てのひらに滲んだら 公演情報 年年有魚「てのひらに滲んだら」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    やわらかく倒されるドミノの秀逸
    登場人物たち自身の感覚が伝わるだけでなく
    それぞれが自ら観ることの出来ない姿が
    浮かび上がってくるような・・・。

    幾重にも倒れるドミノから
    それこそ滲みだしてくるような
    キャラクターたちの想い。
    息を呑み、
    舞台に釘付けになってしまいました。

    ネタバレBOX

    リラクゼーションの場ということで
    従業員同士にしても、
    そこにやってくるお客様にしても
    ある種の気遣いに満ちた空間。
    しかし、舞台上の雰囲気に馴染んでくるうちに、
    そこから浮かび上がってくるキャラクターたちの
    生々しい想いから
    目が離せなくなります。

    過去の恋人たちの再会や移植手術のことなどが、
    あざとさを持たないのは、
    そこに描きこまれた当事者たちの思いの質感が
    観る側にそのまま入り込んでくるほどにナチュラルだから。
    たとえば男の手が汚れたときに
    石鹸だと肌があれることを心配をする元彼女の雰囲気から
    二人が過ごした時間がすっと浮かび上がってくる。
    あるいは顧客への対応や店長のこだわりから
    ベテランのスタッフにやってくるいらだちが
    少しずつ満ちてくるのが
    言葉にならない積み重なり感をもってやってくる。
    報われなかった募金活動の苦渋から生まれた
    常連客の「正義」の鎧が
    ロミロミの癒しとかさなりあうことにも
    息を呑む。
    元彼女のいるその店につれてこられた男に降りてくる
    フィアンセの「正義」やコアに対する戸惑いは
    解像度を持った
    すくみ上がるような女性の実在感とともに
    観客をも圧倒していきます。

    ゆっくりと倒れていくドミノがそこにあって
    キャラクターそれぞれの埋もれていた想いが
    やわらかく溢れるように現れて
    観る者を浸潤していく。
    同じその場所の朝なのに
    前半のシーンと終幕間際では
    全く違う色が浮かぶ。
    しかもそれを破たんではなく
    続いていく日常の一コマへと収束させていくところに
    作者の視座や作劇の秀逸を感じて。
    終盤の手のぬくもりのエピソードで示す
    ベテランスタッフの今の姿にも瞠目。

    役者の演技も実に丁寧で安定感があり
    浸透力をしっかりと内に秘めていて。
    一つずつのシーンに
    吸い込まれるような奥行きが生まれていました。

    やわらかいタッチのお芝居なのですが、
    やってくるものはとても強い。
    拍手をして客電が戻ってもしばらくぼぉーっとしておりました。
    べたな言い方ですが
    前回公演に続き
    がっつりとはまり込んでしまいました。



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    2009/11/09 11:29

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