実演鑑賞
川崎市北部のこの劇団は全国的にも少数の自治体主導による市民劇団で、年齢層の幅は広く大所帯、だが団員になるためのオーディションも(何年かに一度)あり人数制限はあるらしい。
10年と言う節目に団員の一人による脚本を舞台化したが、過去公演の中でも優れた仕事となった。川崎市中部にあった登戸研究所を題材に市民劇らしい群像劇が立ち上がっている。全体に市民劇団っぽさは残るのだがそのベースの上に一つ一つ事実が積み上がり、メタシアターの構造による複合的な叙述で気付けば絵が出来ている。
登場するのは「芝居を作る」人物たちで、劇中劇(稽古)に登場するのは「研究所の歴史を掘り下げようとする」高校生やそのサポーター、教師そして彼らが出会った歴史の証人たち、つまり現代の人々。最後にはこの題材が行き着かざるを得ない場所へ観客は案内される。戦争の道具を開発していた研究所であった事の実相、すなわち時代を超えた先に事実存在したものとして、ふと浮かび上がって来るものがある。