monzansiの観てきた!クチコミ一覧

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MASKED HEROES

MASKED HEROES

藤原たまえプロデュース

小劇場B1(東京都)

2020/06/30 (火) ~ 2020/07/05 (日)公演終了

満足度★★★★


「mask」をテーマにした短編集。当然、ウィルスや花粉などを防ぐ用途に使う“アレ”がお披露目されるが、それだけではない。時事的でありエッジが効いているが、劇団の豊かな発想もオンパレードとなっており、本質を楽しめる。
ただし、欠点を指摘しなければならない。それは表情を読み取れないことだ。このことは感染症法予防の対策をして上演する未来の演劇において、やや重い課題だと思う。つまり「ニューノーマル」を「ニューノーマル」にしてはいけないのだ。今回は時節柄、文化と離ればなれにさせられた観客の「今」にトキめいたが、こうした試みは奇をてらっているから価値が生じるのであって、持続することはない。そのことは表現者も理解している。

第2話の物語における女性社員のやりとりには笑ってしまった。緊迫感のある現場、それでも変わらない ふとした一コマが、滑稽さを増幅させている。

晴天のミモザ~蒲田行進曲より~

晴天のミモザ~蒲田行進曲より~

ThreeQuarter

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2020/03/21 (土) ~ 2020/03/22 (日)公演終了






社会人劇団というワードは好きではない。
もし、これが通じるのであれば、「劇団」というのは専業ということになる。しかしながら、星の数ほどある全体で「食っていける」のは一握りだ。

このような時代だから述べるが、平田オリザの考えのとおり、欧州とは異なって文化芸術の実体を担っているのは民間セクターだ。つまり、地域ごとの劇場があり、公的セクターに雇われているわけではない。「収入保障」が得られない。

8割は生活手段との両立だろう。ではアマチュアかといえばそうではなく、料金からいっても、質からいっても、プロと遜色しない。年間観劇数がコンスタントに200を超えていた私がいうのだから間違いない。これをセミ・プロと呼ばずして何と呼ぶか。つまり、日本の演劇を支えているのは巨大な中間なのである。社会人劇団と区切るのは これを見れていない。



それでも、私は スリー・クウォーターには好意的だ。いちど観劇してみればよい。つかこうへい の偉大さを改めて感じさせてくれる。荒削りな役者陣の熱量を吸収する、汗が沁みわたる不朽の名作たちだ。

映画役者の端くれである「大部屋俳優」ヤスを演じる ぽんず の哀愁が眩しい。そして、少年のような純粋な目とのギャップ。

プロレス・シーンなどでの脚色も、それなりに笑えた。




鳰の海

鳰の海

劇団TRY-R

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2020/01/31 (金) ~ 2020/02/02 (日)公演終了






天下を取るまであと一歩に迫った織田信長は評価が二分する。人によっては その先見性を褒め称えるし、肉親ですら見捨てたそのリアリストぶりは残虐であるとも言い伝えられる。いずれにせよ、現代の世からすれば典型的な「パワハラ」タイプの上司だったのだろう。

その子孫が司直に訴えた。訴えられたのではない。フィギュアスケート界の一線者である織田信成さんは指導する大学の活動で、スポーツに費やすだけでなく学業にも励めるよう「改革」を浸透したかったらしい。いわゆる文武両道といったところだろう。しかし、抵抗勢力とばかりに立ちはだかったのが女性上司であった。その対応に陰湿さなど、問題がなかったかが問われることになる。

彼からすれば精神的悪質タックルだろうが、チームワークよろしく氷上ならぬ舞台上で台詞をパスしていったのが本作である。日本大学芸術学部演劇学科の生徒が このような発表の場を設けるというのは珍しい。しかも、小劇場の実力派俳優3人も加わっている。


私は「悪しき平等主義」には賛成しないポジションである。これを明らかにしておいた方がいい。どうも、本作は妖精のようにアミニズム化しており、言葉遣いなどを幼稚化することによって超越性・絶対性をみせたかったように思う。しかし、ビジュアルからいえば、そこは学生に絞るべきではなかったか。つまり、「若い学生」という一覧に、中年の外部出演者が 妖精として その一員になることによる違和感みたいなものを抱いてしまう。また、個人的見解であるが、「20歳」がフレッシュとは思えない。16歳とか、17歳とか、いわゆるティーンエイジャーの専売特許だろう。


美代松物語

美代松物語

劇団芝居屋

ザ・ポケット(東京都)

2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★






東北の冬は寒い。痛々しいほど、雪が積もる。白化粧などと甘美なことを言ってられないほど、のしかかる。


津軽海峡を隔てた北海道の冬は観光だ。その結晶が、商いの恵みとなり、栄えさせる。
北海道の地名の由来となったのは松浦武四郎という人物だそう。最終的には官僚に委ねられたものの、候補は5つあったらしい。
「日高見(ひたかみ)道」、「北加伊(ほっかい)道」、「海北道」、「海島道」、「東北道」、「千島道」。このうちの「北加伊道」が「北海道」に転じたとされるのが有力な説だ。音読みの「カイ」はアイヌ語であった。ともすると私たちは「北の海に位置する道」というふうに解釈してしまいがちだが、実相は、その土地のアイデンティティに寄り添っている。

翻って東北は どうか。列島の真ん中たる「近畿」から測って東の北に伸びている、という意味しかない。そこに差別の構造をみてとれるのである。



さて、本作は東北の海岸線沿いにある都市を舞台にしている、と思っている。現代劇でありながら、その作法や言葉遣いは格式高い。「東北」の形のごどく背筋を伸ばして観劇しなければ およそ適当ではないと思わせる風格である。

あらすじは以下の通り。一見さんお断りを代々守ってきた旅館の、「負債」を巡るトラブルから物語は始まる。 取り立てに来たのは任侠。この、応対しなければならない側の女将の矜持であるとか、敬語の使い方というのは昭和そのものであった。いや、バブルに浮かれていた時期もあったので、大正と呼んでも合点がいくだろう。

濃密な人間ドラマは省くとして、この劇団からは否応しに「土の香り」がする。悲しくも国民民主党の面々にはない。その土地に暮らし、生きてきた「軌跡」みたいなものが、現実として漂っているのである。

小劇場であるにもかかわらず、セットの早替えは賞賛するに値する。実のところ小料理屋の女主人の負けん気一辺倒な様子は やや誇張されようにみえた。だがしかし、それを差し置いても肉厚な作品だった。


死に際を見極めろ!Final

死に際を見極めろ!Final

ライオン・パーマ

駅前劇場(東京都)

2019/12/11 (水) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★





真骨頂をみた気がする。

溢れんばかりの笑い。しかしコテコテではない。

改めて思ったのは「台詞力」だ。シェイクスピア調といえばそうなのだが、聴きやすい。ごちゃごちゃなのに無駄がない。


「デカもの」であるが、パラレルワールドのごとく、異世界を飛び回っている。脚本と脚本の境界線を行き来し、終点がわからない。その面白さがある。


やはり この劇団のオールスターは賞賛されてしかるべきだ。個人的にはニートネタで観客が爆笑するのには時代遅れというか首を傾げたが、それは演じた人のなせる技?ともいえる。



珈琲店

珈琲店

劇団つばめ組

参宮橋トランスミッション(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/10 (日)公演終了







近世のベネツィアが設定と思いきや、俗な流行語も語られており、いかにも自由気ままである。ここは広場。コーヒ店、賭博場、踊り子の娘の家が軒を連ねる。

とある昼下がり、隣の賭博屋で借金をこさえた紳士がコーヒーを注文する。そこから、色恋・カネ・果ては名声の入り乱れる「男の世界」のオン・ステージが始まる。


いずれにせよ、濃い面々だ。ひょろっこい役者が紳士を演じるのも演劇的だが、やはり酸いも甘いも参じてきた年代だけに本格派だ。存在感が違う。


ところで、出番の少なかった宿の老婆が、やけにチャーミングというか、日本離れしていた。おどろおどろしいなぁ。

「La Fierté」(ラ・フィエルテ)

「La Fierté」(ラ・フィエルテ)

スラステslatstick

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2019/10/24 (木) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★★






終演後に西日本の劇団という情報を得たが、たしかに、些細なネタを重量級に変えていくねちっこさ はあった。

世界的「ファッショニスタ」の取材をとりつけた雑誌編集部3人の、奮闘を描くワンシチュエーション・コメディ。緊張感の張り巡らせれた雰囲気にとりおり入室するホテルマンのギャップが、可笑しい。


桃子と百波、ときどき齋藤、空から茜、大地に山脇

桃子と百波、ときどき齋藤、空から茜、大地に山脇

劇団鴻陵座

十色庵(東京都)

2019/09/10 (火) ~ 2019/09/15 (日)公演終了



飲み物、ごちそうさまでした。


暑い日差しの照りつく「埼玉の首都」こと赤羽の、マンションの地下に、その発表会場はあった。元はカラオケ店だったのだという。一階ではボクシングに励むスポーツの汗が動力となり、そこさしこに「若さ」が充満する。そして、階下に降れば、大学生の、語らんばかりの、観客とのセットマッチが用意されていた。



プレゼンテーション演劇とでも、名付けようか。何しろ、台本がなければ、演出家もいない、舞台監督もいない。つまりそれは、「私」という個体に拠ってしか1分間たりとも存在しえないという、正真正銘のボトムアップなのである。

演劇はトップダウン方式だ。もちろん役者だってディスカッションするし、舞台を司る演出家に対して、ときには指摘することだってあるだろう。健全だ。けれど、総体としての「作品」である以上は、演出家の世界観からはそう遠くにいけない。束縛されていないようにみえるアドリブ劇にしろ、やはり、メソッドという名の参考にすべき到達点を共有している。



翻り、彼ら彼女らは「私」を軸としている。ドキュメンタリー・タッチかといえばそうではない。観劇した一回目では主人公と、その心象風景を第三者的「私」の視点で介入していくという「メタ技法」がとられていた。これは使い古されてはいるものの、断片化というか、曖昧さを併せもっている。




二回目は主宰の男性。夏の期間、プールのアルバイトをしていたらしく、小麦色に焼けしている。語弊をおそれず言えば世界一カッコいいサルである。某ファミリーレストランでも夜勤に入っているそうだが、接客担当ではないので別に宣伝しなくていいのに、と思った。いえ注文させていただきます。

立教大学4年生。

さなぎの教室

さなぎの教室

オフィスコットーネ

駅前劇場(東京都)

2019/08/29 (木) ~ 2019/09/09 (月)公演終了

満足度★★★★








時系列やシーンをバラしてパズルを解くのではなく、淡々と示していくような展開だ。それはまた不条理的でもあり、その平坦さは退屈を感じさせている。



前説から「暴露」しているのでネタバレには ならないが、元看護師女性を脚本・演出の松本が演じている。代役だ。率直に述べてはこれは正答でもあった。なぜなら九州弁と地元っ子(コワモテ)ぶりは男性だからこそ「男性・性」(男性というわけではない)を再現しやすいし、狭い狭いインナーサークルを支配する心理学的根拠を与えていたからだ。相手に親身になる同調をみせながら、ある局面では、いっきに怒る。つまり、それは上からのチョイスでしかない。



そうやって支配された元看護師コミュニティの、「絶望」と「従順」は、たしかに日本社会に言われている闇でもあり、悲壮なまでに「石井」という固定ワードを連発されるシーンは、いみじくも保身への回避が従う側を従わす歯車に転化する、人間の滑稽さを象徴していた。



そして、強調しておきたいのはシュールであるということだ。インナーサークルの女性4人。しかし呼び方は「ちゃん付け」でも「名前」でも「ニックネーム」でもなく、苗字となっている。それが何を意味するのかといえば関係の薄弱である。いや、それだけで距離があるとは断じえないのだが、「夫」や「母親」といった家族の重みと このサークルを相対化したとき、あまりに内部でのパッションだとか、結束が欠けている。それどころか、支配する頂点にたっている女性以外は、確実な部分で感情を失っている。その、結果との落差に驚かされることになるのはつゆぞの観客席だ。





















ネタバレBOX









とても恣意的だと思ったのは、この物語が「実話」だったことを明らかにする舞台装置だ。それは2002年ワールドカップにおける、来日騒動が、ふと食卓の話題に のぼったことだ。これによりリアリティが増した。今までは固有名詞を ほとんど閉まっていたのに、このシーンをきっかけに「実話」だと、宣言したようなものだった。そして、終演後、やはり頭に浮かんでいた事件を題材にしていたことがわかった。

チラシに ばっちり書いてあったけど。


「予行」のシーンは笑いの終始であったが、これは、前説で演出だと明らかにされていたからである。シビアすぎる内容なのに。


舞台「GATSBY」

舞台「GATSBY」

BAlliSTA

本所松坂亭(東京都)

2019/06/19 (水) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★



こう書いては申し訳ないが、未完成であったように思う。チーム制をとっており、その回に出演しない「余剰」をサブ・キャストの大学生役として活かしているわけだが、いかんせん物語に関わってこない。


ただし、遭難して迷い込んだという、現在進行形のミステリーはおもしろかった。というより、奇怪さにリアリティを感じさせた。大げさなキャラクターであるのだが、無機質で、コメディタッチでありつつコメディを否定する構造となっている。



笑いをもっていったのが演出家だ。終演後、チェキの販売を説明する中「お気に入りのスタッフがいましたら…」と発言してしまったのだ。すぐに訂正したとおり、これは「キャスト」の誤りである。



ネタバレBOX

その演出家が、ミステリーをぶち壊した。本番中に事実上「乱入」したのだ。またもや終演後、「その辺を歩いてるオッさんが すいませんでした」と謝っていたが、おそらく「その辺」にはいないタイプ。

良い意味で。

BUGS DREAM

BUGS DREAM

夢団

川崎市幸市民館(神奈川県)

2019/08/15 (木) ~ 2019/08/16 (金)公演終了





ほぼ満員であった。

会場となった川崎市幸区市民会館大ホールのキャパが840だから、700として、3公演とも ご覧のとおりの盛況であれば、2100名を動員したことになる。200のキャパで、6ステージして満員御礼でも1200であるから、これは特筆すべき事例だ。


セットも豪華だった。「蟻のコロニー」が重層的に形作られ、遠近感を惑わす。




エピローグは冗長であったか。

3時間ほどの長尺なので その権利は有すると思うが、やはり名残惜しい余韻も欲しいところ。

おそらく50人ほどの大所帯である。けれど、いい意味でも悪い意味でも統一されており、そこへいたる稽古量を示している。



ご存知の方もいるだろうが、コミック版『ドラえもん』の未完の終刊は蟻が知能を手にして人間社会に反乱する話だ。このようなSFが本ミュージカルには通底している。


もちろん、出演者にも客席にも お子さんがいるだけあり、いたって教育的だ。しかしながら、「バーカ」など、ぶっきらぼうな言葉遣いをするのは この劇団の魅力となっている。

桜の森の満開のあとで

桜の森の満開のあとで

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2019/03/21 (木) ~ 2019/03/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

某大学のゼミに参加するというふれこみ。

教授役の男性(ちなみにシアターミラクル支配人)は前説で「タバコを吸うシーンがある」と述べたが、いまどき そんな大学生いるか。





大学生たちは「模擬カンファレンス」という討論で成績に差をつけられるゼミに属する人々であり、利害関係者の役になりきって特定のテーマで「賛成」「反対」の意思表示をとり、多数決の方が評価を稼げるというシステムだ。意見を言わないで多数派に追随してもよいが、稼げる評価は少なくなる。ただし少数派には評価がつかない。



そして、テーマとなったのが近未来、架空の自治体(福井県の実在の市をモチーフ)における「高齢者から投票権を取り上げる」条例だ。これを賛成する市長、商工団体、電力会社の代表者らに対し、地元NPO青年らが反対する。

市長役の女性がキャリアウーマンのような出で立ちだ。どぎついものの知性があり、場の中心となる。対して やや誇張だったのが電力会社員役の男性。



毎週のように集まり、クールダウンよろしく休憩をはさみつつ、席に着く学生たち。

白熱の議論はロジックで、観客である参加者に配られる詳しい資料も相まって、さながら『朝まで生テレビ』視聴者だ。ここは照明を明るくしたり、開演中でも読み込む時間を用意した方がよかった。



この議論は劇中劇である。


だが、それが現実の人間関係に影響を与え、しかし現実の人間関係が論戦を覆していき、衝撃を辿る。



専門的な見地からいわせていただくと、シルバーデモクラシーが非難の的となっているからといって、高齢者から票を取り上げるのは反対だ。高齢者をアイコン化し、「高齢者だから高齢者のための候補者に票を入れるはずだ」というのは個人を無視している。仮に100人中99人の高齢者に そういう傾向がみられたとしても、1人の投票権を喪失させていいのか。

また、「高齢者だから高齢者のための候補者に票を入れるはずだ」がダメだと権力側が決めつけるのは絶対主義だ。善し悪しは有権者の判断に基づくものであり、相対的でなければならない。それを極化すれば、権力側が「善い」とする投票結果を得られるまで投票権の属性を絞ることになるからだ。(被成年後見人の投票権剥奪は憲法違反とし、個人の権利は復旧されている)

そのような社会が健全かは言うまでもないだろう。


だから、申し訳ないが、専門的な見地からはゼミの「結末」というものも首を傾げたくなる。















半端の「地方分権」ほど、この国を陥れるものはない。福岡県などでは憲法違反の「条例」を制定し事実上、施行してしまっている。本来、国を縛る最高法典として憲法があり、その下に法律があり、条例がなければならない。だが、現実には、法律としては憲法違反の疑いが強いから「条例」として既成事実化し、国民を縛る働きをするケースもある。あれを法律でやろうとしたら法制局がサインしたかどうか。憲法では日本の最高機関は国会であるとされているが、政治家や官僚、メディアのスクラムによって この国の長に祭り上げられたのが地方自治体である。



専門的になってしまうが、日本の自治体に権力分立はない。二元代表制ということにはなっているものの、圧倒的多数の議会で首長の提案する予算・条例が通過(全提案、全会一致)しており、議員の提案も 枯れるほどしかなく、「なれ合い」という日本的関係が続いている。いわゆるオール与党である。ここまでの経済規模を有する国で、自称・民主主義でありながら一部の県・市・町政を除いて対抗軸がないというのは、実は驚異的である。



自民党の石破茂氏は憲法改正において、参院議員を「地方の代表」選出とする内容を主張している。これは、自身が県連幹部を務める鳥取県が、お隣の島根県と合区の対象となったことによる。つまり「地方の小さな声を、より拡大して国会へ」という思考なのだが、このことは、国会議員を「国民の代表」とする現行憲法とは真っ向から衝突する。それをつぶさに検証すべきだろう。


第一、仮にも都道府県を戴く中央集権制のこの国において「地方自治体」を選出主体とするのは、北海道の代表や沖縄の代表といったアイデンティティと政治的基盤を一層強固にするものであり、単一国家観を揺らがせることは言うまでもない。それはさておき、自民党は制度的に地方分権する道州制に関しては導入の立場をとってきたはずだ。いつのまに変えたのだろうか。もちろん、石破氏も導入を期す法案には賛成していた。

憲法で、合区をなくすために地方自治体を書き込むことは、道州制の導入を放棄することとひとしい。なぜならブロックごとの人口単位が一千万にもなる道州制は、一票の格差という点では予め均等になるからである。書き込む動機がない。


無責任なのは石破氏に限らない。もし合区が都道府県への帰属を壊すのが嫌で憲法改正したいのであれば、道州制については どう総合するのか、自民党は明らかにすべきだ。




たとえば旧母体保護法の補償問題では宮城県が突出して違憲行為をしていた。調査ジャーナリズム・ワセダクロニカによると、各界が一体となって不妊を広める広報をおこなっていたという。この問題は当時の厚生省が推奨していたので分権論のみでは扱えないが、日本が、中央集権制で水平に この国を指導していったわけではない。


そして今日、違憲の疑いが強い「条例」も採択されている。そうした「自治の暴走」においては、中央が責任を以って地方を是正すべきだ。




プールサイドから、響く

プールサイドから、響く

Others&co.

小劇場B1(東京都)

2019/07/04 (木) ~ 2019/07/09 (火)公演終了

満足度★★★★

青春劇という題目性を則りつつも、しかるに高校演劇では上演されないだろう。建前を抉り出す。そして、「10代のいっとき」が露骨なまでにダンピングされていく。

戯曲に注文をつけるとすれば、それは、固有名詞の使い過ぎである。安易だ。「youtube」などのメディアは展開と関わっているから致し方ないとしても、炭酸飲料をそこまでプッシュする必要性はない。いや、炭酸飲料に限らず、流行語を盛り込み過ぎだ。


※ネタバレ参照



ノリをつぶさに学び、イマドキ感を構築しているようであった。未来と過去の話なのに未来感がなく、むしろ過去より未来の方がノスタルジーだったのは示唆に富む。

つまり、過去であれ「今」は動くのだ。

ネタバレBOX

演出は小劇場では固有のものであったし、特別であったと思う。暗闇に光の差す教室。身を乗り、一心に祈る少女。どこか神秘的な様相を呈している。

そこで、演劇史上に残る「独白」が始まる。オートマチックで、呪術的で、他人事で、しかし主張はしますよというドライ口調でつらつら紡いでいく台詞は、後に彼女の原型だと知るわけだが、このシーンでは まだ未知だ。自身の境遇を話していき、やがて「貧乳」の領域を侵す。それは日本の青春を象徴するカオスであった。


「長くつ下のピッピ」

「長くつ下のピッピ」

ドリームミュージカル

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2018/05/31 (木) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★





こどもたちが協力し、苦難を超えていく物語に好感を覚える。

立花プロダクションといえば老舗であり、その人材は、東宝ミュージカルなどの子役を輩出している。ヒョンなことで観劇する機会を得たが、覇道をいきつつもウェットな寄り道(笑い)を追求する、実に痛快な2時間だった。


もちろん、20人程度の子役が出演しており、その力はマチマチである。だからこそメイン級には それなりのキャストを配したようだ。訝しがったのは冒頭だ。主人公・ピッピと、秘書の「おサルさん」との話が妙に合わない。台詞が混線してしまかったかのようである。これについてはゲネプロをきちんとするべきだったのではないか、と思う。

そのように記しても、冒頭だけである。つまり、経過とともに両者の演技による「修復力」をみせつけられたのである。


ほか、華やかだったのが王子役のキャストだ。どこか風貌が若かりしころの草刈正雄に通じており、威風堂々としている。それなのに前髪をバンドで結びあげ額を露わにするなど、およそ三枚目というキャラクターを演じた。調べたところ、数々の舞台でステータスを積んだ立花プロダクションの看板役者(子役)とのことだった。歌と踊りにおいて牽引していた。(全体的に そこにかけるエナジーは程良くもあった)


衣装は、西洋風に統一すれば名作感を表現できたのではないかと思う。ピッピは別格としても、周囲の、カジュアルなストリートファッションは彼女の「異能」を対比する上でも邪魔だったはずだ。



気になったのは、保護者とみられる男性が終始、撮影していた点に尽きる。発表会ではなく、公演という形でお客さんに観て頂いているのだから、「晴れの舞台」であっても環境にリスペクトすべきである

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

衝撃の実話である。

もちろん、谷氏なりに取材し、脚色しているわけだか、こうも人間の変哲を考えずにはいられない。


大掛かりなセットである電球の装飾は不気味に漂う。鎮座する。「原子力」という題材を与えられなければキレイに輝いたろうに。


アフタートークでは評者に「ミュージカル以降が面白かった」と激励された本作。しかしながら、個人的には、政治劇というか、魑魅魍魎の蠢く模様をキープすべきだったと思う。なぜなら観客は張り詰めた空気に意識していたのであり、エンターテイメントよろしく「分断」することで それが途切れてしまったからである。

主人公の反原発派元リーダーは町という現実を前に変貌を遂げていく。社会党や自民党の利害が、この男を再び政治の表舞台へ上げる。 谷氏は「海外の人は理解できるのか、役者の間でも議論になった」と述べていたものの、それは違う。

翻訳を手掛けるだけあり論理的思考力が海外並みの谷氏は気づいていない。そこまで日本人は言語化しない。内輪の席であれ、論理的に「言い負かす」のは日本人ではない。


だからこそ、 演劇は、視野で、原子力村の配下に降った「私たち」をメタファーしえるのである。

真・恋愛漫画

真・恋愛漫画

ライオン・パーマ

シアターKASSAI(東京都)

2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★







受付にはライオンパーマのキャスト陣。と思いきや、彼女らはスタッフとして携わっており、出演したのは「外部登用」盛りめだった。

オルタナティブを是とするライオンパーマの、劇中劇と呼ぶべき手法。たしかに事前知識ゼロで観れば役柄が あっちこっちに混乱してしまう。なのでオムニバス(でもないけど)コンパスを持参されたい。




面白かったのはラーメン屋だなぁ。限りなく「素の舞台」だったのに、このシーンだけが妙にディテールに凝っている。台詞が乱発されるわけではないのだが、「空間」と「感情」を共感させる。麺啜ってるだけなのにサスペンスを軽く超えてくる。



全体、 真面目だったなぁ。







そんなの俺の朝じゃない!~再び~

そんなの俺の朝じゃない!~再び~

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2019/05/15 (水) ~ 2019/05/19 (日)公演終了

満足度★★★★★





火山 火山(ヒヤマ カザン)。

彼の、定年ラストデーをサバイブする物語と思いきや、意図された脱線に次ぐ脱線の末、意外な感情を呼び起こす。


※追記あり

第27班 本公演9つめ『蛍』

第27班 本公演9つめ『蛍』

オフィス上の空

萬劇場(東京都)

2019/03/20 (水) ~ 2019/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

いっけん淡白な群像劇かつ役の入った台詞づかいではあるけれどね。時系列の交差しない関係性に味わいを感じられるぜ。

就活で採用企業をディスったら脚光浴びたっていう、女子大学生のネタおもしろいよな。まぁ、会話してるんだけど独白調でもあって、関係性というより、一人芝居に周りが反応するニュアンスさ。



幻想的なホタルを模したライトアップ以上に、下手にセンチ表現せず、また悲哀も感じさせずにね、物語として収斂させていくのは秀逸じゃん

ネタバレBOX



2人の棋士の、幼少期と現在、青年期と現在を描いてるんだけど、あだ名をキーワードにようやく解けるのさ。
解けても、性格的な問題から混乱気味だぜ。こどもらしい男の子が内向的な孤高の人になったり、対局中にトイレ行きたいって伝えらず漏らす大学生が威張り切ったパワハラ男になってたりよ。その時間の経過が空白的に声高に
訴えてるのさ。


ラストは 余計だったけどね。緊迫した対局が これからってとこで余韻を残せばいいところ、エピローグに次ぐエピローグで もったいないよ。


他の6人

他の6人

劇団ロクタク

シアター711(東京都)

2019/03/27 (水) ~ 2019/03/31 (日)公演終了

満足度★★★★







いやぁ、旗揚げしたのはコント師たちだろ?良い意味で役者には見えなかったぜ。

貧乏くさいセットが 小劇場のメタってやつでさ。

6人ともほぼ等間隔の出番、セリフ量で総花的ではあるんだけど、こういう趣向にしては存分楽しませてもらった。


まぁ、対象が女性客ってのがミエミエだったけどな。そこに乗っかりすぎじゃん。


見よ、飛行機の高く飛べるを

見よ、飛行機の高く飛べるを

ことのはbox

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2019/03/13 (水) ~ 2019/03/17 (日)公演終了

満足度★★★★








ポツンと燈の浮かびあがる、談話室における暗闇シーンは良かった。この演出は「背徳の共有化」だろう。難儀であったのは口元が見えないために台詞が聴こえない(補足できない)、どの人物が言ったかを追えないからだ。


気品のなかにも旺盛な立志精神を感じられる女学生(特に光島役)たちの演劇は素晴らしい。文語体が(新庄役も)実に適っている。

しいていうなら改革派教師・安達の「叫び」はやり過ぎだ。感情のままにブチ切れているとしか思えない。体育教師も、ピエロ役なら三枚目に徹するべきよ。どういうことか。「男尊女卑」だけどそれは大正の社会からいったら仕方ないことで、憎めないキャラとしても成立したんじゃない?


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