満足度★★★★★
鑑賞日2017/01/08 (日)
実際に41年間豚小屋に隠れ住んだロシアの脱走兵の実話を元にした戯曲というのだからびっくり。
北村有起哉さん・田畑智子さんという映像でもおなじみの俳優さん二人だけの非常に贅沢な2時間のお芝居。
満足度★★★
軍を脱走して家畜小屋に隠れ、人目を避け続け生きてきた男とその妻。
式典に出席して、自分の存在を明かしたい男が垣間見る、孤独からの解放とそれを想像する恐怖。
閉塞された豚小屋が牢屋のように感じたのか、ある夜、女装して妻と外に出た時の開放感と星の明かりのまぶしさの体験の姿に、実際あった事を想像すると、その場面では一緒になって感動した。が、初演発表時からかなり時間の経過した戯曲で、原作者も南アフリカで反アパルトヘイトで闘いながらも書いたとのことらしく、戯曲自体も傑作だとは思う。現代の世俗とは一線を引く、どこか時代を感じさせる舞台だった。
満足度★★★★★
2017年1本目!
正月から豚小屋!
しかし北村有起哉さん主演、
栗山民也さん演出で新国立小、
田畑智子さんとの二人芝居となれば見逃せません。
縁起ものです。
自由のために隠れたはずの豚小屋での生活。
こんな深刻な内容にもかかわらず、
笑いすら盛り込まれている。
二人だけのやり取りはやがてエスカレートしていって、
狂気のピークを越え、
40年続いた閉鎖空間からの脱出によって
再び「自由と解放」を得ようとするという何という皮肉。
40年間毎日、常に続く悪臭と騒音とは想像だにしない。
良かった!
さすが北村有起哉さんの作品の選択と演技の的確さには信頼がおけます。
田畑さんも男女の違いを好演されました。
これが実話であるということに恐怖を感じます。
満足度★★★
鑑賞日2017/01/10 (火)
舞台の上は、においのするような豚小屋・・・・北村さんすごい!
閉じこもっていた年月がそこにあり、彼の精神状態がばら撒かれていくような気がしました。息苦しかった・・・。力のある役者さんだと、あらためて思いました。
満足度★★★★★
地人会じたい初めて。一昨年だったか芸能花伝舎で観た『島 island』と同じ作家(南ア出身)の作であった。うまい戯曲だ、との感想が変わらず(どちらも二人芝居だった)。一場面を除いて同じ場、二人の会話から「状況」の若干の変化は垣間見えるが、ダイナミックなストーリー展開がある訳でなく、この場所での二人の言葉による、関係の露呈のプロセスが、この芝居の柱と言える。台詞の背後の心の動きが、確固とくっきりと見えて来るのには瞠目した。隙間を埋めるといった瞬間が一秒も見えない(と、見えた)北村有起哉の演技は、「今その瞬間にあるべき状態」にしっかり身を置き、人物に一貫性があり、まるで裸体をさらけ出すように人物が見えて来る。田畑智子の女性は受けの場面が多いが、出すところでの押し出しがあり、感情表現の振れ幅、柔軟さが心地良く、妻として夫との関係が成立する距離を取れていた。ぐっと接近し、親密ゆえに突き放す「自由」。
台詞の端々が鮮烈に光り、それをフックに次第次第に劇に引き込まれた。
一人の小さな人間の「心理の軌跡」が、(己の欠落を補うべき)高邁な何かを求め続ける「魂」の存在を浮き上らせる。
演じる人物をどこまでも裏切らなかった両氏(特に北村)の姿には好感、否、尊敬の二文字も過剰表現でない。と思う。