毒おんな 公演情報 椿組「毒おんな」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    椿組 atスズナリは二度目。前回見て「野外だけが椿組でない」と。
    今回は劇作家としては未見の青木豪作品、また高橋正徳演出、もうひと押しは俳優・津村知与志。(彼の気持ちいい立ち回りを観たくて足を運んだ芝居は結構ある)
    小泉今日子である。日程が固まってきたので予約しようとしたら既に全日程完売。小泉出演を忘れていた。
    だが当日狙いで日程を取ったら、開演二時間前に抽選券配布、30分後「当日券」と「キャンセル待ち」の当選と順番発表、私は後者だったが、実はハズレではなく、最終的に強引にでも席に座らせる。「今まで観劇頂けなかった方はいません」とのスタッフの説明だった。
    ガッツリと主役小泉の「芝居」を喰べた。著名である事(別の媒体を通して見慣れている)、小顔美形である事、理由は特定できないが「注目」させる(させ過ぎる)ものがあり、以前トラムで出演した舞台とは打って変わった「手の内」に収めた感のある箇所も多々ある役者姿であった。
    毒婦=犯罪常習者の「たらしこむ」芝居は地でも行けそうな素材だが、地が前に出て技(演技)が引っ込むと、器量及ばずの他の役者とのバランスが気になってしまう。これは容姿に関する「その状態が罪」というやつ・・序盤にそれがあり不安がもたげたが、次第に「役」の役割へと注意を向ける事ができた。
    毒婦=犯罪モノのスリルという面では、「殺人」が匂う彼女自身の台詞「(彼氏がいつの間にか)消えちゃうの」で客席から一瞬笑いが漏れるが、本来はゾッとさせる瞬間。笑いは深刻さを遠ざける防御という事か、、小泉女史自身の演技が呼び込んだ面も否めず。だがそんな事もありつつ、全貌が徐々に見えてくる案配よし。
    戯曲のポイントは女の犯罪と生い立ちの関連だ。問題行動はその背景を想像させ、その「説明」が人間ドラマの側面を持たせる。女の回想場面は現在進行中の「現在」シーンの中に、女が見ている風景として現われる(時に現在シーンと錯綜、この処理がうまい)。時系列に進む芝居としてまとまっているが、短くはさまれる回想シーンでの、母、母の妹、父とのやり取りは鮮明な印象を残す。家族を養う仕事に疲弊した母が、流行らない整体師の夫と娘(現在の女)に食事を作るために一時的に出入りしていた妹との仲を疑い、たまたま肩を揉んでいた所を目撃して妄想と嫉妬にやられてしまう。妹(娘の叔母)が姉家族から身を引くタイミングを逸して通い続けていたある日、「その時」が訪れる。母が薬を混入して去ったその紅茶を、目の前で(叔母でなく)父が飲み、その後交通事故で亡くなるという事が起きる。この出来事が娘に与えた内的作用は想像する以外ない。女に対して同情的に描写していない所が良い。最後に女が露呈した凶暴性は殺人に関する知識を体得したそれで、ミステリー性(娯楽)の要件を満たし、収まりがついていた。彼女を受け入れる事になったホストに当たる北海道の牧場での人間関係のドラマも面白く客演福本伸一、津村が強く気持ちよくサポート。

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    2018/03/25 07:18

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