鑑賞日2018/03/10 (土)
全員がある種の「弱者」である中で、「所有」が語られることの痛ましさが胸を衝く。異なる時間軸の二つの会話が、同じ単語の響きをたよりに同時に発話されることのリズム感の中で、所有と喪失のあわいは曖昧に溶ける。そのうら寂しさをBUoYの会場全体を駆使したセットが表現する。中央に荒んだ庭、左はもっと荒んだドアのはずれてものが散乱した部屋、右側には柱がいくつもたてられ、客席の椅子にはツタが絡まる。本当は何も所有したことはないかもしれないのに、なんで喪失感だけがくっきり残るのだろう。そんなどうしようもない感情のツボをおされて泣きそうになっていた。