六英花 朽葉 公演情報 あやめ十八番「六英花 朽葉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    〈大正ロマン〉
    こちらの配役も甲乙付け難い傑作。2回目だけに今回の方が面白く感じた。もう一度観てみたい程。
    中野亜美さんのジェスチャーは本当に絵になる。無声映画のカリカチュアライズした動きがピッタリ。この人は凄い。

    こんな作品を観せられるとただただ参る。2つのヴァージョンを観ないと勿体ない。まだ観るべき余地があるのでは。広瀬正の小説みたいに読めば読む程、世界が広がっていく。2つの異なる役を当たり前のように演じる役者達。恐ろしい。

    ネタバレBOX

    クライマックスの火事の絵が弱かった。(東京大空襲に繋げるにはもっと火勢が欲しい)。

    説明が欲しかった部分。

    昭和2年(1927年)「口話教育の父」と呼ばれた西川吉之助が手話を一切認めない口話法教育を推進。読唇術で相手の言葉を読み取り、口の形を真似ることで発声を覚えさせた。昭和8年(1933年)鳩山一郎文部大臣が手話を明確に否定。ろう学校でも手話は全面的に禁止された。1996年「ろう文化宣言」等により「聴文化」に対して、手話や視覚を基本とした「ろう文化」という考え方が広まる。国が手話を公式に認めたのは2009年。

    筆談は恥ずべきことという考え方が広まり、悲観した苗は自殺に至る。(「昭和モダン」の中野亜美さんの持つ悲劇性がこの役にぴったり)。

    作家の書く小説にだぶって聾唖者の娼婦、苗の物語が綴られる。玉の井の私娼街、「この先、道は狭いですが抜けられます」の看板に、ここから決して抜けられない娼婦達への皮肉を思う。
    この話こそ小説内なのではないかと思える仕掛けが随所に見られる。苗の死の走馬灯に朽葉が語る『散り行く花』の活弁が重なる。何処からが虚構で何処までが虚構なのか、全てを観客の解釈に委ねている。

    ラストの台詞も凄い。「人生が一本の無声映画なら、私達活弁士はその作品が出来うる限り魅力的であるよう熱弁を振るわないといけない。せめてそれだけは約束しような。」

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    2023/08/07 00:16

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