狂犬百景(2016) 公演情報 狂犬百景(2016)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-10件 / 10件中
  • 満足度★★★

    鑑賞日2016/10/02 (日)

    近くにある太宰治&森鴎外のお墓詣りも兼ねて、星のホールに足を伸ばしてみました。

    ネタバレBOX

    4話オムニバスの本作、主演の黒岩三佳さん、青木友哉さんを初め、総勢22名もの役者さんたちを、実に贅沢に使っています。そして、どなたも変に肩肘張らず、抑制の効いた好演でした。
    とりわけ、製菓会社のオフィスを舞台にした第2話にご出演の、詩森ろば作品の常連・佐野功さん、ワタシには初見の古市みみさんに、第3話・第4話で同一人物として出られた、古屋敷悠さん、のお三方の演ずる人物像、大変印象深いものがありました。

    舞台美術も、4話共通の背景に、各話ごとに入れ替わるセット。特に第1話のコンビニ店内のセットが、作品のシュールなテイストを、より一層、引き立たせていたように映りました。

    脚本も実に巧みです。上述の通り、22名もの役者さんたちの役柄を明確に描き分け、さらには、第1~3話の登場人物の中から何名かを第4話にも再登板させることで、作品全体にスケールというか、奥行きが出たように思われました。

    にも拘らずなんですけど、実は最後まで作品世界に没入することが出来ませんでした。あくまでも個人的な受け止めなんですが、どの役柄も「生身の人間」というよりも、狂言回しや・伏線張りや・話を盛るための「駒」にしか感じられなかったんです。『狂犬百景』と題された将棋の棋譜をなぞっている…ゴメンナサイ! 舞台上の役者さんたちにオーバーラップした、盤上を眺める脚本家のイメージが脳裏に浮かんで離れない2時間10分でした、とさ。
  • 満足度★★★★

    良作。動物好きとしては感情ゆさぶられまくりの舞台でした。

  • 満足度★★★★

    「狂犬百景」を見下ろす
    初演と構成は同じですがが色々変えてる部分もあり
    かなり違う感覚で拝見できました。
    地続きの臨場感から、見下ろすように狂喜と滑稽さを
    冷ややかに観察しているよう感覚だから
    怖さよりも、面白さの雰囲気が強くて見易いです。
    そこは、ハセガワさん特有の台詞の賜物です。
    次は5月ですか、どこか中劇場とか大劇場で
    企画投げればいいのに、プチ公演期待かな?

  • 満足度★★★★

    ”狂人百景”
    謎の狂犬病が蔓延して、犬にかまれた人間がゾンビ化するという事態が発生する。
    ここで描かれるのは人を食う犬ではない。
    “食われるかもしれない”という状況下で、次第に感情の振れ幅が大きくなり
    狂気に至る人間の思考回路だ。
    1~4話のうち、3話の緊張感が素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    ウッディなブラインドが縦横に張り巡らされた背景、
    その手前に椅子やラックを置き、薄明りの中で場転が整然と行われる。
    客入れのBGMも静かで私は好きだ。
    犬の吠え声などの効果音も“びっくりさせてやろう”ではなくて距離感が自然。

    第一話・・・「お前のそういうのが嫌で別れたんだよ!」という元夫の言葉が最高!
    持論を展開する元妻の押しつけがましさが上手い。
    「大義名分を掲げて信じる道を説きまくる」めんどーくさい女っているいる。
    犬にかまれて異常な状態になっていくにしてはのんびりした雰囲気。

    第二話・・・“噛まれてゾンビになるかもしれない恐怖”より
    “どうせ死ぬならその前にやっておきたいことがある”という人間の欲望が怖い。

    第三話・・・4つの中で最も登場人物のキャラが濃く、シリアスに出ていて出色。
    社会の不安を逆手にとり、同時進行でリアルな描写の漫画を描く漫画家が
    作品のために「正当防衛」と称して犬狩りをし、
    撮った画像から絵を起こす、という狂気。
    彼を取り巻くボクサー崩れとファン上がりのアシスタント女性、編集者の4人が
    血まみれで狂喜する様に戦慄が走る。
    漫画家とボクサー崩れとの会話、ワケアリそうなライターとカメラマンの隠し撮り等
    緊張感が途切れず、ぐいぐい惹き込まれた。
    漫画家役の山崎カズユキさん、過去舞台を2度ほど拝見したが
    今回は名前を見るまで分からなかった。
    ノーマルな発言の裏に強烈な優越感や差別意識を持ち、
    それに一点の疑問も抱かない、まさに“普通のようで狂人”が上手い。
    カメラマン役の古屋敷悠さん、やはりこの人が出てくると台詞に緊張感が走る。
    何かやりそう感満載。

    第四話・・・3話までの“その後”が描かれる。
    「動物愛護センター」と言いつつ実は“殺処分センター”として機能している現実に
    打ちのめされながら働く人々。
    そこにこれまでの登場人物がちらほら出入りしている。
    3つのエピソードのまとめ方が面白かった。
    犬をもらいに来るNPO法人さんのキャラが秀逸。
    ポップンなら「犬の役」かもしれないが、今回は人間。
    第二話とは打って変わってどーしよーもない、軽い男が素晴らしい。

    ハセガワアユムさんは、グロい場面を想像させるのが巧みなので
    さらりと言わせているが、一番震撼させたのはあの男だった、
    というオチもまさに「狂人百景」だった。


  • 満足度★★★★

    初MU
    短編ではあるが、作者の思い描く架空の「狂犬な世界」での幾つかのエピソード4編、となっている。つまり、全体として「狂犬な世界」を構成する、規模は違うが「火星年代記」的な、一つの未来形、あるいは「あり得るもう一つの世界」を提示する一まとまりの出し物だ。
    「百景」の名の通り、作者によれば「狂犬」エピソードは百あるのだとか。その事を言わせるだけの、創作意欲の源泉がこの架空世界である「狂犬な世界」にはあるのだろう。

    個人的には、「初」のMU式文体に不慣れのせいか?、台詞が入って来ず、前半の二編は意識が途切れがちになり、目の前の現象が何であるのか、分類すれば喜劇か悲劇か、そこで起こっているのは対立か迎合か、さえも判別しづらい(中々味わえない)状態となった。
    後半二編では、はっきりした感情、激した感情を乗せやすい台詞と展開があり、俳優から発した「感情」をよすがに、芝居に入ることが出来た。

    ネタバレBOX

    やりとりは饒舌とは言えずギクシャク感は残った。これは文体の問題か、俳優のもう一つな演技のせいか・・・
    残念ながら特筆したい役者(の演技)は私の目には入ってこなかった。台詞の端に拙さが残る印象がそこここに。もっとも「よくできた分かりやすい戯曲」に取り組めばそれなりの舞台を作るだけの声量、メリハリはあるように感じたが。。一人抜きん出た役者が居ると居ないでは、相当違うんだろうな・・そんな事を思ったりもした。(ここで言う俳優の仕事は、戯曲を一つの完結した作品に結実させるための「役」の姿を掘り当てることができ、表現が出来る、という意味。テキストと俳優の発語、表現との関係で仕事の優劣は決まる。)

    舞台美術。短編4つに対応するためか抽象度が高い。一方テキストも十分に言葉を端折った文体で、具象の手がかりが欲しいがそれが希薄で酸欠になる。・・そうなると言葉が頼みであるが・・。(台詞が入ってこなかった原因にはそのあたりも・・?)
    装置は茶色く塗ったブラインドを縦と横に組み合わせてパッチワーク風に舞台上に大きな壁面を作っており、緩い円弧で演技エリアを囲む、で中央は出入りのため大きく開いている。あとは袖(手前、奥)。
    この壁の茶系(オレンジ)の色に、照明も暖色でほぼ通していたと思う。光の色彩の変化でもっとメリハリを与えても良かったのではないか・・・

    さて「狂犬」は素材としてユニークである。狂犬病に罹った犬と、その犬に噛まれて狂犬病となった人間(舞台ではゾンビのイメージ・・「バイオハザード」的な・・をまとわせていた)が街に氾濫する光景、すなわちパンデミックの状況設定は、極限状況で人が優先すべき価値、について考えさせる。
    さて第二弾はあるのか・・・?
  • 満足度★★★★

    MUのダーク編
    再演だが初演は観てない。狂犬がゾンビ化した東京の3ヶ所で起こる出来事を、最後にまとめる4話構成の短篇オムニバス。3話の味わいはそれぞれに違って面白く、しかし、それらをまとめる最後の4話が見事である。面白いのではあるが、好きか、と訊かれるとちょっと困る作品だと言える。

  • 満足度★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    MUの【狂犬百景】を観劇。

    街では人間を噛み殺す狂犬が多数出現していて、パニックになっている。
    その犬はゾンビに変身するウィルスを持っていて、街中は狂犬とゾンビの天国になってしまいそうだ。
    その騒乱の中で描かれる人間模様を短編集として描いている。

    パニックとゾンビと映画の要素をたっぷりと感じさせてくるのだが、
    それはただの背景に過ぎず、その混乱の中で垣間見える人間の本質を炙りだしていく。
    ただそんなパニックの状況での炙り出しは、正義、勇気、プライドなどが定番なのだが、今作では、日常の恨み、つらみ、嫉妬ばかりが表に出てきて、そんな状況で出るわけないだろう?と思いがちだが、そこに妙に現実味を感じてしまい、一番危険なのは狂犬とゾンビとウィルスではなく、人間そのものだと感じてしまうほどだ。
    やや平田オリザの【東京ノート】に通じるものがあるようで、演出家の眼差しをちゃんと感じられる良好な芝居であった。
  • 満足度★★★★★

    MUはJoy Divisionなのか、New Orderなのか
    初演は予約していたのだが、風邪をひき、咳が酷いので断念した。
    その後、「いつものMU」の感じをあてはめながら戯曲を読み、ニヤリとしながら観に行けなかったことを悔やんだ。
    そして、まさかこの作品が再演!

    作・演のハセガワアユムさんによると「リブート」的で、ある意味、ここまでのMUの「集大成」であるという。
    期待は高まるしかない。

    (以下ネタバレボックスですが、思いつくままに書いてしまったので、とんでもない長文になってしまいました)

    ネタバレBOX

    連作4話構成。
    短編と中編作品に定評があるMUだけあって、それぞれのまとまりがとても良い。

    そもそも短編作品というと、つい「オチ」に集約させてしまうものが多い中で、MUは良く出来た短編小説的な世界を広げ、きちんと人を描いていく。
    その中には、独特のネジれ方とアイロニー風味が必ずある。

    今回の作品でも4話ともにそれが上手く発動していて、見事である。
    それぞれの幕切れの個所とタイミングが、スッパリしていて気持ちがいい。
    「いかにも」というところ(役者がドヤ顔的な顔をして「いかにも」な台詞ではなく・笑)で幕切れにしないところが、上手く余韻を残す。

    舞台の外では狂犬が徐々に増えていき、大変なことになりつつあるという様子と舞台の上の出来事の悪化がリンクしているのも上手いなと思う。外の出来事を観客に想像させるやり方も上手い。

    登場人物たちに「余裕」がなく、何かについも急き立てられていて、自分の正面しか見ていない(見ることができない)。客観的に見ているのは観客だけ。観客には登場人物の行動が滑稽であったり残虐であったり、理解不能であったりする。
    それは彼らが「狂っている」わけではなく、狂犬病のように伝染していくわけでもない。観客を含めて「普通の姿」なのだ。普通の姿が「狂っている」ように見えてしまうほど、余裕のない世界に生きているのかもしれない。

    今回の作品で特筆すべきは「座組の良さ」ではないだろうか。
    役者たちのバランスがとてもいい。それは『狂犬百景(2016)』と言う作品においてのバランスである。

    主人公を最上段に据えたヒエラルキーがあって、主人公に対するカウンター的なキャラがいて、なんて風にはなっていない。

    短編連作でそれぞれにクローズアップしたい主人公やキャラがあるだろうが、そこをあまり強く押さないし、役者も出たいところをうまく抑えているように見える。

    しかも、作品全体は、全体的に上手く抑制が効いていて、非常にクールな顔をしている。
    台詞がリズムに乗ってポンポンいくような感じではなく、どこかオフビートである。
    その台詞のビートがMUらしくて面白い。

    一部の役者を前に出し過ぎないこと、台詞をテンポだけで見せないことは、作品に強弱をつけにくくなるのではないだろうか。それはメリハリがなくなってきて冗長になってしまう危険性があるのではないか。
    ところがこの作品では冗長になることもないし、途中で気持ちが削がれることもない。4話がそれぞれ暗転で繋がっているにもかかわらずにだ。

    そのあたりの演出が上手く機能しているのと、役者がそれぞれの作品の中で立っている場所を理解しているからだろうと思う。

    MUは劇場以外の場所で観客と至近距離で上演することが多い。
    今回、星のホールは結構大きいし、普通に劇場である。
    至近距離での上演は、役者の熱量が伝わりやすい。だから熱さのある演出だったが、今回はサイズが違い、観客は「客席」から観るという構図ということもあり、この抑制の効いた演出だったのではないか、とも思った。

    第3話の「漫画の世界」での、犬殺しの元ボクサー橘あたりは、大塚尚吾さんという肉体を持った俳優さんが演じることで、凶暴なキチガイにもできたものをそうしなかった。そうしないことで、観客は彼の内面に触れたような気分なるのだ。実はそろそろ辞めたくなっていて、「狂っているか?」と自分のことを聞く彼に、漫画家の田崎が「そう聞くやつは狂っていない」という台詞がとてもすんなりと入ってきて、さらに彼を形作る。

    普通のおっさんのような編集者の西田が、橘が集めている犬の爪が入っている瓶を空けたときに「いい匂い」という台詞は、すでに第1話を観ている観客にとって、それは「臭い」ものであるということを知っているだけに、彼の普通ではなさが一瞬で現れたシーンであって、そこを強調しないところが、また上手いのだ。

    漫画家とその仲間たちが家に侵入した犬を片付けて部屋に戻ってきたシーンでも、彼らがはしゃぎすぎることなく、身体の内側で喜びを感じているという表現があることで、彼らの内側にこもっている熱と残虐性を感じさせる。まるで犬殺しが、彼らのダウナー系の薬のように。
    ここがあるから最後の第4話で明らかになる彼らの姿が効くのだ。

    第2話の「グッドバイブレーション」では、専務がキーパーソンになるのだが、彼を特殊なキャラにしなかったことで、第2話の収まりがうまくついたのではないだろうか。落ち着いた印象で優しいおじさんが渦の中心にいることで。

    第4話では第3話で登場した彼らが爪を剥がされた悲惨な姿で現れる。
    (集めているのが「爪」ではなく、犬なんだから「犬歯」とかだったらどうかな、とも思ったのだが。痛そうだし、「歯には歯を」にも合うし。合いすぎるか・笑)
    犬殺しの彼らに罰を与えているのだが、先の第3話で彼らの行為が酷く狂ったものであることは十分にわかるのだが、「相手は狂犬だし」という感情もわく、それは第3話での彼らの描き方もある。さらに彼らに罰を与えている深谷は、明らかにやり過ぎで引いてしまう。
    この、どちらにもまったく共感を生まない対立のさせ方は、暴力に暴力であたる無意味さを如実に表している。

    深谷を演じた古屋敷さんは、カメラマンの立場から漫画家たちのカバンを暴くところ、動物愛護センターで働いているところで、顔に陰を落として目に変な光を輝かせるあたりは、なかなかだと思う。MUでは、いつもこんな自分の思い込みに囚われる役が多いような気がするが、そういうのめり込み方のネジれ方がいいのだ。
    ライターの元カノの目のアザも気になる。

    ライターがいい感じで自分の言葉・考えにのめり込んでいくことで、深谷の変な感じが上手く消されていて、という視点の切り替えの上手さも感じた。ライター役の青山祥子さん、ぐいぐい来ていて、この人の目の輝きもとってもいい。飲み込まれて圧倒される。MUにまた出てほしい。こんなネジれた役だとは思うけど(笑)。

    第4話ではそれをさらに上にいく、動物愛護団体に所属している久保がいる。久保を演じているのは黒岩三佳さんで、彼女ののめり込み方も凄まじい。
    第1話で元カノとして現れてきて普通に元カレに寄付を頼んでいて、特に変なところはないのだが、なんか「恐い」。今回のフライヤーに彼女がドーンと写っているのだが、「恐い」のだ。
    (1話で元カレに突っ込みの手が入るのだが、このタイミングの良さはさすが、あひるなんちゃらで鍛え抜かれた黒岩さんである、と感心した)
    第4話で彼女はさらに恐くなっていて、モダン・ホラーそのものだ。

    自分の信じていることを疑わない深谷と久保の2人の会話は、相手に向かって話しているようで、言葉は自分自身に向かっている。
    この2人の会話がいい。

    第1話と4話で登場する佐々木なふみさんの振り幅も見事。やっぱり安定していて上手い。ほかの女優さんとはまったく違う空気があるから、大人数が登場するときのMUには欠かせない人なのだろう。どうやら1話と4話では別人のようだが、一緒でも良かったのではないだろうか。子どもが出来てから別人になって、なんていう設定でも。

    第3話で登場する漫画のアシ役の沈ゆうこさんは、実家のアガリスクでは優等生的なイメージがあるので、オタク的な感じからの、あのさらりと言ってのける発言がいい感じにネジが外れているんじゃないかと思わせる。短い登場時間と台詞なのに物語にきっちりと爪痕を残していた。

    あと、第2話の女子社員同士の無言のキャットファイト、笑った。こういう細かいところが面白い。

    第4話後のカーテンコールで登場人物たちがすべて舞台の上に出るのだが、彼らが拍手の中立ち去る後ろ姿を見て「あれっ、こんなに出てたんだ」と思った。
    つまり、客演がほとんどという作品で、いいバランス座組を作り出していたことに驚かさせるのだ。こんなに多くいて、きれいに整理されていたということを。まるでイコライザを使って音のレンジを調整するように、演出家が舞台の上ある感情や盛り上がりの上下をうまくコントロールしていたようだ。

    ついでに書くと、当パンには登場人物たちの年齢まで書いてある。これ見ながら舞台を思い出すとまたちょっと面白くなったりする。
    台詞の細かいところにとても注意を払って戯曲が作られているのがよくわかる。
    文字面ではわからないタイミングの妙が舞台の上にある。

    シリアスなのだが、笑いは結構ある。
    クスクス笑いが多いのもMUらしい。
    第3話の「オザケン」とか、第2話で腕に怪我をした岸の写真を撮るときの「笑顔はいらない」とか、第2話の「俺を踏み台にして行け」「(ペットボトルを出されて)そっちじゃないほう」とか(笑)。

    パンクの終焉に、彼らが外に向かって吐き出していた暴力的なものが内向し、彼らが内向していた内省的な感情が外に出てきたバンドが、ヨーロッパを中心にいくつか出てきた。
    その中の1つが「Joy Division」だ。
    「いかにも」なバンド名とサウンドはリスナーも内省的な気分にさせる。「いかにも」のバンド名やカッコ良すぎのジャケットデザインは、「つかみはOK」で、その意味「ポップ」でもある。
    中心メンバーのイアン・カーティスが自殺したあと、残ったメンバーで組んだのが、「New Order」だ。

    New Orderの最初のアルバムを聴いたときに「あれっ?」となった。
    シンセのリズムが強いのだ。
    明らかにポップ。
    「Joy Divisionと違いすぎるじゃないか!」と思ったら、メロディの切なさが効いた曲調であり、Joy Divisionに戻ってみるとボーカルの強い印象の陰には、やはり切ないメロディが鳴っていたことを発見する。
    そして、New Orderのダンサブルな曲の裏側には「陰」がある。

    MUは「狂犬」とか「ゾンビを狂犬に変えて」とかというあたりは、Joy Divisionのバンド名やジャケットワーク的な、(Joy Division的)ポップさを感じる。
    そして作品自体については、今回は特に「主人公(たち)」の前面に押し出さなかったあたり(個人より作品を前に出した)が、イアン・カーティスなきNew Orderであり、New Orderの入口のダンサブルに似た口当たりの良さと、良く聴くと「陰」があるというところがNew Orderっぽい。
    ポップで口当たりはいいのだけど、グロさ(人間そのものの行為のグロさも含めて)を前面に出さずに、観客に「その人それぞれの中にあるグロさレベル」で感じさせる上手さがある。聴く者に感じさせ方を違わせる。
    つまり、公演の楽しさを味わう(ダンスビートに踊る)もよし、裏のグロさに思いを馳せるのもよし、というところではないか。

    Joy DivisionとかNew Orderとか出して、結局何が言いたかったのか、わかんないか(笑)。まあいいや。


    で、この作品が「(ここまでの)MUの集大成」であるのは間違いない。
    今までの公演で培ってきた作品へのアプローチ方法がうまく活かされているだけではなく、単にそれらを大きな場所で上演しただけではない。それらを1つの完成型として高めた作品であったと思う。

    こうなると「MITAKA “Next” Selection」後のMUにも期待せざるを得ない。

    あ、そうそう、セットや装置のセンスも抜群だった。
  • 満足度★★★★

    演劇と現実の境は朧げ
    新種の狂犬病が広がりつつある世界。
    1話から4話を通して舞台上には簡素なセットにより建物の中の世界が形作られ、外の世界は常に舞台装置より奥の暗闇の中に存在することになる
    観客の視覚には、決して外の世界は見えないのだが、登場人物の台詞や変わりゆく姿で脳の中にそれぞれに世界観が作り上げられていく
    自分で補完して作り上げた世界はもう自分のものだ。舞台から目を逸らしても存在し続ける。
    センスの良い言葉選びの台詞と、悪い意味で自分に正直な登場人物たちの人間模様にクスリとさせられながらも気がつけば、舞台の裏にある世界だったものがスルリと自分の頭のなかに入ってきている。そうなったらもはや客席と舞台の隔てなどは意味をなさない。
    登場人物たちはみんな何かに心を囚われている。観客が頭のなかに登場しない犬達を作り上げていくように、心の中で自らを縛り上げるものを育み作り上げていく。
    作り上げた物に囚われ、そして自分に正直に行動する。それがこの世界での「狂う」ということなのではないか。
    結局みんな屍となり腐りつつある過去の自分と戦っている

  • 満足度★★★★★

    ゾンビ映画的設定で描かれる人間模様に、ニヤリ&ズシン
    上演時間は約2時間10分。
    受付は開演1時間前、
    開場は30分前(チケット記載の整理番号順)。

    本編もさることながら、
    スタッフワークも劇場の椅子などの環境もよくて楽しかったです。
    団体の公式ツイッターが公演前に
    その日の当日券の有無、
    開場時間等ツイートしてくれていて、
    三鷹駅からのバスの乗り場と時刻表も書いてくれてるのがとても親切でした。

    (以下、
    自ツイート転載でしつれいします)



    狂った犬がうろつく街に住む人々のあれこれ話。
    男と女の面倒くささ、
    人の本性が出て、それがピリピリするし滑稽。
    上演時間は2時間10分だったけど、途中、
    薄暗がりでの場面転換ありな連作短編なので、
    肩の力を抜く時間あり。面白かった。

    当日パンフに配役と各話のあらすじ&
    登場人物のソコソコくわしめな説明が載ってそうだったので
    ほとんど読まないで観劇。でも平気。
    2話の暗転明けに女性が多めに出てたとき
    区別つくか戸惑ったけど、
    話始めたら各々個性的で
    すぐ区別ついた。
    前に観たことある方々も、わりとすぐに気づけた。

    なんで今日マチソワじゃないんだろう(当日券買ったのに!)ってくらい
    面白かったので、来週も来れたら来よう。
    上演台本も販売。
    値段は覚えてないけど高くはなかった筈。
    早めに予約したから初演の台本データ送られてて、
    聞くとなんか色々違うところあるらしいのですぐに読むのは勿体無いなぁ。

    ネタバレBOX


    「コウリュウ室」の漢字を、
    最初違うほう(交流)をあてて聞いてて、その後、
    あっちがうちがうそうじゃない(拘留か)…になったんだけど、
    あれは作者の計算か私がバカなのか…

    PMC野郎所属のNPO法人さんは、
    全部人間の役。
    メイクしてなくても演じ分ける役者っぷり。
    そうそう、こういうの好き。
    最後に出てくる役が特にインパクト強かったな。
    前半の(役の)肩や手、呼吸と表情の細かさが印象強かったから余計。

    古屋敷さんはナマでは3、4作くらい観てるかな? 
    共通してまっすぐが暴走している感じで、
    それが表に出るかフツフツしてるかっていう芝居の違い。
    彼に限らずだけど、本筋スポットが当たってない時の反応や様子が細かい。

    第一話の、 
    コンビニの棚の品物を前に出す店員の手つきがやたらリアルだったな(笑)  
    肩をすくめて気配消す感じとか、わかる。 
    飛び越えて行われる会話を聞く
    彼女の表情が好き。 
    運命についてのことばが印象的。 

    第二話の、 
    女子アナみたいな(偏見)娘の、 
    一見してすぐにわかる「あの感じ」すごい。 
    彼女への「~で返事をするな!」が最高(笑) 
    ラストの彼女の行為の意味に気づいて
    スッとする。 

    個人的に好きだけどエグいわ(精神的に)と思ったのが、
    第三話の3人の「いつから」の話。 効果音とか無いんだけど、
    空気が変わる音がするようだった。 
    これは役の説明読まないで見てよかったな~。 
    良心と残虐が
    くるくると入れ替わって見える、 
    なかなかそろわないトランプ神経衰弱みたい。 
    志村さん(役名)と彼の関係が 
    口に出される前に見ててわかる。 
    なんでだろう。 
    お互いの距離の取り方かしら? 

    第四話は
    全てが集束してくる感じにザワザワする。 
    MUは前の時もそうだったけど、 
    収まってるようで
    別の部分の嵐が始まる感じ。 
    男の「理解してる」感と
    嫉妬丸出しの顔に
    笑うかもやっとするかはこちらの心情次第だな。 
    紙コップ男子がツボ。 

    舞台装置の見えなそうで見える感じと 
    奥の使い方が良かった… 
    歌詞を覚えられない彼女の声が、 
    ある意味サブリミナル効果だったな。 

    想像力があると少しグロいのかも。 
    現場はでないけど、血糊はあるから。 
    橘さん(役名)の鞄から出てくるアレの破壊力。 

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