時代絵巻AsH 其ノ拾壱『朱天〜しゅてん〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾壱『朱天〜しゅてん〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    物語というよりは寓意あるメッセージ性の強い作品。この劇団の特長である殺陣は観応えがあるが、そのシーンが少ないようで残念だった。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは平安時代の貴族または武家屋敷のような造作。
    具体的な史実は解り難いだけに、物語に描かれる内容如何が公演全体の方向性を決める。それゆえ作・演出の灰衣堂愛彩女史は、意識して寓話的な描きにしているのか、結果的にそう観えるようになったのか判然としないが、鬼であっても人であっても”己の存在する意味”を問うているように思う。

    梗概…棲家を追われた者たちが切り拓いた「隠人(おに)」の国。都人は彼らを人ならざる者_鬼と呼んでいた。平安時代は関東以北を蝦夷(えみし)と呼んでいたようだが、イメージ的には都(京)以外は辺境の地として異端視・異族視した呼称をし、差別的な扱い。また公演では鬼=身体障碍者を指すようで、差別と蔑みの対象として描いている。主人公・”鬼”王丸(黒崎翔晴サン)は平将門の子孫だが、目が不自由という設定である。一方”人”として描く清和源氏の流れをくむ源頼光(村田祐輔サン)は鬼王丸と友情を育んでいたが、朝廷の命により鬼王丸とその仲間の蝦夷を討伐しなければならず苦悩する。
    2人の望まぬ相対する立場と信念は、そのまま現実(侵略)と理想(安寧)の対決を投影している。この思いは通じ合うことなく物語は悲劇に向かう。

    人の欲とは…富と権力を握っていても、更なる欲望が生まれる。その根底にはいつも没落という疑心と慄きがある。自分の本当の姿を見失っている人、富や権力の中身が人の価値を決める訳ではないが…。それが大江山で採掘した鉄(鉱山)で富を蓄積し、それを奪うための討伐とも描く。重層的な提起は物語性よりも印象深くなる。不寛容が広がる世界に生きる現代社会への警鐘とも思える。同時に朝廷が蝦夷を討伐するシーンは、世界を覆う排他主義を想起させる。

    公演は舞台美術が素晴らしい。セットは殺陣を意識したスペースの確保、それも観客に十分楽しんでもらうための工夫として、客席寄に設けることで身近に迫力を体感できる。照明はハイ・コントラストのモノクロ感、殺陣(鬼気迫る剣筋)はその激しさとストイックな要素が鬩ぎ合い、全体演出が印象と緊張感を倍加させる。ラストはいつもながら余韻に浸れる見事なもの。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/23 16:02

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