第27班 本公演9つめ『蛍』
オフィス上の空
萬劇場(東京都)
2019/03/20 (水) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
いっけん淡白な群像劇かつ役の入った台詞づかいではあるけれどね。時系列の交差しない関係性に味わいを感じられるぜ。
就活で採用企業をディスったら脚光浴びたっていう、女子大学生のネタおもしろいよな。まぁ、会話してるんだけど独白調でもあって、関係性というより、一人芝居に周りが反応するニュアンスさ。
幻想的なホタルを模したライトアップ以上に、下手にセンチ表現せず、また悲哀も感じさせずにね、物語として収斂させていくのは秀逸じゃん
虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2021/09/30 (木) ~ 2021/10/04 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
4桁の観劇人生の中で「ラビット番長」の将棋シリーズはベスト5にランクインしてくる。それだけに『コマギレ』は愉しみにしていたのだが、いやはや、上演作を変更しても力作だった。
さらば、ブラックローズ
ライオン・パーマ
萬劇場(東京都)
2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
「まだ はじまってません!」
そう案内しつつ、シュールに本編へ。
これは、毎度おなじみと呼んだら失礼だが、いいんだ。
ハード・ボーイルドなんだもの。
「朽ちてこそ、また」である。
地方まわりの劇団と、どの街にもいそうな典型の家族、「夜の世界」。
これら三様の それが、哀愁を漂わせ、絡んでゆく。もちろん笑える。「演劇頂上決戦」の見出しそのものとなる興行は、朽ちた大人に捧げるハード・ボーイルドだった。
会津藩家老 西郷頼母
劇団め組
「劇」小劇場(東京都)
2018/10/24 (水) ~ 2018/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
いやぁ。
「絶対の善」と「善」の対立って、やっぱり、勧善懲悪のドラマではみれないよな。
戊辰から150年というけれど、砂上なんだよ。家老の一言で歴史は変わる。いや、大胆にも変わったと思うんだよ、結果論からいえば。
台詞にも重心こもってるよね。
別に、現代口調ではあるんだけど、殿様は殿様で「脈々と継できた家訓」の化身というわけで。そして、家老は家老で「民の暮らし」を慮ってる。
やっぱり、フィードバックなんだよな。有り体にいえばリアリズムってこと。大河ドラマみたく億円注ぎ込んだわけじゃないけど、そういうフィードバックによって同時代性つうのは機能するんだ。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
衝撃の実話である。
もちろん、谷氏なりに取材し、脚色しているわけだか、こうも人間の変哲を考えずにはいられない。
大掛かりなセットである電球の装飾は不気味に漂う。鎮座する。「原子力」という題材を与えられなければキレイに輝いたろうに。
アフタートークでは評者に「ミュージカル以降が面白かった」と激励された本作。しかしながら、個人的には、政治劇というか、魑魅魍魎の蠢く模様をキープすべきだったと思う。なぜなら観客は張り詰めた空気に意識していたのであり、エンターテイメントよろしく「分断」することで それが途切れてしまったからである。
主人公の反原発派元リーダーは町という現実を前に変貌を遂げていく。社会党や自民党の利害が、この男を再び政治の表舞台へ上げる。 谷氏は「海外の人は理解できるのか、役者の間でも議論になった」と述べていたものの、それは違う。
翻訳を手掛けるだけあり論理的思考力が海外並みの谷氏は気づいていない。そこまで日本人は言語化しない。内輪の席であれ、論理的に「言い負かす」のは日本人ではない。
だからこそ、 演劇は、視野で、原子力村の配下に降った「私たち」をメタファーしえるのである。
美代松物語
劇団芝居屋
ザ・ポケット(東京都)
2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
東北の冬は寒い。痛々しいほど、雪が積もる。白化粧などと甘美なことを言ってられないほど、のしかかる。
津軽海峡を隔てた北海道の冬は観光だ。その結晶が、商いの恵みとなり、栄えさせる。
北海道の地名の由来となったのは松浦武四郎という人物だそう。最終的には官僚に委ねられたものの、候補は5つあったらしい。
「日高見(ひたかみ)道」、「北加伊(ほっかい)道」、「海北道」、「海島道」、「東北道」、「千島道」。このうちの「北加伊道」が「北海道」に転じたとされるのが有力な説だ。音読みの「カイ」はアイヌ語であった。ともすると私たちは「北の海に位置する道」というふうに解釈してしまいがちだが、実相は、その土地のアイデンティティに寄り添っている。
翻って東北は どうか。列島の真ん中たる「近畿」から測って東の北に伸びている、という意味しかない。そこに差別の構造をみてとれるのである。
さて、本作は東北の海岸線沿いにある都市を舞台にしている、と思っている。現代劇でありながら、その作法や言葉遣いは格式高い。「東北」の形のごどく背筋を伸ばして観劇しなければ およそ適当ではないと思わせる風格である。
あらすじは以下の通り。一見さんお断りを代々守ってきた旅館の、「負債」を巡るトラブルから物語は始まる。 取り立てに来たのは任侠。この、応対しなければならない側の女将の矜持であるとか、敬語の使い方というのは昭和そのものであった。いや、バブルに浮かれていた時期もあったので、大正と呼んでも合点がいくだろう。
濃密な人間ドラマは省くとして、この劇団からは否応しに「土の香り」がする。悲しくも国民民主党の面々にはない。その土地に暮らし、生きてきた「軌跡」みたいなものが、現実として漂っているのである。
小劇場であるにもかかわらず、セットの早替えは賞賛するに値する。実のところ小料理屋の女主人の負けん気一辺倒な様子は やや誇張されようにみえた。だがしかし、それを差し置いても肉厚な作品だった。
山本圭壱お笑いLIVE
山本圭壱LIVE事務局
駅前劇場(東京都)
2015/01/19 (月) ~ 2015/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
お笑い界に絶対必要な“デブ”です!
この男が充電した期間は8年半ではなく、100年分だろう。
フィギュアスケーター・羽生結弦や浅田真央をもじった「新ネタ」は爆笑であった。
もしも、この男を「観たい」日本中の人々の願いが成就したならば、東京ドームを満席にできたかもしれない。
極楽とんぼ・山本圭一が8年半ぶりに姿を現す。50人程の報道陣に加え、謹慎期間中もファンだった人々、野次馬が騒然とするなか行われたのは、下北沢・駅前劇場。
「密室」の『山本圭一お笑いLIVE』を、抽選に漏れてしまった3万人のために、今報告したい。
「お帰りなさーい!」
山本圭一だ。
拍手と 予想外のエールに目を赤らめ、「山本圭一お笑いLIVE、始まります!」を宣言。熱狂的だった。
忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
この人(久保田 晶)とは話が合わないが、OK牧場
戦国時代“本能寺の変”は未だ、
日本一大事だ。
“信長の遺骨が見つかっていない”
“光秀の首を確認したのは秀吉だった”
“家康が少数の部隊で伊賀抜けした”
この3つの“史実”が、久保田 昌によって謎解きされ、そして世に刊行される。
それは新たなる夢想の歴史教科書とも呼ぶべきものだった。
『ボク団』の凄い点は観客を飽きさせないプロ意識だろう。
あくまで、休憩10分間を跨ぐ、3時間である。しかし、時代劇の予定調和な退屈さとは対極に位置する。
大神らが笑いのポジションを務めているのだ。
“はっとする”、残虐なシーンの数秒前に、こうした“笑い”がある。
これは絶妙だった。
蛸入道 忘却ノ儀
庭劇団ペニノ
森下スタジオ(東京都)
2018/06/28 (木) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
当日券キャンセル待ち。
まてよ、平日マチネの住宅地でこの現象。
供給過剰の世にあり、フレームは「モノ」から「コト」へ変化しているという。
このことを「コト消費」とも呼ぶ。
だとすれば その最新だろう。
スタジオに入って驚かされるのは巨大に「建設」された お堂に ふといることである。その額、100万円では済まないと思う。
ここに入った人々は いわば「参加者」として儀式をともに執り行うことになる。
新なる世界の構築といったら言い過ぎか。海中生物で、私たちが目にする機会において たいていは小麦粉の内にある「蛸」を祀り、その解釈からサイコロジーを試みよう、とする「コト」の共有化だ。
厳密には「演劇」というジャンルに区分することはできまい。これはネタバレではないと思うが、逆賊がおり架空の組織が瓦解していく、といったトンチの効いた話でもないからだ。予め立てられた予定調どおり、儀式を執り行う。
劇団からは赤い衣服を提供するようにいわれていたので、受付で渡した。冬の厚手の上着である。やがて、幾人の申し出を何重にも被った役者陣だったが、冬用のワインレッドはダントツに光っていた。
暑かったろう、女優さん…。
跋扈するセゾン文化財団、アサヒ文化財団といった振興基金が特別扱いするだけ、やることが のっぴきならない。しかも、スケールではなく、切り口がなのだ。
「自然」と「密室」のアンソロジーも絶妙である。
白雪姫という女
ライオン・パーマ
駅前劇場(東京都)
2018/08/23 (木) ~ 2018/08/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
御伽噺には〈現実とは懸け離れた架空の話〉とする意味があるという。たしかにお椀に乗った小人は そう流れてこない。だがそれも、幼児向けであるため分量の都合でカットしたに過ぎず、絵本に書かなかった物語には、〈現実〉(オルタナティブ)がそびえているはずだ。ライオンパーマが得手するのはこういうことである。
〈白く雪のような肌〉の白雪姫は善意だ。それに対し、加齢とともに老いていく妃はジェラシーの象徴として、今日捉えらているが、美女と名付けられる人間において、その絶世はたやすく移ろいやすい。まるでベルトコンベアーだ。常に次が待機するからであり、古今東西普遍的だといえる。30・40代になった白雪姫はソバカスをケアしているのか。爆笑する綾小路きみまろのカセットテープを家でこっそり聴いたりしているのだろうか…。
ライオンパーマの舞台は笑えるシーンも多かったが、儚さと共存していたように思える。シチュエーション芸を活かしつつ、根底には人間を狂わせるジェラシーが横たわっているからであろう。
誰が主役かと問われれば難問だ。なぜならラストのラストになって決するから。
シーンごとの全体像が もっと まとまっていたら良かったか!?
でも、はじめて観る方から劇通さんまでお勧めできます。丹羽さんの役柄、出身劇団がコミカルだっただけに適ってましたね。
そんなの俺の朝じゃない!~再び~
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/05/15 (水) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
火山 火山(ヒヤマ カザン)。
彼の、定年ラストデーをサバイブする物語と思いきや、意図された脱線に次ぐ脱線の末、意外な感情を呼び起こす。
※追記あり
真・恋愛漫画
ライオン・パーマ
シアターKASSAI(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
受付にはライオンパーマのキャスト陣。と思いきや、彼女らはスタッフとして携わっており、出演したのは「外部登用」盛りめだった。
オルタナティブを是とするライオンパーマの、劇中劇と呼ぶべき手法。たしかに事前知識ゼロで観れば役柄が あっちこっちに混乱してしまう。なのでオムニバス(でもないけど)コンパスを持参されたい。
面白かったのはラーメン屋だなぁ。限りなく「素の舞台」だったのに、このシーンだけが妙にディテールに凝っている。台詞が乱発されるわけではないのだが、「空間」と「感情」を共感させる。麺啜ってるだけなのにサスペンスを軽く超えてくる。
全体、 真面目だったなぁ。
桜の森の満開のあとで
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2019/03/21 (木) ~ 2019/03/27 (水)公演終了
満足度★★★★★
某大学のゼミに参加するというふれこみ。
教授役の男性(ちなみにシアターミラクル支配人)は前説で「タバコを吸うシーンがある」と述べたが、いまどき そんな大学生いるか。
大学生たちは「模擬カンファレンス」という討論で成績に差をつけられるゼミに属する人々であり、利害関係者の役になりきって特定のテーマで「賛成」「反対」の意思表示をとり、多数決の方が評価を稼げるというシステムだ。意見を言わないで多数派に追随してもよいが、稼げる評価は少なくなる。ただし少数派には評価がつかない。
そして、テーマとなったのが近未来、架空の自治体(福井県の実在の市をモチーフ)における「高齢者から投票権を取り上げる」条例だ。これを賛成する市長、商工団体、電力会社の代表者らに対し、地元NPO青年らが反対する。
市長役の女性がキャリアウーマンのような出で立ちだ。どぎついものの知性があり、場の中心となる。対して やや誇張だったのが電力会社員役の男性。
毎週のように集まり、クールダウンよろしく休憩をはさみつつ、席に着く学生たち。
白熱の議論はロジックで、観客である参加者に配られる詳しい資料も相まって、さながら『朝まで生テレビ』視聴者だ。ここは照明を明るくしたり、開演中でも読み込む時間を用意した方がよかった。
この議論は劇中劇である。
だが、それが現実の人間関係に影響を与え、しかし現実の人間関係が論戦を覆していき、衝撃を辿る。
専門的な見地からいわせていただくと、シルバーデモクラシーが非難の的となっているからといって、高齢者から票を取り上げるのは反対だ。高齢者をアイコン化し、「高齢者だから高齢者のための候補者に票を入れるはずだ」というのは個人を無視している。仮に100人中99人の高齢者に そういう傾向がみられたとしても、1人の投票権を喪失させていいのか。
また、「高齢者だから高齢者のための候補者に票を入れるはずだ」がダメだと権力側が決めつけるのは絶対主義だ。善し悪しは有権者の判断に基づくものであり、相対的でなければならない。それを極化すれば、権力側が「善い」とする投票結果を得られるまで投票権の属性を絞ることになるからだ。(被成年後見人の投票権剥奪は憲法違反とし、個人の権利は復旧されている)
そのような社会が健全かは言うまでもないだろう。
だから、申し訳ないが、専門的な見地からはゼミの「結末」というものも首を傾げたくなる。
半端の「地方分権」ほど、この国を陥れるものはない。福岡県などでは憲法違反の「条例」を制定し事実上、施行してしまっている。本来、国を縛る最高法典として憲法があり、その下に法律があり、条例がなければならない。だが、現実には、法律としては憲法違反の疑いが強いから「条例」として既成事実化し、国民を縛る働きをするケースもある。あれを法律でやろうとしたら法制局がサインしたかどうか。憲法では日本の最高機関は国会であるとされているが、政治家や官僚、メディアのスクラムによって この国の長に祭り上げられたのが地方自治体である。
専門的になってしまうが、日本の自治体に権力分立はない。二元代表制ということにはなっているものの、圧倒的多数の議会で首長の提案する予算・条例が通過(全提案、全会一致)しており、議員の提案も 枯れるほどしかなく、「なれ合い」という日本的関係が続いている。いわゆるオール与党である。ここまでの経済規模を有する国で、自称・民主主義でありながら一部の県・市・町政を除いて対抗軸がないというのは、実は驚異的である。
自民党の石破茂氏は憲法改正において、参院議員を「地方の代表」選出とする内容を主張している。これは、自身が県連幹部を務める鳥取県が、お隣の島根県と合区の対象となったことによる。つまり「地方の小さな声を、より拡大して国会へ」という思考なのだが、このことは、国会議員を「国民の代表」とする現行憲法とは真っ向から衝突する。それをつぶさに検証すべきだろう。
第一、仮にも都道府県を戴く中央集権制のこの国において「地方自治体」を選出主体とするのは、北海道の代表や沖縄の代表といったアイデンティティと政治的基盤を一層強固にするものであり、単一国家観を揺らがせることは言うまでもない。それはさておき、自民党は制度的に地方分権する道州制に関しては導入の立場をとってきたはずだ。いつのまに変えたのだろうか。もちろん、石破氏も導入を期す法案には賛成していた。
憲法で、合区をなくすために地方自治体を書き込むことは、道州制の導入を放棄することとひとしい。なぜならブロックごとの人口単位が一千万にもなる道州制は、一票の格差という点では予め均等になるからである。書き込む動機がない。
無責任なのは石破氏に限らない。もし合区が都道府県への帰属を壊すのが嫌で憲法改正したいのであれば、道州制については どう総合するのか、自民党は明らかにすべきだ。
たとえば旧母体保護法の補償問題では宮城県が突出して違憲行為をしていた。調査ジャーナリズム・ワセダクロニカによると、各界が一体となって不妊を広める広報をおこなっていたという。この問題は当時の厚生省が推奨していたので分権論のみでは扱えないが、日本が、中央集権制で水平に この国を指導していったわけではない。
そして今日、違憲の疑いが強い「条例」も採択されている。そうした「自治の暴走」においては、中央が責任を以って地方を是正すべきだ。
死に際を見極めろ!Final
ライオン・パーマ
駅前劇場(東京都)
2019/12/11 (水) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
真骨頂をみた気がする。
溢れんばかりの笑い。しかしコテコテではない。
改めて思ったのは「台詞力」だ。シェイクスピア調といえばそうなのだが、聴きやすい。ごちゃごちゃなのに無駄がない。
「デカもの」であるが、パラレルワールドのごとく、異世界を飛び回っている。脚本と脚本の境界線を行き来し、終点がわからない。その面白さがある。
やはり この劇団のオールスターは賞賛されてしかるべきだ。個人的にはニートネタで観客が爆笑するのには時代遅れというか首を傾げたが、それは演じた人のなせる技?ともいえる。
彼女にとって無敵の世界
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
ライオン・パーマ版 哲学的『ソフィーの世界』
店員A「初入閣を 果たした高木 復興相ですが、地元 福井県での疑惑から『パンツ大臣』との呼び声も一部では あがっています」
店員B「女性閣僚3人は 早くも辞任を要求する声明を だしました」
店員A「ださねえよ!本人も、週刊新潮や週刊文春の記事は、『事実では ない』って全否定だし、いくらエモーションすぎるよ!」
店員B「 『安心してください、ちゃんと、穿いてますよ、アタマに』」
店員A「政治家として矜持くらいもっとけ!そして、『劇団ライオン・パーマ』は どこいった!」
店員B「あぁ、そうか。『ライオン・パーマ』、初のファンタジー作品でしたけど、あれ、落語の三題噺だろ?『浦島◯◯』と『走れ◯◯』と『銀河◯◯◯◯◯』がハードボイルドに混ざり合い、短編集とも、長編とも、オムニバスとも 表せない、それこそ、 “ファンタジーの靄”だったよな」
店員A「コメントに文句は ないけど、伏字の箇所 気をつけろよ」
店員B「まぁ、私も、伏字の箇所に ついては不適切だとか、そういう認識は ありますが、なにせ、調査委員会が そう いうもんだから‥」
店員A「おまえ、『吉田調書』か!」
店員B「あと、『ライオン・パーマ』のジョークは好き です。演劇の熟成肉だと思います」
シカク
企画演劇集団ボクラ団義
サンモールスタジオ(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
暗転ミステリーだけに、終わらない
非常に凝った脚本が、とにかくインパクトであり、「いい幕引きだ」という予定調和を超越するのだ。
劇団オールスターは総勢出演。しかし、基本は4人芝居の少人数編成である。
私が観た回は大看板•沖野が出ていたが、根っからのファンである層に加え、演劇に熟知した層、初見の層も、真剣に、集中して観れる傑作だったと思われる。
タイトルにあたる『シカク』を、国語辞典で巡った作家の姿が ステージに ひっそり いた。
「四角」
「視覚」
「死角」
そうした単語を感性的に捉え、落語家のように組み合わせていく脚本は和の技巧だ。
飲み会死ね(ご来場下さいまして、誠にありがとうございました!!!!!!!!!)
宗教劇団ピャー! !
BankART Studio NYK(神奈川県)
2013/01/21 (月) ~ 2013/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
ピャーを世界遺産に。
これは、一体なんなんだ??
目の前で繰り広げられるものは、現実なのか?、それともバーチャルなのか?
宗教劇団ピャー!!よ、今宵 お前らを日本の世界遺産候補として任ずる!
叫び声が、柳瀬のアニオタ系美声が、港町を万里の長城に変える!
二つのベッドと卓球台を舞台セットに、ハチャメチャだけど、“社会性’のある演劇。
しかし、宗教劇団ピャーに挑む愚かどもよ、覚悟せよ。
これは、単なる演劇ではなく、誰しもの頭をも一新させる絶大極まりないステージである!
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
負け組は気から
どうしてだろう。
デパートの試食コーナーで、生ハムを何度も口に運んでしまう感覚だ。
子供騙しじゃない。彼らの「笑い」は適度なエスプリを含み、時代批判精神を保ちつつ、その場にいる観客を「勝ち組」に錯覚させる術がある。
『男は二度死ぬ~』。人物相関図が複雑だ。ショート・ストーリーズにも思えてくる。
若干のネタバレかもしれないが記す。
遊園地のヒーロー・ショー出演者が「墓場」なら、ドラマ・シーンをどう喩えたらよいか。うむ。「働き盛り」だろう。
今、汗だらけの者たちが「働き盛り」を過ぎし棺桶の幻という、この現実。しかし、『ライオン・パーマ』は そこにもメッセージを託そうとしない。
用意するのは「笑い」だ。そして、上品で知的。この謙遜がいい。
フィクション・モテギモテオ
ライオン・パーマ
駅前劇場(東京都)
2017/08/17 (木) ~ 2017/08/20 (日)公演終了
私たちは全力でホラーに挑みます!
ライオン・パーマ
駅前劇場(東京都)
2020/09/23 (水) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
やっとノーマルを目の当たりにした。もちろん、劇場という迷宮に入るまでは、これでもかというくらいの対策をしている。マスク義務化、体温測定、発声しなくて済むチケット発券システム。
他の劇団だと「表現」が腐りかけても、妥協してしまう。だが、演劇とは世界を作っていく行為なのに、およそ不自然なマスクが介在して、そこを都合よく省ける能力が私たちにはあるだろうか?アントンチェーホフの戯曲に白い布を身につける人々がいただろうか?これでは非日常の時間軸なぞ、現実に取って変わってしまうだろう。
マンネリズムを避け「ホラー」と銘打ったものの、さすが、そこはライオンパーマだ。一筋縄ではいかない。いや、深慮すれば、タイトルに仕掛けが施されていたのかもしれない。逆さから読めば(読んでいないが)「ラホー」だ。響きからして軽やかなこと。これぞライオンパーマだ。ありがとう。
さて、冗談はこの辺にして、オムニバスが絡み合う 快感。むちゃくちゃに、理路整然に、責めてくる。そんな2時間だった。
良い話で終わらせばよいのに、それでよしとしない、褒められない捨て身。「禁断の関係」みたいなものに熱くなったと思ったら、さらなる どんでん返しが待っている。いや、それすらも返すのかもしれない。あぁ。何なのだろう、この初秋は。