満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/20 (木) 14:00
座席1階1列
まずは、田村真帆さんを称賛したい。
2時間20分の舞台に出ずっぱりだけではなく、何と開場後、開演までの30分、舞台上で目隠しされ、鎖で拘束されているのだ。およそ3時間自らを晒し続けるというのは、並大抵の精神力ではないだろう。そして、多くの時間をあの怪優(失礼)千葉哲也氏を相手にするのだから。フライヤーを見ると、外見が何となくほんわかとした感じなのだけれど、肝っ玉座っているんですね。ちょっと噛みがあったけれど、今後に期待。
この舞台、田村さん演ずるD503が上記のように拘束された状況から始まり、ラスト前にこの状況になぜ至ったかが判る回想形式で進行する。彼女が記した手記がストーリーとなっている。
D503は科学局に属するエンジニアで、宇宙(つまり世界そのもの)の有限を疑わない存在である。しかし、I330(千葉哲也氏)と出会うことで、その意識に変化が芽生え、自身がプログラミングする宇宙船インテグラル号にある仕掛けをして、、、、と話が進む。
彼女らのいる世界は、200年の世界戦争後、極少数残った人類が統一国家を作り上げて、1000年の長きにわたって幸福な国家を構築することに腐心してきた。わずか1000人の国家。ホルモンの調整で不老となり、死はあるが妊娠出産はなく、減員は体外での受精育成がなされる。生活の総ては、管理下に置かれ、人工知能による最善の判断指示によって、日々の生活指示がなされている。
この舞台世界における価値観の対立は、自由か幸福か。この単一国家、緑の壁に囲われており、その外には古代人として自然と暮らす人類が生息している。古代人は自由だ。しかし幸福を望む国家の人々は、絶対的な規律と優性思想の元に生活すること望む。
「最高の愛は、無慈悲だ」ブレることなく、逸脱することなく生きることが幸福だと。
I330は、原作では女性とのこと。これを男性にし、D503と関係させることで、優性思想ひいてはSEXが際立たせられている。D503しかりI330しかり、登場人物たちは、管理統制下でも、統一された衣服を脱ぎ捨てる時(主に性交渉時)に、うつろな自我を垣間見せる。田丸さんのスタイルのよさと、千葉氏のウォッカ(テキーラだっけ?)を飲みながら口で服のチャックを開ける仕草、結構エロチックです。
統制の取れた、いかにもなデストピア世界。それを意外にも、ホント生臭く見せてくれたことには感心しきり。
さすがガジラという舞台。