ある母の記録 公演情報 NonoNote. 「ある母の記録」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    等身大の女性を通して見た家族、特に母との関係を客観的に俯瞰しつつ、同時並行的に綴った追憶劇。旗揚げ公演とは思えないほどの完成度に驚かされる。璃音さんが演じる二十代の女性が過去の記憶を呼び起こし、現在に至っている情況を切々に語り、その表現し難い思いを実に上手く伝える。過去は変えられないが未来は切り開ける、はよく聞き言葉だが、それを地で行くような展開である。ラストはホッとし 自然と笑みがこぼれるような…。

    物語は大きな うねり があるわけではないが、不思議とその世界観に引き込む 力 がある。登場人物は家族をはじめ身近にいる人々で、その存在や性格に特別な特徴等を持たせない。観客は それぞれ自分の内にある記憶ー思い出と向き合えるような、そんな味わい深い公演である。
    (上演時間1時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、客席側への迫り出しにテーブルと座布団、上手下手の壁際に複数の箱馬を並べる。シンプルな設えだが、どちらかと言えば心象劇であるから十分機能している。

    今いるところから前に進めない、そんな過去の出来事に縛られた一人の女性を描いた物語。その動けない姿を外観で伝える巧みな演出、女性は上手の箱馬から離れない、そして着ている衣装は同じ。父や母は家の中で動き、他の登場人物は上手 下手を自由に行き来し、衣装替えもし時間と場所を経て動く。そこに留まることしか出来ない女性との対比、それによって女性の心の変化を観せる。少女期はセーラー服、母に従順で仲良し、一方 父とは憎まれ口を叩き 一定の距離を置く。何となく見かける家族光景のよう。

    成人式の翌日、東京へ戻る新幹線の車中で母の容態が…。走り出した新幹線は止められない。それに準え、悔悟のような思いが前に進む気持を抑え込む。そんなトラウマを抱えていたが、弟が結婚することを契機に少しずつ情況が変化してきた。その過程を客観的な語りと現実の歩みとを交差させ紡ぐ。子供の頃から歌うのが好き、その縁で知り合った男への募る思い、しかし恋愛下手で という足(愛)踏みも上手く挿んで、その後の展開へ関心を引き付ける巧さ。

    特別な出来事(事件)などは起こらない有り触れた少女期の成長過程を描く。逆に何も刺激的な変化がない舞台表現は難しいのではないか。それを見事に現実化させているからこそ、観る者の共感を誘っている。
    柔らかく暖かい暖色照明、ピアノの包み込むような優しい音色が心地よく響く。舞台技術もしっかり効果を発揮し、舞台全体の雰囲気作りをしていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/17 17:30

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