」を求めてやってきた男女が自給自足の生活を送っている。

生活に精一杯で年頃の女性なのに髪も肌もボロボロの状態。
でも、やはり恋心が芽生えればそんな中でも少しでもキレイに見せるために努力をするのが女性。
男たちは生活してゆくための知識を豊富に持っている男から、軟派な男、明らかに駄目な男。
こんな小さな世界にすら差別等は生まれる。
そして恋愛も生まれる。
そしてそんな人間関係を楽しみながら見ている女性。

そんな箱庭を眺め、観察している研究者たち。
箱庭の人々はやがてその小さな世界の生態系の破綻より前に、自分たちのエゴで自滅への近づいてゆく。
そんな中に「救いを差し伸べる」という名目で介入してくる研究者たち。
彼らもまた、その生態系の中に取り込まれてしまっているのだろう。


突飛な舞台設定で科学的な裏打ちが沢山あるのだろう舞台なのに、以外に普通に人間関係の絡みに終始してしまったのは勿体なかった気がしました。
あと、「密閉された極限空間の人間関係」というのが実は前作と被っていて、それも勿体なさを後押ししていた気がします。

結局普通の人間関係の観察劇になってしまったのは、この題材にしては話のスケールを小さくしてしまったかな。

題材はとても良いので、ここから一歩踏み込んで作家の新しい解釈を提示できるともっと良かったかと思います。


役者さんは皆さん良かったです。
特に「イナカ」さんは「判りやすい人」というのが丁寧に演じられていて、凄く好きでした。
コマツ企画の本井さんは、本井さんらしい駄目っぷりの役で、見ていて愛らしい。
舞台上の登場人物がどれも魅力的に見えたのは、役者さんがその役を愛してるからでしょう。

次はまた全然趣きの異なる作品になるようなので、前作・今作の「密閉された空間での人間関係」とは違うものを見せてくれる事を期待します。


帰りには過去公演のDVDを3本買ってしまったのでした。。。

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