満足度★★★★
なぜかやたらに美しいラスト
つかこうへいの代名詞である、岸田賞受賞作「熱海殺人事件」を、完全に別なものにしているが、そのエッセンスは確実に感じられる。
おそらくは海のメタファーかつ犯人の記憶の場である、水が流れ込む四角いテーブルがある中央での、
パフォーマンス(あるいはダンス)的要素を取り入れた、テクストの順序を変えた冒頭には、新しい解釈を感じる。
演出の都合上、水がそこかしこに飛び散るために刑事役の俳優は競泳用水着を着用しており、
それによって刑事とは思えない俳優の姿は、もはやギャグとしか言いようがないが
テクストの改編はなされていないため、原作が持つ毒々しさも感じられる。
そして犯人と婦人警官による、ねつ造された記憶の再現シーンと
ラストの部長刑事の長セりフは、それまで見たきたものを一掃するくらいの(不必要なほどの)美しさを持つ。
ドラマのない現代でドラマを捏造することのまがまがしさと美しさ。
それはやはり、なぜかやたらに美しい。