六英花 朽葉 公演情報 あやめ十八番「六英花 朽葉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    大正から昭和にかけての映画界、そこで活躍した弁士の生き様、人間模様をリアルに描いた秀作。映画界における技術革新ーサイレントからトーキーへ、という潮流に飲み込まれた人々。浅草寺境内にある弁士塚には「幾多の名人天才相次いで現れ その人気は映画スターを凌ぎ わが国文化の発展に光彩を添えた」とある らしい。そして「昭和初期トーキー出現のため姿を消すに至った」と。まさに この公演の「大正ロマン」と「昭和モダン」のことであり、映画の一時代を築いた弁士を生き活きと活写する。観応え十分、ぜひ劇場で。
    (上演時間2時間15分 途中休憩なし)【昭和モダン】

    ネタバレBOX

    舞台美術は 中央に紗幕(銀幕でもある)、そこに関東大震災で倒壊した凌雲閣を映し、物語に出てくる写真活動弁士 所縁の浅草、近くの玉の井という私娼街を連想させる。上手 下手は非対称ながら鉄骨で組んだ空間、上手の上部は主に私娼街にある銘酒屋、下部は楽士が演奏するスペース。下手は弁士たちの活躍の場 緑風館と演台がある。

    主人公・根岸よう子、芸名 郡司葉子そして活動写真弁士として荒川朽葉(金子侑加サン)が、走馬灯のように述懐する。その話術が本当の弁士のようで 物語をグイグイ牽引していく。あやめ十八番らしく、 生演奏による心地良い雰囲気作り、多彩な照明での印象付けなど、映画とは違った魅力で観せる。映画界を演劇舞台として見せる、そこには幼い頃から励んだ<芸>すら、科学技術には敵わないといった悲哀。翻って 演劇という<芸術>の先々はどうなるのか。そこには時代を読み取る<力>と<対応>が求められる、これは演劇に限ったことではないが…。

    物語は音無き者とサイレント…その代弁(説明)者を重ねるように描く巧さ。抜けられるようで、抜けられないといった袋小路の私娼街、それを当時の映画界…サイレントかトーキーか、といった潮流というか渦に翻弄される人々の迷い道(人生)に重なる。それは音無き者と映画界を繋ぐことによって、一層 音の ある なし といった世界と関連付けている。
    根岸よう子99歳の生涯、その足跡をしっかり刻み込む。走馬灯は単なる愚痴の述懐ではなく、その人生を力強く肯定するかのよう。

    演劇は、どんなに事実・事件・人物等をリアルに描いても、あくまで虚構の世界。 好みのジャンルも違えば、贔屓の俳優も異なる。どれだけ興味や共感をもって、または楽しんで観ることが出来るか。映画ファンでもあるが、知らなかった写真活動弁士の生き様や当時の映画界の事情を、好きな演劇を通して垣間見ることが出来た。あやめ十八番は、人の関心を擽り 万人受けするような劇作をする、そんな印象を持っている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/08/08 18:30

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