狂犬百景(2016) 公演情報 MU「狂犬百景(2016)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初MU
    短編ではあるが、作者の思い描く架空の「狂犬な世界」での幾つかのエピソード4編、となっている。つまり、全体として「狂犬な世界」を構成する、規模は違うが「火星年代記」的な、一つの未来形、あるいは「あり得るもう一つの世界」を提示する一まとまりの出し物だ。
    「百景」の名の通り、作者によれば「狂犬」エピソードは百あるのだとか。その事を言わせるだけの、創作意欲の源泉がこの架空世界である「狂犬な世界」にはあるのだろう。

    個人的には、「初」のMU式文体に不慣れのせいか?、台詞が入って来ず、前半の二編は意識が途切れがちになり、目の前の現象が何であるのか、分類すれば喜劇か悲劇か、そこで起こっているのは対立か迎合か、さえも判別しづらい(中々味わえない)状態となった。
    後半二編では、はっきりした感情、激した感情を乗せやすい台詞と展開があり、俳優から発した「感情」をよすがに、芝居に入ることが出来た。

    ネタバレBOX

    やりとりは饒舌とは言えずギクシャク感は残った。これは文体の問題か、俳優のもう一つな演技のせいか・・・
    残念ながら特筆したい役者(の演技)は私の目には入ってこなかった。台詞の端に拙さが残る印象がそこここに。もっとも「よくできた分かりやすい戯曲」に取り組めばそれなりの舞台を作るだけの声量、メリハリはあるように感じたが。。一人抜きん出た役者が居ると居ないでは、相当違うんだろうな・・そんな事を思ったりもした。(ここで言う俳優の仕事は、戯曲を一つの完結した作品に結実させるための「役」の姿を掘り当てることができ、表現が出来る、という意味。テキストと俳優の発語、表現との関係で仕事の優劣は決まる。)

    舞台美術。短編4つに対応するためか抽象度が高い。一方テキストも十分に言葉を端折った文体で、具象の手がかりが欲しいがそれが希薄で酸欠になる。・・そうなると言葉が頼みであるが・・。(台詞が入ってこなかった原因にはそのあたりも・・?)
    装置は茶色く塗ったブラインドを縦と横に組み合わせてパッチワーク風に舞台上に大きな壁面を作っており、緩い円弧で演技エリアを囲む、で中央は出入りのため大きく開いている。あとは袖(手前、奥)。
    この壁の茶系(オレンジ)の色に、照明も暖色でほぼ通していたと思う。光の色彩の変化でもっとメリハリを与えても良かったのではないか・・・

    さて「狂犬」は素材としてユニークである。狂犬病に罹った犬と、その犬に噛まれて狂犬病となった人間(舞台ではゾンビのイメージ・・「バイオハザード」的な・・をまとわせていた)が街に氾濫する光景、すなわちパンデミックの状況設定は、極限状況で人が優先すべき価値、について考えさせる。
    さて第二弾はあるのか・・・?

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    2016/10/08 02:05

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