latticeの観てきた!クチコミ一覧

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グレーな十人の娘

グレーな十人の娘

劇団競泳水着

新宿シアタートップス(東京都)

2022/04/21 (木) ~ 2022/04/29 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

評価が分かれているのはなぜ?と雨の新宿へ。

もしミステリだと思って観たのなら私も怒りの星1つだっただろう。実際は皆さんの「観てきた!」をさらっと読んで心の準備をしていたので「まあこんなものか」と諦めの星2つである。理由は書きつくされているので繰り返さない。舞台よりも皆さんの力のこもった「観てきた!」が面白く非常にためになった。タダで読ませてもらって申し訳ないくらいだ。

今回は好みとはかけ離れていたが、話の進め方、セリフの巧みさなどからこの劇団の普段の舞台はかなり魅力的なものと想像される。“ミステリーでなければ”また観に行ってみたい。

俳優さんは皆さんお金の取れる立派な方々である。その中でも江益凛ちゃんの永遠の子供振りに心を癒され、小川夏鈴さんのクールでクリアな声と姿には心を奪われてしまった。ここで星プラス1である。

ネタバレBOX

『オリエント急行殺人事件』で、乗客は全員代行業者でした、というようなもの。全員が偽証しナイフを降ろすのだが、「仕事の依頼があったのでやりました」で済ましてしまう。いやそれって代行業じゃなくて悪の組織でしょう(笑)
殺人も窃盗もしてないよということかもしれないが「睡眠薬入りの飲み物を飲ませる」というのは立派な傷害罪だし、それ以前に普通の人は赤の他人に睡眠薬を飲ませることはできない。「さっきは睡眠薬を飲ませてごめんね。テヘペロ」では済まされないのだ。
セールスマンの死

セールスマンの死

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2022/04/04 (月) ~ 2022/04/29 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

75分+20分休憩+75分。2018年の舞台(NHK-BSで観劇)は正味180分を超えていたので30分も短く、エピソードをかなりカットしていることが分かる。

素のPARCOの舞台の中央に冷蔵庫だけが置かれていて、そこにセットが移動してくる。常にガランとして広さを持て余していると思ったが家族の心の空虚さを感じるべきだったのかもしれない(ガランとしていると感じたなら演出の狙い通りなのだろう)。

外国から人を招いて斬新な試みをしてもらうことはもちろん大切だ。それは分かった上で今回の演出の好き嫌いを言えば、いろいろ動き回るのが煩わしく、やはりこの劇は素朴が一番という身も蓋もない結論になる。

父と息子の話が大きな柱ではあるのだが、特に父と長男の話であると感じた。昔は長男が家督を相続することもあって長男第一主義だった。ウィリー本人は長男ではなく、そのことで悲哀を味わったこともあっただろう(そんなことは書かれていないけれど)がそれでも長男を溺愛し期待してしまうのである。以上は私の父と重なるがための勝手な想像であるが、次男の影の薄さはしっかり意図して書かれたはずである。

お話は現在と10数年前の幸せだった時代が場面転換もなく連続するのだが、最初の回想シーン以外でははっきりとした目印がなく混乱しそうになる。2018年では母(片平なぎさ)の声質で区別していたが分かりやすい反面、若干のわざとらしさがあったかもしれない。まあしかし、この片平さんは最高だった。今回の鈴木保奈美さんの現代的な妻はちょっと好みではなかった。

ネタバレBOX

冷蔵庫の意味をTakashi Kitamuraさんの観てきた!に教えられた。なーるほど。冷蔵庫だけがずっと固定されていた意味はそれなのか。すると他のものをすべて移動式にした意味が分かってきたがすでに書いた感想はそのまま残しておこう。まあしかし冷蔵庫に入って行った瞬間にあれは棺桶のメタファーだったのかと気が付かなければ演出家も報われないなあ。いやあ申し訳ない。
神州無頼街

神州無頼街

劇団☆新感線

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2022/04/26 (火) ~ 2022/05/28 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇団☆新感線のFull Specの新作。待望のお祭り騒ぎ劇(withヘビメタ)である。初回のせいかカーテンコールが数えきれないほどあった(5回?、最近は3までしか数えられない 笑泣)。75分+20分休憩+95分

あらすじ:清水の次郎長を襲った身堂(みどう)一族を追って永流(ながる、福士蒼汰)は富士の麓にある一族の支配する神州無頼街に向かう。彼らがサソリの毒という中国伝来の暗殺術を使ったことから、永流は一族の長である蛇蝎(だかつ、髙嶋政宏)がかつて自分にその術を教え行方不明になっている父ではないかとアジトに潜入して探るのだが…。(もっと詳しいあらすじは「説明」にあります)

蛇蝎の妻の麗波(うるは、松雪泰子)はある大きな秘密を抱えていて、主役の二人(福士さんと宮野真守さん)に勝るとも劣らない大活躍をする。松雪さんファン(含私)は必見である。事前に分かっていればもっと良い席をとるように頑張ったのに(泣)

豊洲の回転舞台(客席)用に書いたのではないかと思わせるところが多数あってかなり残念。「豊洲なら星6つだっただろう」というのは言ってはいけない約束なのだろうか。

Brillia HALLは音響が良くない。3階だったこともあるのかギターもボーカルもボコボコモコモコで聞き取れない。そのためか半数くらいの歌には字幕が出る。もっともお祭り騒ぎなので歌詞は分からなくても良いのではあるが。

アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/04/03 (日) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度

面白くも何ともない。以上

貧乏物語

貧乏物語

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2022/04/05 (火) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

保坂知寿さん演じる凛とした戦前の女性が気高く美しい。保坂さんは劇団四季出身で日本のミュージカル界のトップスターである。私が観た中では『レベッカ』での怖いダンヴァース夫人や『ライムライト』のコミカルなオルソップ夫人が記憶に残っている。今回はドレスと歌を封印して着物と言葉で最高のパフォーマンスを発揮している。

以下、オフィシャルな説明がこの舞台よりも河上肇の『貧乏物語』に寄っていて誤解を招きそうなので確認しておく。

説明>社会問題としての資本主義...
>「貧乏ってなに?」と問う人すべてに捧げる

この舞台は資本主義批判の話ではないし、「貧乏ってなに?」も直接の関係はない。内容は、当時の職業や暮らしぶりを振り返りながら権力からの圧力に抵抗する家族を描いているといったところ。井上ひさしがなぜ『貧乏物語』という題名にしたのか謎である。

説明>時は大正5年...第一次世界大戦の好景気の最中、
>誰もが少し浮かれて、本当の"貧乏"を見ようとしなかった時代に、
>ベストセラーになった河上肇の『貧乏物語』。
>その河上肇の周りには、こんなにも素敵な女性たちがいた。

『貧乏物語』が出版されたのは確かに大正5年(1917)だが、この舞台は河上が獄中にいる1934年の春の話である。文章として間違ってはいないが説明のポイントを外している。素敵な女性の物語というのはその通り。

おしり筋肉痛 リノベーテッド

おしり筋肉痛 リノベーテッド

大人の麦茶

ザ・スズナリ(東京都)

2022/04/06 (水) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この劇団お得意の軽快で暖かい人情ドラマ。沢山の不安定な思いが最後には落ち着き場所を見つける。何か変わったものを求める人にはお勧めしないがそれでも予定調和だと分かっていて観るのはありだと思う。

2年前に劇団員になった今川宇宙(うちゅう)さんは完璧なアイドルでどうしてここに??と疑問符が山盛り。お父さんは2月にお亡くなりになった西郷輝彦さん。演技はお父さん譲りの華やかなもので声も良く通る。若林美保さんとの爽+熟コンビのチアダンは必見。野村宏伸さんは本当に本物が出てきたので一瞬戸惑った。奥山ばらばさんとのワル対決も決まっている。もっともそれらの方々に負けないくらい宮原奨伍さんも存在感があった。そういうことを書き出すときりがないのでここまで。

メリー・ポピンズ【3月26日~30日公演中止】

メリー・ポピンズ【3月26日~30日公演中止】

ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2022/03/20 (日) ~ 2022/05/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今回の私のミッションは「メリー・ポピンズはどこへ飛んで行くか」を調査せよである。

エンディングで役目を終えたメリー・ポピンズが舞台から客席の後ろ上方へ飛び去るのだが到着地点はどうなっているのかが気になっていた。今回はそれを確かめるべく3階下手の席をとった。いざ3階席に座ってみると舞台は遥か彼方の谷底に見えて「これは高すぎる、2階に着地か」と心配になった。さてそのときになり1階席を低空で飛んで2階に上がったところで一旦見えなくなる。ああやっぱりだめかと諦めていると再び姿が見えて3階で笑顔を振りまきながらさらに少し上がって天井にある小屋に入って行った。あんなところにあんなものがあったのか。まさかそんな高さまで上がるとは思っていなかったので目線より上は確認していなかったのだった。いやあ、これは怖い、濱田めぐみさんも笹本玲奈さんも最初は泣きたくなっただろうなあ。

好奇心旺盛な方には3階席下手天井の小屋の確認のために3階まで上がることをお勧めしたい。しかし観劇という点では舞台が遠く臨場感がないので座席は(当然ながら)1階席をとるべきである。

かもめ

かもめ

Art-Loving

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2022/03/24 (木) ~ 2022/03/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

久しぶりに演劇を観て震えるほど感動した。2022年のナンバーワンだ。

動的で明るく分かりやすい「かもめ」である。
最初の劇中劇は「リベルタンゴ」に乗って瑞生桜子さんが踊りまくる。ああこのまま永遠に続いてくれと祈ったものの当然ながらアルカージナの茶々が入って中止となってしまう。ミュージカルではないので歌は無く、ダンスもあとは最後の別れの踊りがあるだけなので苦手な方も安心である。

細やかな陰影には欠けるかもしれないがそれが許せる方には絶対のお勧め。
もう日曜14:00のステージしか残っていないので皆さま是非に。当日券も99%あるでしょう。

ネタバレBOX

冒頭の劇中劇はニーナに「生きた人間がいない、動きが少なくて読むだけ」と散々に言われ、アルカージナにも「なんだかデカダンじみている」とけなされる失敗作というのが本来の設定だが、本舞台ではダイナミックに躍動する人間をこれでもかと表現していてプロデューサーが入口に立てた挑戦状となっている。私は120%支持するのだが、トレープレフが新しく魅力的な作劇法を見出したように見えてしまうので、これが初めての『かもめ』の観客は混乱してしまうかもしれない。そこがちょっと心配ではある。「こんなの『かもめ』じゃないよ」と嫌う人もいるだろうなあ。

原戯曲のサブタイトルに「喜劇」とあることが昔から論争の的となっている(『桜の園』もそう)。文字通りの喜劇なのか斜に構えた喜劇なのか字面を追っても判断は付かない。

トリゴーリン(梶原航)は喜劇方向に寄せている。ニーナの人生を狂わせた悪党のはずだが本舞台では親しみの持てる人物となっている。もっとも原作からして当人も周りも悪いことをしたとは思っていないようだし、そもそもそんな道徳的善悪物語ではない。
医師ドールン(水上武)は落ち着いた良識のある人物であるが、こんな人でもずっと不倫中であるとは人間って本当に困ったものですねという意味では喜劇的であり、逃れられない人間の業を背負っていると見れば悲劇的でもある。
トレープレフ(佐山尚)は繊細で理想を追い求め悩む青年であり、自死してしまうのは悲劇的であるが、彼の求めたものは母の愛、ニーナの愛、独創的な才能そして世間(とくにトリゴーリン)からの賞賛という一つを得ることすらも難しいものばかりである。肥大した自我に押しつぶされたと見るか、理想を追及してかなわなかったと見るか、お好きにどうぞである。

配役で唯一不満なのはドールン+ポリーナ+マーシャのラインがバラバラなことだ。ポリーナ+マーシャは友達のようでとても母娘には見えない。ドールン+ポリーナは不倫関係にあって深刻な会話をするのだが世間話のようである。実はマーシャはこの不倫の子なのだという説があり、それを信じて読み直すと腑に落ちるところが多々あって、このラインは結構重要だと思う。

全体が「分かりやすい」と感じたのはトレープレフとニーナに焦点が置かれ、それ以外の様々な想いの描写が薄味だったからかもしれない。まあ単に私がそういう目で観たというだけかもしれないが。

瑞生桜子さんとラゾーナ川崎プラザソルというと『ロミオとジュリエット』を思い出すが、そのときは少女の雰囲気が色濃く残っていてそれが魅力でもあり欠点でもあった。あれから3年余りが経ち、様々な現場をくぐりぬけてきたのだろう、メジャーな世界で通用する大人の顔つきになっていた。最近のNHK総合のドラマ『恋せぬふたり』でも出番は短いがNHKドラマの世界にしっかり溶け込んでいた。来年は朝ドラか大河ドラマに出演するに違いない。並行してシアタークリエでのミュージカルもワンチャンあるのではないかと期待している。
オロイカソング

オロイカソング

理性的な変人たち

アトリエ第Q藝術(東京都)

2022/03/23 (水) ~ 2022/03/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

女優さんが5人で性被害の話を演じると聞くと告発ものかと身構えてしまうが、それはむしろ細い横糸で太い縦糸は家族の物語であった(と感じた)。

誰しも家族や友人のことで気になるが聞けなかったこと、知ってはいたが知らんぷりをしたことの二つや三つはあるだろう。何かすれば良かった、何もしなくて良かった、どちらもあるだろう。また家族だろうが親友だろうが絶対に知られたくなかったこともあっただろう。知られなくて良かった、知ってもらえていれば楽になれた、どちらもあっただろう。観ている内に舞台上の出来事と同時にわが身のことを思い起こさせられた。あれで良かったのかと問うても答えが返ってくることはないのだが。

登場人物の結子は話題の中心ではないが全体の進行役とでもいうべき位置づけで、滝沢花野さんのしっかりとした発声、きりりとした立ち姿、安定した演技が全体の確かな芯となっていた。

リムーバリスト―引っ越し屋―

リムーバリスト―引っ越し屋―

劇団俳小

萬劇場(東京都)

2022/03/12 (土) ~ 2022/03/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

期待外れの一言。
バイオレンスもパワハラもセクハラも薄くて味がない。
女性二人は何か別の劇をやっているかのように混じり合わない。
昔のオーストラリアも関係ない。
引越屋の存在も調味料でしかない。

数年後に「当時は観る目がなかったなあ」と振り返ることになるのだろうか。

ネタバレBOX

全公演が終わったので再検討してみた。

・バイオレンスもパワハラもセクハラも薄くて味がない。
→バイオレンスについては『殺し屋ジョー』と比べると全く怖くない。もっとも、あちらは舞台が遠いし照明も暗かった。逆に言うとなぜ明るい舞台にしたのかということになるがバイオレンスをほどほどにしたかったのだろう。
最初の部長と新入りの会話だって単にしつこいだけでパワハラの不快さがマイルドである。
セクハラも笑いを取りに来ているし。

・女性二人は何か別の劇をやっているかのように混じり合わない。
→一人はラブコメ、一人は時代がかった悲劇でも演じているかのよう。狙った演出のはずなので何か奇妙な雰囲気を作り出そうとしたのだろう。

・昔のオーストラリアも関係ない。
→オーストラリアの人にはあれは何これは何と分かることがあるのかもしれないが、私にとってはどこにでもある暴力警官の話にすぎない。

・引っ越し屋の存在も調味料でしかない。
→それで正解。表題にはなっているがアクセントにすぎない。

結末の「殺したと思った相手が生きていた…→警官同士の殺し合い」は完全にエンタメ・アクション映画だ。色々総合して考えるとこの劇は社会派劇ではなくコメディかエンタメということになる。会場で配布される立派なパンフの格調高い文章を読んで勘違いしたけれど、そういうことなのだ。しかし考えれば考えるほどこの劇、すべてが噛み合わないように作られている。
横濱短篇ホテル

横濱短篇ホテル

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かずさんの巧みな文章に誘われて予約を入れ、出発前にTakashi Kitamuraさんも5ツ星であることで大きな期待をもって新宿へ。いやあ参った、お二人のおっしゃる通りだ。文句をつけることも忘れているうちにカーテンコールに。

普通の状態なら「そんなバカな」となるはずの誕生日の話に抵抗なく侵入を許したのは魔法に掛けられていたということなのだろう。まあそれに限らず良いように転がされたのでかなり悔しいが、もちろんその100倍楽しく嬉しい。どなたにもお勧めしたいところだが残念ながらこれが千秋楽。公演回数が少なすぎるよ。

Takashi Kitamuraさんも書かれている角田萌果さんだが、声優の訓練もしているのだろうか、驚愕の声質の変化だった。インターネットに「憑依型カメレオン女優ランキング」というのがある。彼女もそのうち入ってくることを期待したい(ちなみに1位は綾瀬はるかさん)。

ところで『街の灯』くらいは知っておきなさいよという注文がちょっと耳に痛い。もちろん、手を握った時に思い出すというところは覚えているんですよ…もちろんですよ…

悪いのは私じゃない

悪いのは私じゃない

MONO

吉祥寺シアター(東京都)

2022/03/11 (金) ~ 2022/03/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

宣伝文からは「あいつが悪い」「こいつが悪い」で怒号が飛び交うようにも想像されるが、実際はこのように始まる。

『退職した社員が社内でのいじめを訴えてきて調査が始まった。急遽研修を受けた総務部長が会議室に社員を一人ずつ呼び出してヒアリングをするのだが、退職した社員の上司は会議室にやってきて出て行かないし、最初の社員は二人一緒でないと嫌だと言い出したりで前途多難である…。』

こんな調子で全編マイルドで笑いの絶えない舞台である。小さな会社内でありながら多方面に話は脱線し飛躍しで飽きることなくあっという間の2時間が過ぎる。

特に何か主張があるわけでもないし、斬新な手法がとられているわけでもないが、リラックスして(爆笑でも微笑でもなく)適度に笑いたいという方には超お薦めである。

料金に7,600円とあってびっくりするがこれはペアチケットのお値段で、二人で行っても一層親密になることはあれ、気まずくなるなんてことは絶対にない。

プルーフ/証明

プルーフ/証明

DULL-COLORED POP

王子小劇場(東京都)

2022/03/02 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

お話は『ある数学の論文を書いたのは誰か』なのだが、「数学の論文」を「小説」に置き換えてもストーリーはそのまま成り立つ。原作者の経歴を見ても数学や自然科学とは無縁であって、おそらく何かの折に「証明を書いたのが誰かを証明する」という言葉の面白さに気が付いたのだろう。そしてそこから精神が崩壊した父と自分にもそれが起こることに怯える娘という設定に進むのだが、それはステレオタイプの偏見ではないだろうか。60分+10分休憩+60分

そういうわけであらすじ的には感心しないが、数学とは関係ないサイドストーリーの集合としての家族の物語はそれなりに面白い。さらに今回は舞台装置までも全く異なる3つのバージョンが用意されていて演劇のテクニカルな面でも楽しめることになっている。
Aチーム:身内で固めてコントロール。
Bチーム:未知の若手二人に中堅とベテラン。
Cチーム:実力者で固めて任せる。
俳優は基本的にオーディションで選考されているが、父は3人とも一本釣りである。

今回私はBチームを選んだ。
<Bチーム=娘:伊藤麗、恋人:阿久津京介、姉:原田樹里、父:中田顕史郎>
冒頭、娘が舞台にチョークで大きな円を描き、その後ずっとそこからは出ない。精神的にも肉体的にも身動きがとれない状況を表しているのだろう。その結果、薄暗がりの舞台上で着替えをすることになる。まあ上着くらいなので期待しないように。…いや待てよ、主宰のサービス精神を考えると原因と結果が逆なのかも。

伊藤さんは不機嫌で面倒くさい少女(から脱していない25歳)をストレートに表現していた。王子様に出会ってパッと花開く変化が極端な気もするが舞台的ではある。
阿久津さんは軽目の頼りないキャラ設定をうまく表現していた。難しい理論が理解できるかちょっと心配になったけれども(笑)。
原田さんは写真ではおっとりした普通の人に見えるのだが舞台では100倍映えて美しい。そして厳しく少し面倒くさい姉に変身する。
中田さんはやりたい放題で中田節を期待して来た人(含私)は満喫できるだろう。

*後日修正:落ちついて見直して星を4つに増やした。

ネタバレBOX

数学の雰囲気が希薄で、失望して否定的な感想を書いたが、原作の評価は高いので見直さないといけないと思っていた。そのため映画版を見始めたのだがキャサリンに加えて姉もガミガミとうるさくストレスが溜まるので何度もストップしながら漸く最後までたどり着いた。

映画版がBチーム演劇版と違うのはキャサリンが実際に数学の研究をしている場面があることだ。父からアドバイスを受けるところもあって数学オタクはうんうんと頷くことだろう。キャサリンが冷蔵庫から瓶を取り出そうとした瞬間にひらめく場面も雰囲気作りに貢献している。これはどんどん場面を変えて細かなところまで描くことができる映画の利点である。ただし映画版はいろいろ場面を変えすぎて散漫な感じもする。

キャサリンがその論文を書いたということは、実は幼い頃から「巨人の星」のように父娘でハードワークをこなしていたとかがあるとすっと入り込めたのだが、映画版にしても短時間のひらめきで証明ができたように描いているのは数学を含む自然科学を舐めているとしか思えない。自然科学は過去からの積み重ねの上に新しい理論が発展して行くことが小説とか戯曲とかとは違っている(*)。沢山の地道な努力の末にひらめきが起こるのである。補助線を一本引いたらたちまち大発見というのを「美しい証明」とか考えているなら冷静に思い直してほしいものだ。もっとも、そういう点を現実的に描けば退屈な話になるので仕方がないことではある。Bチーム演劇版では年齢を下げているので更に現実味がなくなっているのが私の最大の不満の原因ではないかと思う。

映画版では父はアンソニー・ホプキンスが演じる。レクター博士のときとは全然違って普通の人であり、中田さんの方がずっと狂っていた。

ところで映画の邦題は「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」となっていて、何だかふわっとしているが内容的にはその方が合っている。やはりこの劇は数学の話ではなく、人生に迷った若者の発見と再生の物語なのだ。

(*)現在の生活の状況はすべて過去の積み重ねの上にあるので、小説や戯曲においては生きていることがそのまま過去を勉強していることになる。そういう意味では同じことではある。まあこの辺は何とでも言えるので深入りしない。
君に会いたい

君に会いたい

しゅうくりー夢

ザ・ポケット(東京都)

2022/03/02 (水) ~ 2022/03/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「なんとかサスペンス」といったTVドラマを見ているようだ。ベテランから若手まで、俳優さんの面構えも決まっていて安定の演技である。登場人物は10人だが関係性もしっかりしていて、それぞれに見せ場があり、脚本が良く練られていることが分かる。

お話は元公安のはみだし刑事「居在家(いざいや)」とその同僚の御影池のコンビが警視庁捜査一課の高御堂の(一応の)指揮の下で連続殺人犯を追い詰めて行くというもの。ハードボイルドをうたっているが私立探偵ではないので孤独感は薄く、(主人公に関しては)暴力的でも無いので古典的なハードボイルドとはちょっと違う気がする。まあスピンオフということなのでそれは他の作品で観てほしいということなのだろう。

何度も流れる曲は1967年のザ・ジャガーズのヒット曲「君に会いたい」である。表題はここから採ったのだ。あまり本筋と合っていないと思っていたが、あの人とあの人のことかとこれを書いている内に気がついた。作者が(自分自身と)この曲が大好きだというのはよく分かった(微笑)

ネタバレBOX

「なんとかサスペンス」のようだというのは、それならTVで見れば十分ということにもなる。有名俳優さんが出ていないのは弱みにもなり、完成度の高さはマンネリ感にもつながる。悪く言えば時間潰しで何にも残らない。そのためTVドラマでは特殊な環境が舞台だったり、豆知識的なものを入れて、ストーリー以外の何かを持ち帰ってもらおうとしているのだが、ここでは何もなかったような気がする。まあテレホンセンター(の受け答え)がそれだったのかもしれない。そして小劇場的な尖ったところもほしいけれどそれはちょっと贅沢すぎるか。

昔の事件の真相は二転三転し含みを持たせて一応の結論に達する。そして現在の事件は未だ決着に至らず最後の謎のシーンは次作の予告となっている(のかなあ?)。

頼井が大地に接近した動機が胸糞悪く、尚子が空に惹かれて行くのもちょっと無理があった。まあ想定内ではあるけれど。しかし役名がほとんど忘れていて読めないのには参った(泣)

「作者が(自分自身と)この曲が大好きだというのはよく分かった(微笑)」
と書いたのは表題を本筋でなく副筋から採ったのは松田環さんの「主役は私よ!」という主張が感じられたということ。勘違いだったらごめんなさい。
母孵ル、

母孵ル、

fukui劇

劇場MOMO(東京都)

2022/02/23 (水) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

Bキャストを観劇
75分中55分くらいまでは今年のベスト1を争うのではと思わせる面白さだった。そこから急に尺稼ぎなのかクドクドモタモタの進行になって、最後はアレレレレの結末。素晴らしいオチがあれば本当にベスト1だっただろう。

ところでこの劇団(に限らないが)はダブルキャストにするだけの人的資源を持っているのだろうか。金をとるレベルに達していない人も混ぜて中途半端な二つの組を作っているのではないだろうか。プロ野球には1軍と2軍がある。アイドルにも選抜組とそれ以外がある。実力者揃いの1軍と今一息の2軍で同時公演、2軍の入場料は1軍の半分、ギャラも半分なんてのをどこかでやらないだろうか。プロデューサーは「血も涙もない、鬼、悪魔」と散々罵られるだろうけれど。まあ私の腹立ちまぎれのガス抜きの提案なので無視してくだされ。

純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて

純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて

アマヤドリ

シアター風姿花伝(東京都)

2022/02/18 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

評価が分かれているので行ってみた。
パフォーマンスとしては小劇場的な仕掛けも豊富でよくできている。しかし主題のポリアモリー(polyamory)という概念が小物で、展開も「生煮え」、そして煮込んでも美味しくなりそうもない。というのが私の結論。

パダラマ・ジュグラマ

パダラマ・ジュグラマ

おぼんろ

Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)

2022/02/13 (日) ~ 2022/02/20 (日)公演終了

実演鑑賞

末原拓馬/登坂淳一/塩崎こうせい/岩田華怜/八神蓮 の回を観劇

初めてのおぼんろ観劇。最初に各登場人物が舞台のあちこちから長めのセリフを発するのだが、どうもそれらの言葉を有機的につないで理解する能力が今の私に欠けているようで、ここですでに脱落の予感がした。早すぎる(笑)。その後も独特の世界観になじめず取っ掛かりをつかめないままに終幕を迎えてしまった。そういうわけで無評価。

役者さんはみなさん素晴らしい演技でおまけに歌までうまい。そういう真のプロの中で、登坂淳一さんはセリフはもちろん、身のこなし、表情までも張りがあって艶があって切れがあり、人生のどこでそんな修行をしてきたのかとWikipediaで調べてみたが何の痕跡もないので驚いた。座長だと言われても信じてしまっただろう。まあ認知症気味の老人が言うことなので話半分で。どうしておぼんろに出演することになったのかは2,500円のパンフレットに書いてあるのだろうと思いつつ、どなたかのリークを期待してサイフを出し惜しんだ。

おつかれ山さん

おつかれ山さん

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2022/01/26 (水) ~ 2022/02/01 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

〈Team箱〉を観劇
場所は「風姿花伝」でCoRichの皆さんの評判も良い、というのは今まで鉄板だったのだがこれは初めての外れ(泣)
良かったのは舞台美術だけ。落ちのないストーリー、ありえない会話、間の悪い演技、…書いていると悪口ばかり言っている嫌なジジイになってしまったなあと自己嫌悪に陥るのでここまで。それなら書くなよというのは正論だが何か腹が立って書かずにいられない。アホだなあとまた自己嫌悪。

あいついつまでもやってる

あいついつまでもやってる

トローチ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2022/01/22 (土) ~ 2022/01/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

舞台は大学受験から生涯学習への転換中の予備校の会議室である。最近入ってきた老齢の派遣社員の強いテンションが昔いた名物生徒を想起させるということで二人の変遷が(照明の色で区別されて)交互に展開される。とくに変わったエピソードがあるわけでもなく強いメッセージがあるわけでもなく、沢山の小ネタで笑いを取りながら進むほっこり系のお話である。

役者さんもベテラン揃いで安心して見ていられるのだが、何か一つ尖ったところがほしいと感じた。それから主役の辻親八さん、常にいらだっているようで楽屋で何かあったのかと気になった。まあこういう芸風の方なのだろう(笑)

疚しい理由2021

疚しい理由2021

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/22 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Team"K" を観劇。
始めの30分は「ああ、なんだかダルいのに来てしまったなあ」と後悔したが、それからの15分で「いいぞ、いいぞ」と引き込まれるも「どうやって終わらせるの?」と心配していたら、案の定ぐだぐだのエンディングとなった。まあ、こういうのに誰もが納得する結末をつけられたらノーベル賞ものだわね。話の展開はうまいものだと進むにつれ感心した。

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