実演鑑賞
かなり昔に見たのだけど、改めて。
いじめられ役の人の芝居が凄過ぎて、チケット代の7割はこの人が背負った。
いじめのシーンはどうしても「やってる感」が出るものだと思った。
悪いやつの喋り方をしてる悪くない人に見えている。
台本は、誠実。
ただ、もう一回推敲したら、こうなってないだろうなというセリフがいくつかあって、そういうところは役じゃなくて作家が喋ってるように感じた。そもそも言語化する習慣がある人で、それがそのまま台本になってるシーンが少しあった。
誠実さを守ろうとする分、そうなるのかもしれない。現実にあることをドラマ化する上で、馬鹿にしているようにならないようにという思いを感じる。不快感はなかった。
笑いが少なかった。時々、絶妙に笑える感じになりそうな時もあって、そういうのもっとみたいと思った。
後半、全員立ってるシーンがあって、あれはちょっと。反省会みたいにアーチ状に立っていて、一人一人喋り出してはそれなりの尺をもらっていく。そうはならないような気がした。
その辺りのシーンは、言葉先行すぎるなと感じた。台本上で耳でセリフが鳴っていて、その時点ではいいけど、それをそのままやると、ただ言ってる、ただ聞いてるみたいになるのかもしれないと感じた。
でも、色々書いたけど、ちゃんとした本を書こうという気持ちが伝わる作品で、誠実さを受け止めた。
実演鑑賞
満足度★★★★★
2時間、一瞬たりとも目が離せなかった。
死を持って償うことの是非や死が全てを流し美化してしまうことの怖さ、誰でもが傍観者となり加害側になってしまうことへの警鐘、それらを生々しく伝え、考えさせる良い作品だった。
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台美術凄く良かった。凄く。凄い。凄く。
沢山演劇作品を観てきた中でも屈指。
高校のヒエラルキーの中で中間管理職をこなす事で
自分を保っていた若者が卒業と共に立場/目的を失い身を持ち崩す様と
人間の多面性とその面ごとの振る舞いと影響
受け止めと処理消化の仕方は無数にあって結果は予測不能
という事とを描いた物語なのかなという理解。
作り手の意図は受け取っていないのかなって気がする。
先輩は(客席の笑い声も含めて)それでいいのか
自己防衛の成れの果てなのか。果たして。
よく作られていて演技演出共に明らかに良い演劇だと感じる一方で
ヒリヒリするような重さを期待していたので
観るに際しての臨み方を間違ってしまった気もする。
という事で非常に言い難かったもうひとつの側面としての感想としては
笑ったり泣いている観客達への違和感でずっと不快な気分だった
意図的にこうなるように仕向けたんだろう作・演の池内さんは
良い意味で意地悪いというか巧妙と言うか。
初めて「いやいや...」と客席に思った作品。
泣く事も笑う事も無く観察していた感じだった。
フムン。内容的にはカーテンコール無しが良かった。
実演鑑賞
満足度★★★★
王道の青春モノである。ただし、装いは現代風、若い観客が満席で入っている。若い女性客がワンワン泣く。生きている者は、死んだ人の分まで生きなくちゃ、というようなチェホフもどきの台詞が決め所で使われている。へぇー、今の子も純情なんだなぁ。
小さい頃から母子家庭の家の二階を溜まり場にしていた同級生たちの群像劇である、男五人、女三人。二コマほど、高校を出たばかり頃までの悪童ブリがあって、そこでは、いじめが仲間の共同意識を作っている。万引きやいじめも仲間意識を醸成するが、一方では嫌悪感も持っている。いつの世も変わらぬ複雑な青春像の中に巧みに今の風俗を交えてなかなか上手く書けている。一年がたち、さらに年がたった頃、いじめっ子の音頭取りだったこの家の息子が自殺する。なぜだ。と、それぞれ、その理由を憶測する。溜まり場だった部屋を整理しようとなって、母親が同級生たちに声を掛ける。彼らは二〇才を過ぎている。それぞれ仕事を持っていたりする。皆たいした仕事には就けていない。そこも非常に上手い。
お互い傷つけ合い慰め合った思い出の中で、それぞれが自らを浄化していく。
これを他の仲間が見ている場でやるのが上手い。又その中で、今の世の中の生きづらさも鮮明に浮き上がってくる。誰かとつながりたいのだけど果たせないもどかしさと不安が彼らをバラバラにしている。
ワンセットだけで時間が経過していく青春モノらしい話の運びだが、そこには現代のつらい青春が反映している。
実演鑑賞
満足度★★★
成程。徹底して鬱を共有する為の空間に徹してある。
放課後の溜まり場になっている主人公(國崎史人氏)の自宅の二階。残忍なリーダー格の小比類巻諒介氏はグループを率いて先輩(阿岐之将一〈あきのまさかず〉氏)を肉体的金銭的に虐めている。そんな日々も過ぎ、上京し帰郷した主人公はその部屋で自殺。三回忌も終わり、母親(加古みなみさん)はかつての仲間達に彼の遺品整理をお願いする。
成瀬志帆さんがえらく可愛かった。『グレーな十人の娘』の時も同じ事を思った。
國崎史人氏は松村雄基っぽく、小比類巻諒介氏ははんにゃの金田っぽい。二人共目がパキっていて何かやってんじゃねえのか、と勘繰る程。異様な空間。
鹿野宗健氏はガチガチに鍛え抜かれた肉体美、ジムに通っている筋肉。(水泳で全国大会優勝!)
物語は歪な人間関係を築いていた学生時代と卒業後のそれぞれの関係性、主人公の自殺の理由についての考察、今になって思う過去の自分達の所業へと流れていく。加害者と被害者は自分の過去とどう向き合うべきか?深澤嵐氏演ずる作家の分身のような男が曖昧な“それ”を徹底的に責め、その核心に触れようともがく。一体、何が知りたいのか?一体、どんな答なら満足するのか?登場人物も作家も観客も”それ“を考え続ける。
溜まり場には関係していない、委員長役の笹野美由紀さんがかなり重荷を背負わされた感。(観客は彼女によってかなり救われている)。
阿岐之将一氏は凄かった。MVP。彼のクライマックス、怒涛の喋りを観るだけで元は取れる。
作家の叫びが耳をつんざく。
是非観に行って頂きたい。