満足度★★★★
成行ミチ子さんの演技に、鳥肌。
数知れぬ浮気の後に、脳疾患で植物状態になった男と、妻の物語。
妻は、夫が浮気をしている間中、じっと我慢し続けた。いつか自分の下に帰ってくると。。。
夫の病気によって、妻にとって待ちに待った二人の時間が戻ってくる。その環境に至福を感じつる妻であったが、やがて気づく。二人の関係はこれで行き止まりだと。
妻は、「此処より先へ行きたい(関係を再構築したい)」と、夫を絞め殺す。自分も心中を図り、黄泉の国で新しい関係を築く予定であったのだ。
しかし、妻は死に切れず、夫のいる夢と現を行きかう。
果たして、妻は死に、夫と新しい関係を気づけるのか?
夫は黄泉の国では、病気以前に戻ったかのように、傍若無人に振る舞い、決して妻を顧みない。黄泉の世界でも、二人は結ばれることはなかったのである。
しかし、傍若無人な振る舞いは、夫の屈折した愛の表現方法であるのだ。自分と同じ世界に妻を来させない(死なせない)ための。
介護疲れによる無理心中というテーマであるが、その描かれ方は決して平坦ではない。夫婦のあまりに屈折した愛の形が示される。
13号地は初見であったが、転位・21出身の加藤さん、成行さんの二人舞台ということで、たいへん期待していた。
その期待にたがわぬ名演技をお二人の俳優さんが見せてくれた。
特に、成行さんの演技には、恐ろしささえ感じた。
テーマ的に、受け付けない人もあろうかと思うが、私には実りある舞台となった。
ただ、惜しむらくは、観客が驚くほど少なかったことである(私を含めて15名ほど)。
なぜ、これほどの舞台を見せる劇団なのに、もったいない。