monzansiの観てきた!クチコミ一覧

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彼女にとって無敵の世界

彼女にとって無敵の世界

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

ライオン・パーマ版 哲学的『ソフィーの世界』
店員A「初入閣を 果たした高木 復興相ですが、地元 福井県での疑惑から『パンツ大臣』との呼び声も一部では あがっています」



店員B「女性閣僚3人は 早くも辞任を要求する声明を だしました」



店員A「ださねえよ!本人も、週刊新潮や週刊文春の記事は、『事実では ない』って全否定だし、いくらエモーションすぎるよ!」




店員B「 『安心してください、ちゃんと、穿いてますよ、アタマに』」



店員A「政治家として矜持くらいもっとけ!そして、『劇団ライオン・パーマ』は どこいった!」



店員B「あぁ、そうか。『ライオン・パーマ』、初のファンタジー作品でしたけど、あれ、落語の三題噺だろ?『浦島◯◯』と『走れ◯◯』と『銀河◯◯◯◯◯』がハードボイルドに混ざり合い、短編集とも、長編とも、オムニバスとも 表せない、それこそ、 “ファンタジーの靄”だったよな」



店員A「コメントに文句は ないけど、伏字の箇所 気をつけろよ」



店員B「まぁ、私も、伏字の箇所に ついては不適切だとか、そういう認識は ありますが、なにせ、調査委員会が そう いうもんだから‥」




店員A「おまえ、『吉田調書』か!」





店員B「あと、『ライオン・パーマ』のジョークは好き です。演劇の熟成肉だと思います」


ネタバレBOX

店員A「わかる。銭湯を『男湯』『女湯』で分けるのでなく、それが『濃』『平』だったのは、シュールな笑い が溢れていましたね」



店員B「『メロス』が『平』へ消えていく。その後、仲間が追うように入ろうとするんだけど、番頭が『あなたは 違う』って(笑) 演劇から したら 『感動の再会』が お約束であった。それは予定調和だともいえる。しかし、初歩的な オトボケが その予定調和を崩す。『コントの笑い』だぜ」



店員A「当て書き でしょうね、おそらく」













硝子の途

硝子の途

劇団ヨロタミ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/09/25 (金) ~ 2015/09/28 (月)公演終了

満足度★★★★

ヨロしくおタのミもうしあげます
店員B「いやあ、歌あり、踊り あり、夢いっぱいの 2時間10分だったな」



店員A「おまえ、中澤さん から『今回はミュージカルは ない』と念 押されたろ!」



店員B「失礼しました」




店員A「さて、『劇団ヨロタミ』1年ぶりの本公演ですが、集団作業としてのブランクを微塵も感じさせない 舞台さばき 。これが 22回目の秘訣なのでしょうね。喫茶店マスター役の作・演出・坂本直季氏は奥の方から「少年犯罪、その後」を傍観する機会が 多かった。俺は、その 表情に 作り手の「感無量」が滲みでてると思ったけど」




店員B「うん。役者の 誰ひとり 現役高校生には みえなかった」




店員A「おまえ、表層的すぎるよ!」




店員B「松田聖子の セーラ服姿は事務所関係者が きっちり咎めるべきでした。いくら『聖子ちゃん』とは いえ、50代女性の常識、配慮というものが あって しかるべきです」




店員A「だから 何の話なんだよ!」




店員B「では、『少年犯罪』に ついて一言 述べさせて もらいますよ」





店員A「いいですよ」





店員B「今、小学生の暴力件数が 伸びていることが 文部科学省のデータで明らかに。
把握してるだけでも1万1468件」



店員A「人によって答えはバラバラだろうけど、地域のコミュニティが希薄だから かな」




店員B「いえ、いえ。
低学年の『暴力』は 防犯ブザー 効果てきめん だよね。
子どもは 子どもで いつ『加害者』になっても おかしくないってのにさ、ウチの子は『加害者』とは無縁だわ、ワタクチが心配するのは『被害者』になっちゃう、それに尽きるわ。はい?アホの戯言だぜ、まったく。

人様に迷惑を かける恐れも ある。
これがさ、世間の掟ってもんじゃん。
親は親で、仕方ない奴ばっか だよ、低学年の子もつ親はとくに。
『どうやって守るか』しか 案じないからさ。
スマホのGPS機能で居場所を 24時間 監視するわりには『どうやって世間を生きるか』の保護責任を放棄してるんですよ。
少子高齢化だから暴力件数の伸びは 実質2倍、3倍のペースだしね。
文科省は、中学校、高校の件数が鈍化してる、というか、グラフそのものは下がってきてます、とか いって詭弁をやめないけど、分母からしたら そりゃあ そうだろう、って話。
そのくせ、人工中絶率は いまやダントツの世界トップらしい。暗いよな、日本の未来は」
http://digital.asahi.com/sp/articles/ASH99560BH99UTIL02G.html



店員A「一言に しとけよ!」




店員B「もっと?」



店員A「いいよ、充分、充分」




店員B「『トンネルを抜ると、そこは雪国で あった』」



店員A「文字数 稼ごうと しなくていいよ、川端康成で!」





店員B「『エレベーターを抜けると、そこは劇団ヨロタミだった』」




店員A「文豪っぽく 語るんじゃねえ!舞台の感想まで いつに なったら辿り着くんだ!」




店員B「以下、ネタバレで」




店員A「いい加減にしろ!」




ネタバレBOX

工事中
「結婚しようよ」終演しました。ご来場誠にありがとうございました!

「結婚しようよ」終演しました。ご来場誠にありがとうございました!

The Stone Age ヘンドリックス

浅草見番 (東京都台東区浅草3-33-5)(東京都)

2015/09/11 (金) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

こんな知り合い、いたら人生 ひまわり色やん




落語通A「『第6回したまち演劇祭in台東』参加作品です」



落語通B「旧遊廓の歴史が街並みに色濃くのこる国際観光都市・浅草でやったわけですが、この劇団、【コテコテの関西】じゃん」




落語通A「まぁ、それがミスマッチ、という意見もあるでしょうし、われら貧乏長屋のシンパシーだ、という意見も あるでしょう。アフター・トーク出演の 今古亭 志ん輔は【こんなグダグダ東京人には できないよ】と おっしゃって ましたよね」



落語通B「ああ。関西人の琴線に触れ、座布団 もってかれた噺家ね…」



落語通A「どうしてアフター・トークに『笑点』のシステムを導入しな きゃ いけないんだよ!ゲストだ!」




落語通B「あと、俺は以前、東日本大震災を描いた『天狗』の作品を観劇して ますが、むしろ、東京進出第二弾の作品で思ったのは、【コテコテの新喜劇】だったこと だよね」



落語通A「それは同意する。『よしもと新喜劇』の、例えば…間寛平と池乃めだか でしょう?」



落語通B「まあね。ちなみに、わたくしは最初の30分間 笑いに笑ったから、恩返しとして、帰路はお土産に『肉団子』30個 買いました」




落語通A「物販いってやれ!」







見よ、飛行機の高く飛べるを

見よ、飛行機の高く飛べるを

ことのはbox

明石スタジオ(東京都)

2015/06/17 (水) ~ 2015/06/22 (月)公演終了

JAL社員よ、お前ら全員 観ろ!






もっと、広く、大きな劇場で観たい、と思った。


セット、衣装、語感に至るまで、ことごとく『緻密』である。

物語は下手の『談話室』において、女学生の 忌憚ない会話が繰り広げられる。(教師だろうが)異性と二人きりに なってはならないーその校則が、彼女らを大胆に、また特別な存在としての 一種の地位を与えていく。




新劇団は 自ら記す脚本を中心に、それらを集結した「新しいもの」を客や同時代の演劇人に提供しようと、いわば必死だった。高校生が大学生に進級するにつけ『顧問の先生』から脱す。その独立心の延長である。そうした常識に照らし合わせると、彼らは古臭い、田舎の『御新香』なのだろう。だが、しかし、真摯な演劇態度は「新しいもの」から 一周した、つまり、クール ジャパンよろしく、『和』の文化的素地を再検討した末の『新しい御新香』だともいえる。






忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

この人(久保田 晶)とは話が合わないが、OK牧場

戦国時代“本能寺の変”は未だ、
日本一大事だ。


“信長の遺骨が見つかっていない”

“光秀の首を確認したのは秀吉だった”

“家康が少数の部隊で伊賀抜けした”


この3つの“史実”が、久保田 昌によって謎解きされ、そして世に刊行される。
それは新たなる夢想の歴史教科書とも呼ぶべきものだった。


『ボク団』の凄い点は観客を飽きさせないプロ意識だろう。
あくまで、休憩10分間を跨ぐ、3時間である。しかし、時代劇の予定調和な退屈さとは対極に位置する。

大神らが笑いのポジションを務めているのだ。
“はっとする”、残虐なシーンの数秒前に、こうした“笑い”がある。
これは絶妙だった。

男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

負け組は気から

どうしてだろう。


デパートの試食コーナーで、生ハムを何度も口に運んでしまう感覚だ。

子供騙しじゃない。彼らの「笑い」は適度なエスプリを含み、時代批判精神を保ちつつ、その場にいる観客を「勝ち組」に錯覚させる術がある。

『男は二度死ぬ~』。人物相関図が複雑だ。ショート・ストーリーズにも思えてくる。

若干のネタバレかもしれないが記す。
遊園地のヒーロー・ショー出演者が「墓場」なら、ドラマ・シーンをどう喩えたらよいか。うむ。「働き盛り」だろう。

今、汗だらけの者たちが「働き盛り」を過ぎし棺桶の幻という、この現実。しかし、『ライオン・パーマ』は そこにもメッセージを託そうとしない。

用意するのは「笑い」だ。そして、上品で知的。この謙遜がいい。

山本圭壱お笑いLIVE

山本圭壱お笑いLIVE

山本圭壱LIVE事務局

駅前劇場(東京都)

2015/01/19 (月) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

お笑い界に絶対必要な“デブ”です!





この男が充電した期間は8年半ではなく、100年分だろう。

フィギュアスケーター・羽生結弦や浅田真央をもじった「新ネタ」は爆笑であった。




もしも、この男を「観たい」日本中の人々の願いが成就したならば、東京ドームを満席にできたかもしれない。
極楽とんぼ・山本圭一が8年半ぶりに姿を現す。50人程の報道陣に加え、謹慎期間中もファンだった人々、野次馬が騒然とするなか行われたのは、下北沢・駅前劇場。
「密室」の『山本圭一お笑いLIVE』を、抽選に漏れてしまった3万人のために、今報告したい。



「お帰りなさーい!」

山本圭一だ。

拍手と 予想外のエールに目を赤らめ、「山本圭一お笑いLIVE、始まります!」を宣言。熱狂的だった。

シカク

シカク

企画演劇集団ボクラ団義

サンモールスタジオ(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

暗転ミステリーだけに、終わらない




非常に凝った脚本が、とにかくインパクトであり、「いい幕引きだ」という予定調和を超越するのだ。

劇団オールスターは総勢出演。しかし、基本は4人芝居の少人数編成である。
私が観た回は大看板•沖野が出ていたが、根っからのファンである層に加え、演劇に熟知した層、初見の層も、真剣に、集中して観れる傑作だったと思われる。

タイトルにあたる『シカク』を、国語辞典で巡った作家の姿が ステージに ひっそり いた。

「四角」

「視覚」

「死角」


そうした単語を感性的に捉え、落語家のように組み合わせていく脚本は和の技巧だ。









たとえばあしたのこと、とか。

たとえばあしたのこと、とか。

ともサンカク

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/11/16 (日) ~ 2014/11/17 (月)公演終了

静かなるエール

すごい女が現れた…

「一人芝居」といえば観客は想像力を総動員しなければならない。
ところが、小林知未は「想像を膨らます」演技をする。 身を委ねていればいいのである。


舞台の袖で幅広い「女」に着替える彼女はメディアとの融合を果たしていた。
例えば、「DVD」である。

ネタバレBOX

婚約した」という小林を祝う演劇人が「おめでとう」のエピソードを披露。その幸福空間の前に「観ている」設定の小林の寂しく、孤立しており、漂う表情が いい具合に「対照的」であった。
夫婦生活の破綻か。

時々、テレビ番組のお笑い番組が「空虚」に感じることがあるが、それだ。
薄暮(haku-bo)

薄暮(haku-bo)

intro

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

地方都市の哀愁なるものを再発見







一度、ラーメンをすすりに訪れたい街、札幌。

電波塔、雪祭り、白い恋人 が観光名所だ。しかし、そのショーアップされた街にも、私たちと何ら変わらない日常風景がある。 同市出身・イトウワカナ自身の「思い出」だ。

「東京に雪が降った」。
ひたすら衝撃的だったのが紙を利用した「雪」。これは、トイレット・ペーパーのように役者がグルグル引き、一夜のうちに「銀の世界」と化す札幌の日常風景を静かなまま紹介するシーンである。

もっとも、個人の「思い出」が連なる「記憶の世界」だ。フィルターにかけたとはいえ、その「銀の世界」も、いわばイトウワカナの郷土愛に等しいのではないか。あるいは、それはノスタルジックだろう。

終演後のアフター・トークで語ったイトウワカナ。つまり、「アンケートから判ったことは、北海道の作品を描いても、感想は全国ほぼ均一化している」。
多くの観客にとり地理的に「観光地」であるのが「札幌」だ。ところが、彼女の「思い出」は、家、学校、アイドル、時々の流行を通し、普遍だった。興味深い。

アンサータン・ストーリーズ

アンサータン・ストーリーズ

演劇ユニット「クロ・クロ」

劇場MOMO(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

消えつつある心象バイアス劇、復活!!!
体力がある…



演出家は「存在を信じる」ことの大切さを説ている。いわゆる唯心論だ。


白昼夢をペンに_そんな能力を盾に、3本の連載を抱えている売れっ子ライト・ノベル作家・島津。彼の数日間を、様々なハサミで紋切りした設定だと思われる。

観客は、例えば それを紹介するシーンにおいても「白昼夢」の疑惑を抱かざるをえない。

作家の心にあたる「白昼夢」と役者が紡ぐ「現実」の物語。その色はパープルである。


・私が非常にカルチャー・ショックを受けた映画に『ミスター・ノバティ』がある。ハリウッドの金を湯水のように使った大作だが日本においてミニ・シアターでしか上映されなかった「公開お蔵入り作品」だ。アメリカの映画評論家もボロクソだった 。「全米は泣かなかった」のである。

「白昼夢」に陥った老人が過去の少年時代から回想。だが、その「夢」が人生(現実)の選択肢ともなり、バイク事故死、放浪者、科学者等、何と次々に現実化。サイエンス・ファンタジーである。


「唯心論」の世界に観客を導くも、視覚的には一応の「現実」となっており、やっぱり この点、『クロ・クロ』舞台はカルチャー・ショックの再来だった。

ネタバレBOX

主人公の島津を演じた役者。
開演後、小説家の仕事場であるデスクに直行するのだが、「移動」という、たかだか数秒に数年分の生活が あった。


「白昼夢」の小説家をイメージすると太宰治だろう。 ところが、島津が 大家さん 、旧友と交わす会話のレスポンスの速さには驚いた。 これは反射だ。「白昼夢」を文字化する商いの島津は、現代社会の、あるいは他者の、完全なる『鏡』だったのだ。



・おそらく、映画『桐島、部活やめたってよ。』のように、大学時代の親友は霧に覆われた方がミステリアスだったろう。実際、文芸サークルのシーンにおいても親友は顔を出さなかったわけであり、むしろ いっそのこと「秘密のベール」に包んだ方が観客の心に反響した可能性がある。
暗転セクロスw

暗転セクロスw

暗転セクロスw 制作委員会

上野ストアハウス(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

心の内と腹の底を手に取るように演技




いわゆるラブホテルに宿泊する一夜の住民だ。
6本の短編集が バリエーション豊かに、オチである「暗転」に向かい錯綜するわけだが、私が思ったのは「心の内」である。

通常、こうした種の密室劇は妖艶な衣装をまとう秘密のベージュだろう。ところが、この芝居は、シモネタにおいても恥じらって隠す部分のない、隠すことのない、小学生的会話である。性的にだれも傷つかない観劇体験が 「女性脚本家」の為せる技だった。


「暗転」ごとにラブホテルの部屋が交替していく。救急車といった環境音により証明される「時間軸」が 幕末の志士まで呼び、遊んでいるようでもあった。

演技はわざとらしい。

紅蓮、ふたたび

紅蓮、ふたたび

ACRAFT

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/10/08 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

数年ぶりに感情移入できる「悪役」が現れた




「完成度」の高さである。

ロジックとイリュージョンの因数分解が世にいう「久保田マジック」だと定めよう。
彼は、主宰を務める『企画演劇集団ボクら団義』だけではなく、幅広い劇団とコラボする取り組みをみせているが、脚本数を重ねるごとにそれが魔術的に分解されていくのである。
竹石ら、座組のキャストを積極的に起用し、役者と脚本家両者が研鑽する好ましい循環をうみだしている。



今回の劇。殺陣のシーンが「鬼気迫る」ものだったと思う。 アニメーションを立体化した「2.5次元」のステージではない。
キャラクターの「背景」を しっくり描く一方、「殺陣」に その一連性はない。観客は、誰が負傷するか不詳だ。ちなみにこの感覚をラスト、展開面によっても再度、味わうことになる。これが「久保田マジック」である。

けんじの大じけん

けんじの大じけん

劇や

シアターシャイン(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★

恥ずかしいくらい、ストレートにTHEお芝居する





「悪人•賢治」を岩手県民が認めるか否かは別だ。

『注文の多い料理店』出版前の宮沢賢治に、「ずる賢い大将」のカラーを染色した 本舞台を観た県民は首を傾げるだろう。もちろん、戦時中、文科省が国民学校教材に指定した「勤勉の人」だ。「東京もんが 賢治先生の業績を貶しやがって」が心中だろう。

ネット・サーフィンをしていると、宮沢賢治ご子息のインタビュー記事があった。子息は、「賢治は岩手県をイーハトーヴ王国にしたかったのでは」と述べている。執筆業・農業指導 の両面において実務的な「王国建設の方針」があったのだ。それは 宮沢賢治をついつい「空想の人」に片付けてしまう学校教育への抗議でもあるだろう。彼が宗派を替えてなお、「この世に極楽浄土を建設する」ことを最終地点とする浄土真宗の共鳴者だったことは明らかだ。つまり、本舞台は、「現世利益」を信者数に結びつけ発展した浄土真宗の その残響音において宮沢賢治は「悪人・賢治」だったという壮大な仮説である。


誤解をしてはならない。浄土真宗信者が「悪人」ではない。本舞台において、宮沢賢治は幾度となく御祈りするわけだが、「悪業」の数々を、「王国建設」のための清き犠牲としている点を見逃せない。
『印籠』と『カンパネルラ』では不釣合いだろうか。夕方に お茶の間を占拠してきた黄門様こと水戸黄門。若いころ不良だった。そうした偉人伝からすれば、「青年期」の「悪人・賢治」は「若気の至り」ゆえの至上主義ではある。






NO MOON,NO SUN

NO MOON,NO SUN

Trigger Line

劇場MOMO(東京都)

2014/10/04 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

「プリンセス•ダイアナ」暗躍するファクターを描く





「プリンセス•ダイアナ」の笑顔と悲劇に、連合王国のイメージが左右された年だった。1998年のことである。

マリリン•モンロー、エルヴィス•プレスリー、マイケル•ジャクソン…

これら「世界のスター」に共通する語り草は悲劇である。

『劇団東京乾電池』柄本 明氏が指摘するには「大衆はスターの不幸を楽む。不幸になれ、なれ、と血祭りにあげる」らしい。言い換えれば、「世界のスター」を上昇気流にのせるのも大衆だし、雷雨を降らす のも また大衆である、という支配原理である。



もっとも、世の中は そう単純化はできない。複雑怪奇である。結局のところ、「大衆」も新聞社、テレビ局、出版社、広告会社、ロビー団体、財界、政党、宗教指導者等々の「メディア•コントロール」支配下にある奴隷にすぎない。


そうした支配者を仲介しうる人間を「ファクター」と呼ぶ。

この劇は劇場空間にインパクトを残した。クールなそれは、「プリンセス•ダイアナ」の悲劇に暗躍していく「ファクター」にあったと確信する。英国諜報機関説が巷で囁かれるが、「仮説の部分」がなんとも人間的である。
ダイアナと事実上交際関係にあった富豪の「熱」、その身辺警護を勤めた漢たちの「熱」、パリ高級ホテル従業員の「熱」が、史実という名の冷空間に小さく発火するヒューマニズムのようだった。


ただし、「火花」はリアリズムの否定である。ヨーロッパは「契約社会」「ポスト(役職)社会」だ。日本の『半沢直樹』は部下が上司に楯突くドラマであるわけだが、『プリンセス•ダイアナ』周辺は資本家階級だろう。主人に対し胸ぐらを掴む労働者は即効、クビになるはずだ。
感情的に叫んでさえいれば「見せ場」か。
そうではない。

『劇団チョコレートケーキ』が人気を博したのは「威厳」(リアリズム)のためだが、「階級社会」のリアリズムが 欠けてしまっていることが、「プリンセス•ダイアナ」の史実を 完全に舞台化しえない今作の答えだろう。


勇気出してよ

勇気出してよ

小松台東

OFF OFFシアター(東京都)

2014/10/06 (月) ~ 2014/10/08 (水)公演終了

優しい宮崎弁、優しい つながり





宮崎を全国区にしたのが東国原英夫前知事だった。

彼は代議士を務めていたころ、当時所属の政党党首•石原慎太郎氏を「うちの大将」と形容していた。私の前に臨席した 「アタマ」(後頭部)を拝みつつ「あんたは石原軍団」の一員かと、その切り替えの速さに驚いた思い出がある。余談はさておき、宮崎すなわち 地方政治のイメージくらい しかなかった。


この芝居の舞台は「喫茶店」だ。
宮崎の牛、豚、金柑が出る幕はない。唯一の「ご当地」は 役者が方言指導を学んだであろう宮崎弁である。

「だっちゃ」が可愛い。

九州弁に「強面」を感じる本州人もいようが、この芝居では「美顔整形」してしまっている。田舎の「ぬくもり」「優しさ」「温かさ」も残存する宮崎弁は、舞台全体におけるアクセントだった。









銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

劇団フォーサム

APOCシアター(東京都)

2014/09/27 (土) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

この幻想を“聴く”私たちは常に思想的赤ん坊である



岩手の詩人、宮沢賢治。その代表作『銀河鉄道の夜』は初めて購入した文庫本だった。


岩手の田舎町に農林学校教師を勤めた宮沢賢治が どうして「西洋的」街並みを建設していったか。キリスト教徒ではない。浄土真宗信仰を幼少期にもちながら、「カンパネルラ」「ジョバンニ」といった“外来語”を自然に内在化する。

『銀河鉄道の夜』は死語の噺であり、浄土真宗の死生観が反映された幻想画といってもよい。ところが、『銀河鉄道の夜』はそうした「仏の教え」を高見から諭す寓話では絶対にない。キリスト教的「愛」を、当時からすればエキゾチックな街、車窓、宇宙空間において思想的に宥和していったのである。



※続く


TWO DASH

TWO DASH

川崎インキュベーター

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

神戸原論と「地のDNA」




腹筋善之介と会ったことがある。

「会った」と記したが正確には「遭った」かもしれない。


下北沢の駅前劇場で開演を待つ、私。すると隣にいた男性客が「ちょっとだけ椅子をズラして頂いてもいいですか?デカい男が三人並んでいるので…まあ、あんまり動かすと怒られちゃうので、ちょっとだけ」


この男性こそ腹筋善之介氏である。

「観劇圏」を確保したいけど、「制作サイド」にも配慮しなければならない。「あんまり動かすと怒られちゃう」の一言が舞台人だと思った。



今回、腹筋氏が川崎を開催地に催す『キンフェス2014』。


1996年、神戸市在住だった腹筋氏が阪神大震災を被災した際、当時住んでいたアパートの向かい「洋館」を臨時避難所としたらしい。所有者である大家さんがアパート居住者に開放した空間だった。


腹筋氏は翌朝、実家のある大阪へ自転車帰郷したそうだが、「時間は一定ではない」、極めて特殊な「場」が本作を上演するキッカケとなった。


実は この噺、前説にすぎない。新書における「はじめに」に等しいボリューム。まるで舞台全編を統括する案内人だ。


源平の時、終戦後の時、そして阪神大震災の時、それぞれの時代に「動き」がある。
震災後の「ゆっくりとした空間」が、前時代の若者を鮮やかに躍動させるためである。

別の舞台を観劇した腹筋氏が私に放ったメッセージは「動かすと怒られちゃう」だった。
『キンフェス2014』はどうか。
この要望を逆回転するベルトコンベアー、すなわち それ(腹筋氏)は工場長であった。


Libido

Libido

創作集団Alea

シアターKASSAI(東京都)

2014/09/18 (木) ~ 2014/09/21 (日)公演終了

満足度★★★

現代人はホラーだ




成績最下位だという営業職の男性会社員にフォーカス。
『サラリーマン新党』の旗がなびいた時代なら ともかく、若年層のフリーター化が進んだ今、その肩に「哀愁」はない。
だから「ブラック企業」というスパイスが必要である。この調味料を観客が自主的に注ぎ、はじめて「ホラー」は成立する。


This Planet is Ours

This Planet is Ours

劇団だるい

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

お前ら全員、「コント師」になれ!




学園祭。薄暗い教室から漏れる、20代の「笑い声」。
ダンス・サークルが正門前のステージで「衆人」を相手に踊り狂う数十メートルに、その熱狂空間がある。


劇団だるい の「短編集」を二時間近く観劇して 残った感覚は それだった。つまり、「混沌」だ。

彼らは「社会人劇団」を自称するが、30代に迫りつつある年齢の人間が「青春現役中」なのである。しかも、驚くべきことに、その「技術」は「学園祭」ではなく、「マイナー」でもない。
彼らは青いまま成長していく「アスパラガス」だ。

もっとも、「企画説明」のコントには 「社会人」がみられ、どこか世間を醒めた目で観察し、「笑い化」する手法を発揮していた。

ネタバレBOX





「法廷」と「企画」のコントが爆笑だった。

前者は 離婚調停中の夫婦に、「応援団」がつくコントである。「高校野球」のアルプス・スタンドで球児に声援を送る「学ラン」を浮かべてもらえればわかると思うが、夫婦の当事者が証言する間に「応援」してしまうのだ。

法廷のシーンである。しかし、夫婦と「応援団」が別々

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