眠る羊 公演情報 眠る羊」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
21-28件 / 28件中
  • 満足度★★★★★

    嘘か真か
    面の皮の厚い面々でした。

    ネタバレBOX

    防衛族である比良坂家の三人の息子に降り掛かったスキャンダルの真偽と真相が、想定問答集を使った証人喚問の練習を通じて明らかになる話。

    ラストで、全ては息子を切り捨ててでも自分の意志を喧伝したいとする今は亡き父親が仕掛けた罠だったというどんでん返しはありましたが、スキャンダルは嘘か真かの話が大半で、新たな真実が明らかになるなどの驚きは無く、面の皮の厚さの問題に終始しました。

    面白さでは、検証していく中で真相が二転三転していく『獣のための倫理学』の方が上でした。

    オペラ好きの長男は軽薄で隙だらけで確かに政治家向きではありませんでした。次男は、「従う」や「謝罪」などの言葉や実践が大嫌いな傲慢な性格で面倒くさがり屋の男でした。ただ、彼らの性格付けはちょっとスパイスを効かせ過ぎのようにも感じました。

    父親の後継者として政治家となった次男は、父親も死ぬ間際は憲法九条維持に転向したとして、九条維持と武器輸出三原則の緩和を主張していましたが、資金管理団体の責任者である妻(次男の母)も含めて息子たちを失脚させてまで、父親は九条の改正を訴え続けたかったことが明らかになりました。ただし、世間に伝わるかどうかは父親の元秘書次第ですが。
  • 満足度★★★

    隠しテーマは笑い?
    劇団名、なんで十七戦地なんだろうな。会場では、十七戦地の20センチ定規ってのが売ってて。
    シュールだ。

    今回の隠しテーマは笑いだったのかなあ。シュールなギャグがあちこちに。どう反応していいのかわからなくて。戸惑いました。
    過去の公演、2回観たことがあるけど、ギャグはひとつも入ってなかったような。だから、こんなふうに笑いで攻撃してくるとは予想せず。

    話題はとってもシリアスなんだけど、ギャグがぶちかまされる。その振幅が広すぎて。途中、集中を切らしてしまいました。ゴムみたいに引き伸ばされて、ぷちって切れたようなね。
    いや、でも、こういう冒険もしないとね。

    アフターイベントでのリーディング。こっちのほうがぐっと集中が高まって。ああ、いいものを観せてもらったなあという気持に。
    頭、固いんですかね。

    ネタバレBOX

    話が込み入っていて。演技を観るより、そういったセリフの意味を考えるのに忙しくて。おばかさんですね。

    これから何が起こるんだろうってとこで、あっけなく終わったような感じも。
  • 満足度★★★★★

    見応えあり
    脚本・演出は素晴らしく、実にリアルな社会派作品だ。演技は狭い空間で濃密に繰り広げられ、一瞬たりとも目が離せない。心地よい緊迫感があり、見応えがある。重要なテーマを扱いながらもストーリーは極めて坦々と進む。多少、演出・演技で誇張した場面はあったが、ひとつの山場と捉え楽しませてもらった。この作品、観るなら「今でしょ!」、見応え十分あり。

  • 満足度★★★★★

    まるで
    小さな部屋の両端に客が座り
    中央で繰り広げられるドラマ

    こういう形式は初めてで、ドラマの中の一人になったような感覚

    音も照明も普通の劇場とは違うのに
    違和感なく話に入り込めるのは
    脚本と演出とキャストの良さだろう

    スピンオフのリーディング目当てで行って
    劇団のFANになって帰ってきた。


    これはお薦め!

  • 満足度★★★★★

    凡庸な悪
    政治家(特に二世議員)や官僚の中にある「凡庸な悪」を描いた作品だと思った。
    おそらくこの芝居で描かれているような構造で、為政者は国を動かしているのだろう。とてもリアルに感じた。
    硬いテーマだが、随所にユーモアがあるのもよい。
    風刺的でありながらも、一つの立場から主義主張を提示している作品ではないので、その感覚もとてもよかった。

    ネタバレBOX

    ハンナ・アーレントは、ナチスが行ったホロコーストの実行責任者アドルフ・アイヒマンを、命令に従っただけで何処にでもいる普通の役人でしかないとし、その本質を「凡庸な悪」とした。

    私が『眠る羊』を観て思ったのはこのことだった。
    二世議員で衆議院議員の次男:智志は、周りの人間が動いてくれることの上に胡坐をかき、自分の主張を述べているだけで、全く悪意はない。だが、母は彼を担ぎ上げるために多額の金を使っていた。その資金のために、企業から献金を受けていた。

    防衛省装備施設本部の長男:宗介:は、自分の行為に無自覚で、自分の好きなオペラへの寄付金捻出のため、友人である軍需産業企業の社長から寄付を受けていた。その社長の助言を受け、自衛隊が購入する装備品(軍用艦のエンジンだったかな?)の発注をドイツの会社からアメリカの会社に変えさせた。実はそのアメリカの会社は、友人の社長の企業と提携しているところだった。

    防衛省海上幕僚監部広報室の三男:衝太は、「匿名兵士の黙示録」というブログで、身元を隠しながらも政府見解と異なる(次男の考えとも異なる)憲法9条の改正や国防軍保持、徴兵制導入などの主張を声高に訴えていた。

    これらはすべて、大きな悪意があって行われていることではない。自分の知らぬところで行われていたこと。なんとなく無自覚的にやっていたことなどである。それが大きな構造の中では、法律違反であり、倫理的にも悪となったと言えよう。

    おそらく、この国で動いている力学の中心はこのようなものなのではないか。明確な悪意に基づいて行動している人もいるだろうが、それを構造的に支えているのはこのようなものなのではないか。
    よく政治家や官僚への批判を耳にする。実際、本当に悪意を持った人間もいるだろが、その多くは、たいした悪意もなく、自分の信念を心から正義だと思い込んでいたり、既に以前からある権益をそのまま享受しているだけだったりするのではないか。

    また、主人公が与党の衆議院議員であり、護憲の立場でありながら、武器輸出三原則を改訂しようとしていたり、同じく政治家であった彼の父が死ぬ前には憲法改正の立場に変わっていたなど、単純な権力批判をしている物語でもなく、多様な解釈ができるところもよかった。

    ラストシーンで、清志郎(主人公の父)の秘書であり愛人であった常盤美咲は、国民を羊に例え、憲法改正に意見を変えた清志郎の意識こそ、自分が羊の群の一匹であるということを自覚していたということであり、次男智志(主人公)は国民に九条という柵を作ることで統率しようとしていると言う。つまり、次男智志は上から目線だと言っているのだ。
    このラストシーンの面白さは、様々な形で、正義が引き裂かれているところにある。作者の主張が透けて見えるようなツマラナイ話にはなっていない。癒着には関わっていなかった主人公は、彼の信念に関してはとても清廉潔白であるかのように見える。だが、その正義を秘書がひっくり返す。それに、そもそも、主人公は武器輸出三原則を改訂しようとしている立場であり、完全な理想主義者でもない。「平和を実行する市民の会」というNGOに参加している一番下の妹の存在が彼の理想主義をも相対化している。では、秘書並びに、父の主張が正義なのかというと、そんなことはない。現実的にそれが正義だと父が主張していたに過ぎない。
    観客は、では何が正義なのか、逡巡することになる。このバランスが素晴らしい。特に、末の妹を物語の中心に介入させなかったことで、このバランスが成り立っていると言える。

    主人公を演じた北川義彦さんは、私が観た他の芝居では、線が細く繊細な役者さんという印象だったが(←そういうものとして素晴らしかった)、今作では政治家の図太い貫録を演じられていたと思う。素晴らしかった。

    また、主人公の次男が辞職を覚悟し、議員バッチを置く場面での、公設第一秘書役真田雅隆さんの演技がとても良かった。自分が育ててきたお坊ちゃんの無念を我がこととして思っているというのがとてもよく伝わってきた。

    総じて、とても面白く拝見したが、厳しく言えば、物語内で語られる人物は、ひねってあるとはいえ、想定できる政治家像、官僚像であって、驚きには欠けた部分がある。
    また、政治的なテーマのため仕方がない部分もあるが、割と知的(観念的)な面白さが先行していて、演劇としてのダイナミズムは少なかったように思う。ただ、これは、以前観た十七戦地の芝居と比べてという意味なので、これが初見の劇団だったら、演劇としてのダイナミズムもあると感じただろう。

    厳しいことも書いたが、とても面白かった。
  • 満足度★★★★★

    無題1006(14-045)
    19:30の回(晴)。ドアのガラスに「受付開始、開場までもう少しお待ちください」、ポストイット。19:00受付、会場は地階。「花と魚(2011/7@バビロン」からで5回目になります。此処は3回目(「獣のための倫理学:2013/2」、「AFTER shock:2013/12」)。

    客席は入口側、奥(前列は椅子、後列は木製ベンチ)の対面式、奥側にはエアコンがあるので奥へ、入口側は上演中の出入りあり。左右の壁沿いにテーブル、椅子、錆びた鳥かご…調度品、みな茶系統で此処の備品なのでしょうか、座席後方にも。

    19:26前説(柳井さん)、19:32開演〜ひとり入ってくる〜20:52終演。

    決して広くはない空間に濃密な空気が満ちてくるようでした。

    ネタバレBOX

    お話は「説明」にあるとおり。但し、チラシにあるような「いかにも」な世界などどこにもなく、あるのは腐臭を放つ底なし沼。少しずつ剥げ落ちてゆく面の皮、家/一族、政治家としての矜持、裏の裏、表と思っていたその先にあったもの、役者さん10名、それを観客が挟み込む配置、いつの間にか自分も「そこ」にいるように感じていました。これは「獣」の時にも感じました。

    もしかして、今回、台本あったのでしょうか…すぐ出てきたので未確認。
  • 満足度★★★★★

    必見!
     必見の舞台である。初日に拝見し、このあとが長いので、あらすじなどは書かないが、相変わらず、見事なダイアローグで成立した舞台である。(追記2014.2.20)

    ネタバレBOX

     演劇のシナリオなのに、小劇場で書いている劇作家の作品には、ダイアローグが、キチンと成立している作品が少ない。余りにメンタリティーに拘っていたり、情に流されることが、美学だとでも思っているかのようなのだ。
     だが、十七戦地の柳井 祥緒君の書く物には、ダイアローグの典型的作品の流れがある。今迄の所、自分の拝見した作品には、大きな流れとしては二通りあるように思うが、その一つが、論理の応酬が中心になるタイプの劇で、今作と、自分が拝見している作品では、もう一作「艶やかな骨」がこの系譜だ。設定が見事である。今作でも、物語の中核部分は、スキャンダルを起こした国防族一家の、国会での証人喚問を模した、擬似証人喚問が中核を為す。内容が国防に絡み、憲法や表現(者)の位置、人間関係や利害、生き様やプライド、善悪の判断やその根拠、誰の為の、どのような施策なのか、という根本的な問題にも、また、政治的立場の有利・不利、今後、のパースペクティブ等々、多岐にわたり内容的にもジャーナリストが見て唸るであろう、高度なものでありながら、極めて適確で誰にでもわかるような仕掛けが設けられていて、それが、極めて自然で理にかなったものなので、違和感が一切なく、観客は、本当に、自分がその状況に関係者として参加しているような錯覚に浸りながら観ることができる。最高度の演劇体験の一つを味わうことができる。これも、柳井君の作品の特徴の一つである、古層を重層低音のように、作品に取り込んで行く独自なシナリオ作法の表れだ。今回、この古層には、平家物語が使われているが、どの部分が、平家物語を現代風にアレンジしているかを見極める楽しみも出てこよう。
     優れた芸術作品は、時に時代の本質を映しだすものであるが、今作は、その典型でもあろう。当にどんぴしゃり! この国の為政者の閨閥による民衆支配の構図や責任転嫁の方法、嘘と真・建前と本音の使い分けによるダブルスタンダード、密室性等々、政治を注意深く観ている人なら気付いている事実を、役者達の身体を用いて現前化させることで、見事に、そのメンタリティーを腑に落ちるものにして見せると同時に、批判に値する対象として現存させている。脚本の素晴らしさのみならず、演出の良さ、役者陣のキャスティングの良さや優れた役作りと共に、会場の選び方の的確さもあって迫真の舞台を愉しむことができる。
  • 満足度★★★★

    きっちりしたお芝居
    憲法第9条の在り方など考えさせられました。早稲田のLIFTでしたので、目の前で役者さんの熱演を感じることができました。
    最後まで引き付けられた映画のような印象に残るお芝居です(*^o^*)
    お勧めです!

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